細野晴臣 50周年記念公演で音楽ルーツと現在地を実感 東京国際フォーラム2日間をレポート

 1969年に伝説のバンド“エイプリル・フール”のベーシストとしてデビューしてから、今年で音楽活動50周年を迎えた細野晴臣。はっぴいえんど、ティン・パン・アレー、イエロー・マジック・オーケストラ、さらにソロアーティストとして、ロック、テクノ、ワールドミュージック、アンビエントなどジャンルを超えた活動を行い、国内外の音楽シーンに多大な影響を与え続けてきた細野が、2019年11月30日、12月1日、東京国際フォーラム ホールAで50周年記念公演を開催した。

 『細野晴臣 50周年記念特別公演』と銘打たれた初日は、10年以上、細野と活動を共にしてきたバンドメンバー高田漣(Gt)、伊賀航(Ba)、伊藤大地(Dr)、野村卓史(Key)を引き連れ、20世紀のポップミュージックをルーツに持つ細野晴臣の現在地を実感できるステージが繰り広げられた。

(1日目/『細野晴臣 50周年記念特別公演』)

 開演前のBGMは、フランク・シナトラの「Nancy(with the Laughing Face)」、ベニー・グッドマンの「On A Slow Boat To China」など。ミッドセンチュリーの名曲が響くなか、バンドメンバーがステージに上がり、「銀河鉄道の夜」のエンドテーマを演奏(アニメ映画『銀河鉄道の夜』(1985年)は、細野が初めて音楽映画を手がけた作品)。リズムに合わせて細野が軽快な足取りで登場し、エキゾチックなムードの「Honey Moon」を歌った。カナダ出身のシンガーソングライター、マック・デマルコがカバーしたことでも知られるこの曲は、アルバム『トロピカル・ダンディー』(1975年)の収録曲。細野のエキゾチカ時代を象徴する楽曲のひとつだ。

 「先日、照屋林賢から電話があって。”忙しいでしょ、晩年”と言われまして。今日もそうですけど、明日もあるんですよね」「今日は総集編ということで。新曲は3曲くらいかな」というMCに続いては、リトル・リチャードの歌唱で知られる「Tutti Frutti」さらにアーティ・ショウの「Back Bay Shuffle」、アーヴィング・バーリンの「The Song Is Ended」の日本語カバーを披露。往年のアメリカンミュージックを再解釈して現在に伝える、細野晴臣バンドの魅力がしっかりと伝わってきた。

 この後は、最新アルバム『HOCHONO HOUSE』バージョンにアレンジされた「薔薇と野獣」「住所不定無職低収入」「CHOO CHOOガタゴト」。『HOCHONO HOUSE』は、細野晴臣名義のソロ第1作『HOSONO HOUSE』(1973年)をリメイクした作品だ。20代の頃に制作された『HOSONO HOUSE』について「とにかくこのアルバムを完成させよう」という気持ちだけで。だから、アレンジも生煮えっていうのかな」(参考:細野晴臣が語る、『HOCHONO HOUSE』完成後の新モード「音楽の中身が問われるようになる」)と語っていたが、打ち込み、弾き語りなど多彩なスタイルでリメイクされた『HOCHONO HOUSE』の制作、そして、新たなバージョンをライブで演奏することで『HOSONO HOUSE』はようやく完成の日を迎えたのだと思う。

 「ボブ・ディラン、また来るんですよね。負けらんないなんて思わない、負けてもいいです(笑)」「20年くらい前、温泉に行ったとき、仲居さんが“YMOをされてたんですよね。引退されたんですか?”って」「来年は51年目だから、いよいよ引退かなと思ってたんですけど、外国から“やってくれ”という話があって。やめられないんですよ」というMCの後、巨大なミラーボールが下りてきて、「ここからはチークタイムです」と「Angel On My Shoulder」「I’m A Fool To Care」を演奏。続いてゲストのReiが登場し、彼女がリクエストしたという「Pistol Packin’Mama」をセッション。さらにReiがひとりで「my mama」「BLACK BANANA」を熱演し、大きな拍手が巻き起こった。

 ここからライブは後半。「アンサング・ソング」(映画『メゾン・ド・ヒミコ』より)、「アーユルヴェーダ」(映画『グーグーだって猫である』より)と映画のために制作した楽曲を挟み(どちらの曲も3拍子に独自の解釈を加えたリズムが印象的だった)、「Ain’t Nobody Here But Us Chickens」からブギウギのセクションへ。オリジナル曲「Body Snatchers」(アルバム『S・F・X』/1984年)、「Sports Men」(アルバム『フィルハーモニー』/1982年)の豊かな高揚感はまさに絶品だった。10年以上に渡り、バンドメンバーとともにブギウギを追求してきた細野。「ブギウギがいちばんラク。“言葉”を覚えちゃえばいいから」というコメントからも、ブギウギのエッセンスがしっかりと血肉化されていることが感じられた。

 ピアニストの斎藤圭士を交えてブギウギの名曲「The House of Blue Lights」を演奏し、本編は終了。鳴りやまない手拍子に応えて再びステージに上がった細野は「これをやらずには帰れない」と「北京ダック」(アルバム『トロピカル・ダンディー』)を披露。さらに「Pom Pom 蒸気」(アルバム『泰安洋行』/1976年)で心地よい一体感を生み出し、ライブはエンディングを迎えた。

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