『EXTERMINATOR』インタビュー

般若のライブを支えるDJ FUMIRATCHが語る、面白いラッパーの条件

「有名無名だとか関係なく、面白い人を入れたい」

ーーFUMIRATCHさんが「こいつ、面白いな」と思う若手ラッパーの条件があるとしたら、何ですか?

DJ FUMIRATCH:やっぱり言葉ですね。人と違う歌詞を書けるかどうか、そこを重視しています。今、オートチューンをかけるとみんな声も似ちゃうし、フロウも似た感じになるから、個性が出にくいですよね。そこで生き残るには、やっぱりオリジナリティある言葉選びしかないなと思うので、そこを聴いちゃいます。

 今回、Gaiってやつが入っていて、多分誰も知らないくらいの若いアーティストなんですけど、偶然彼のMVを観たら、まだ(YouTubeで)200回くらいしか再生されてなかったんですよ。でも、「こいつ面白いな」と思ってTwitterでフォローして、それで一緒に曲を作ることになったんです。人気があるないとか、有名無名だとか関係なく、面白い人を入れたいなと思って参加アーティストを探してたんですけど、そこにハマったのがGaiですね。

ーーそうした若手も多く参加している一方で、般若やSHINGO★西成、そしてZORNら、昭和レコードの所属ラッパーらも勢揃いしていますよね(※ZORNは今年の7月に昭和レコードを脱退している)。彼らのアルバムに楽曲を提供するのではなく、自分のソロアルバムに参加してもらうということで、特別な緊張感などはありましたか?

DJ FUMIRATCH:いや、逆にそこが一番ラクだったかもしれないです。去年、アルバム『MAX』(※般若、ZORN、SHINGO★西成の連名によるコラボ作)を出したので、その流れでもあって。

ーー今回、般若と¥ellow Bucksをコラボさせるアイデアも意外でした。

DJ FUMIRATCH:7月くらいに、福岡のライブでBucksくんと一緒になったんですよ。それまで、彼の音源は聴いてましたけど、ライブを観てめちゃくちゃかっこいいなと思ったんで、ライブが終わってバーカウンターのところで「ちょっと般若さんと曲をやってほしいんだけど」ってストレートに話しかけたんです。本人は「マジっすか」って感じだったと思いますね。般若さんも曲のコンセプトも含めて、二つ返事で了承してくれました。

ーーかたや、ZORNはBRON-Kとコラボしていて、かなりずっしり濃い目の曲に仕上がっていますよね。

DJ FUMIRATCH:ZORNくんは、誰かパンチある人とやらせるしかないなと思って。BRON-Kさん、パンチあるじゃないですか。その組み合わせが面白いなと。それでZORNくんにも話して「やりたい」という流れになりました。

ーーSHINGO★西成さんとSONOMIさんのコラボはドラマティックさもありつつ、安定感も感じました。

DJ FUMIRATCH:意外と思われるかもしれないんですけど、このアルバムの中で一番付き合いが深いのが、実はSONOMIさんなんです。僕も彼女も青森出身で、高2くらいの時にSONOMIさんから地元のイベントに誘っていただいて、それが最初の出会いでした。この組み合わせ、前からいいなと思っていて、SHINGOさんに相談したら「ええよ」と言ってくれて、すぐに作り始めました。

ーー曲ごとのテーマは事前にFUMIRATCHさんから伝えた上で、各アーティストに制作してもらったんですか?

DJ FUMIRATCH:そんなに自分を押し付けるのも嫌だし、歌い手さんの世界観も出したかったので、まずはトラックを聴いてもらって、お互い話し合いながら(内容を)決めていくって感じでした。例えば、SHINGOさんとSONOMIさんの曲はミュージカルの始まりのイメージなんです。ドラムロールも独特なものを使っていて、聴いてる人は分からないかもしれないけど、そういうこだわりも忍ばせました。

ーー終盤、泣きのバイブスというかエモい雰囲気が漂う感じがさすがだな、と。

DJ FUMIRATCH:もうちょい明るい曲も作りたかったんですけど、今思うと暗い曲が多いかなとも思います(笑)。でも最後はいい流れが作れたかなと思います。

ーー先ほどは「あえて自分の色を出したくない」と話していましたが、全体的にメロが際立っている楽曲が多いように感じましたし、特に後半、盛り上げていく部分に個性が表れているのかなと感じました。

DJ FUMIRATCH:そういうところを意識したわけじゃないんですけど、完成した作品を聴いてみると、「そっちの方が得意なのかな?」と自分でも思いましたね。

ーー最近だと、DJでもシングルやEPを量産してからアルバムを出す、というパターンも少なくないと思うんです。ストリーミングサービスやYouTubeで楽曲を楽しむ時代だから、という背景もあるし。今回、まずはガツンとアルバムを発表したということろにこだわりはありますか?

DJ FUMIRATCH:やっぱり、アルバムで評価されたいっていう気持ちが強かったですね。シングルとは別に、アルバムを聴いたらすごく印象が変わるアーティストっているじゃないですか。個人的にはそういう経験が多いので、そういった思いが根底にあったのかもしれないです。

ーーちなみに、早くも次作に向けたアイデアなどもある?

DJ FUMIRATCH:実は、もう2枚目のアルバムに着手しています。今回、収録に漏れた曲もあるのでどういう方向性にしようかなと思っているんですけど。ただ、まずは『Exterminator』に対する反応がどうなのか、自分でもちょっと分からないんで、それ次第かな。自分としてはラップやビートに関しても結構いろんなスタイルを詰め込んだ感じなんで、それが皆さんにどう捉えられるのかは、楽しみでもあり不安でもある感じですね。

(取材・文=渡辺志保/写真=西村満)

■リリース情報
『EXTERMINATOR』
LABEL : 昭和レコード
発売 : 2019年10月23日(水)
価格 : ¥2,500(税抜)

収録曲:
01. アミーゴ feat. NORIKIYO & SNEEEZE
02. Capacity Over feat. 般若 & ¥ellow Bucks
03. 刻一刻 feat. BES & 紅桜
04. After The Rain feat. ZORN & BRON-K
05. foggy feat. Gai
06. Energy Mode feat. RENE MARS & OZworld
07. F.R.K.K. (SHAKA SHAKA) feat. DEVIN
08. The Music feat. SHINGO★西成 & SONOMI
09. 朝焼けとマイソング feat. 弘Jr.
10. WE feat. HANG

■イベント情報
般若『JAPAN TOUR 2019』
日程:11月2日(土)、3日(日・祝)、4日(月・祝)
会場:渋谷VUENOS
時間:OPEN 18:00/START 19:00
料金:前売3,500円/当日4,500円(共に税込、当日券が出ない場合あり)
問合せ:渋谷VUENOS(TEL: 03-5458-2551)
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