『OLDFOX』リリース特別対談
チェリコ KAT$UO×さらば青春の光 森田哲矢が語り合う、好きなことを追求するパンクな生き方
KAT$UOと森田、それぞれのフェス体験談
ーー余計に寝られなくなりそうです(笑)。音楽のことをまったく知らないという話が出ていますが、そういう森田さんは今年、初めてフジロック(『FUJI ROCK FESTIVAL '19』)に行ったことがネットでも話題になっていましたよね。
森田:僕、結局ミーハーなんですよ。「人生で1回は」って思っちゃうタイプで。フジロックも、人生で1回は行きたいよなって。もともと『ゴリラーマン』の頃からハロルド作石さんの漫画が好きで、のちに『BECK』を読んで。これが多分フジロックのことを表してるんだなとか、読んでると分かるじゃないですか。なんかみんな行ってるし、音楽に詳しくないけど、人生で1回くらい行ってみたいよなっていう気持ちだけで行ったんです。たまたま2日間休みができたから、唐突的に。
ーー楽しめましたか。
森田:いやあ、過酷でしたね。
KAT$UO:そうだったんだ。
森田:フジロックの洗礼を受けたというか。だって、会場に着いて30秒くらいでけっこうな雨が降ってきて。その時点でどうしようかなって思って(笑)。(ハライチ)の澤部(佑)さんに現地で会ったんですけど、会うなり「お前がきた瞬間に雨降ってきたな」って言われて。で、「俺ちょっとキューバのジャズ見てくるからごめんな」ってどっか行っちゃったんですよ。それですぐに別行動で。初日は大雨の中、アジカン(ASIAN KUNG-FU GENERATION)とかを観てという感じでしたね。
KAT$UO:僕もそれはTwitterで見てましたね。
森田:ライブ観ずに女の子を追いかけていたこととか、まさにTwitterに書いたことがすべてでしたね。「お前はフジロックに何をしに行ってるんだ」とか賛否両論ありましたけど。一方では「いいぞ、森田」っていう擁護もありつつ、いろんな盛り上がりがあって。音楽ファンは音楽ファンで、フジロックに行けなかった人が僕のTwitterを見て、現地にいるような気持ちでいたというのがあったり。あとは、音楽が好きだけど、どこか心の片隅にこいつのように女の子目当ての気持ちもあるよなっていう人もいたし。2日間でフォロワーが1万人くらい増えたんですよ。その数日後に「フジロックのトークライブをやる」って言ったら、2、3千人が行きたいと言ってくれて、チケットが即完したんですよね。ありがたいですよ、本当に。音楽はまったくわからないのに、トークイベントにはRage Against the MachineのTシャツを着て行きましたけどね。
KAT$UO:はははは(笑)。
森田:音楽ファンには刺さるだろうと。Beastie Boysとレイジとジミヘン(ジミ・ヘンドリックス)のTシャツを持って行きました。1曲も知らないですけど。
ーーTHE CHERRY COKE$はフジロックに出演もしています。どんな思い出がありますか?
KAT$UO:特別ですよね、フジロックは。最初に出させてもらったのが2005年で、ROOKIE A GO GOというステージだったんです。それがThe Poguesというアイリッシュパンクのレジェンドが出る年だったんですよね。The PoguesがWHITE STAGEのトリで、僕らROOKIE A GO GOの1番目だったんです。もともとこの年はThe Poguesを見に行こうと思っていたから、それが見れないなら断ろうと言ってたんですよ。
森田:へええ(笑)。
KAT$UO:当時20代半ばだったし、生意気な時期でもあったので。The Poguesが見れないならいいですって言ったら、運営の方が出順は変わらないけどWHITE STAGEまでバスで迎えに行くって言ってくれたんです。The Poguesが終わったらステージ袖で待っていてくれって言われて、専用のバスに乗せてもらって、山道をバーっと走ってROOKIE A GO GOのステージまで連れて行ってもらったんです。
森田:もういいでしょ、出なくて(笑)。
KAT$UO:しかもThe Poguesのときに、みんな酒飲んでベロベロになっちゃって(笑)。僕を筆頭にクソみたいなライブしたんですよね。フジロックでは、僕らみたいなルーキーでも速レポを出してくれるんですけど、ああいうのってそんなに悪くは書かないじゃないですか。それが、“こいつら何しに来たんだ”くらいな感じで酷評されまして(笑)。それを次の日に見て、俺たち何やってるんだ……ってなったのは覚えてます。そういう悔しい思いがあって。時を経て2013年に、かつてThe Poguesを観たWHITE STAGEに出させてもらったんですよね。それは感慨深くて。
森田:いやあ、あれは気持ちいいだろうなって思いますよ、ミュージシャンは。僕が今回唯一自分で観たいと思って行ったステージが、竹原ピストルさんで。それがWHITE STAGEやったかな。僕が全曲知っているアーティストが、ハイロウズ、ブルーハーツと竹原ピストルさんがやっていた野狐禅なんです。東京に上京して一発目に観たライブも、竹原ピストルさんのライブで。フジロックのときも、現地で会った女の子と回っていたんですけど、「竹原ピストルだけは見させてくれ」って言って、ひとりでWHITE STAGEに見にいったんです。「アメージンググレイス」という曲で泣いちゃうくらい、むちゃくちゃ良くて。一体感もえげつなかったんですね。まあ、ライブが終わってその女の子に連絡したら、急に連絡とれんようになって。またフジロックをひとりでさまよって、気ぃついたら一番奥のステージでポールダンス見て、テキーラ飲まされてましたけど(笑)。
森田「この世界の人は楽しく生きることに一生懸命」
ーーその後にROCK IN JAPAN FESTIVALにまで行ってとフェスライフを満喫していたようですね。THE CHERRY COKE$は20周年、さらば青春の光は昨年10周年を迎え、キャリアを重ねてきましたが。それぞれ好きなことを仕事にしているということで、その良さや大変さというのはありますか。
森田:これを見ても分かる通り(THE CHERRY COKE$のアーティスト写真を見て)、僕らのいる芸能の世界は結局、普通の仕事ができない人たちが入ってきてると思うんですよ(笑)。
KAT$UO:そう?
森田:僕はそうですよ。クズが入ってくる世界なんですよ。普通の仕事ができない、サラリーマンとして働けない人たちが、なんとか自分の秀でた部分で国や国民に認めてもらおうとする世界だと思っているので。こうやって好きなことでご飯食わせてもらっているのは、奇跡的なことじゃないですか。みんな朝から晩まで必死に働いて、いろんな我慢をしてお金をいただいているのに、僕らは出てきてちょろっと喋ってお金をいただけるのはすごくありがたいことで。でも、同時に、それはちゃんと笑いで還元しないといけないなという思いはありますね。
KAT$UO:よく、何かを生み出していく仕事は大変だよねって言われるんですけど、でも何をやってもきっと大変は大変で、僕はたまたまそれが音楽だっていうだけなんですよね。不安定な夢だからこそ、そういうふうに言われるのかなって思うんです。普通に就職をして、自分たちと同じ世代の人は今は役職がついていたりする年齢じゃないですか。そういう奴の方が、よっぽど大変なものを抱えてやってるんだろうなと思うと、そんなに僕は特別ではないと思うんです。でもなんでやめないかっていうと、ステージで感じるものだったり、見ている光景を諦めきれないんだろうなっていうのはありますね。
森田:たしかに、ちょっと麻薬みたいなところはありますからね。僕らお笑いで言うと、大勢の人が大爆笑してくれたっていうその笑いが麻薬みたいなことになってるんやなと思いますね。
KAT$UO:音楽のライブだと一体感って感じやすいし、“今日はきてるな”とかお客さんの感じがわかるけど、お笑いでもそういう“うねり”みたいなものってある?
森田:そうですね。僕らは賞レースで生きてきたところがあるんですけど、とある大会の準決勝で、「ROCK」という工場員のネタをやったことがあって。それは前の事務所を辞めたり、スキャンダルも重なったタイミングで、どんなにウケるかはわからなかったんです。決勝に行けないと思っているなかで、そのネタをやったら人生で一番ウケたんですよね。それが本当に快感として残っていて、それをまた浴びたいという思いで毎回ライブをやっているんやろうなって気持ちはあります。
KAT$UO:それがすべてなような気がするし、何をもって成功とするかって難しいじゃないですか。音楽だけで何不自由なく飯が食えるようになるとか、いい家に住めるとか、いい車に乗れるとか、もちろんそれも成功だとは思うんですけど。例えばTHE CHERRY COKE$でいうと、いろんなフェスやステージに立たせてもらったり、それこそ地方の小さなライブハウスでも、今日はハンパなかったなっていうのは快感として残る。
2年くらい前に、アメリカのそうそうたるバンドと一緒に豪華客船でのカリブ海クルーズみたいな企画でライブをやらせてもらったことがあったんです(Flogging Molly主催のクルーズツアー『Salty Dag Cruise』)。そういうのを目標としていたわけじゃないけど、すごい夢が舞い込んできたなって思いましたしね。そういう大きなものもあれば、フェスに出させてもらって、バックヤードでは何不自由なくケータリングが並べられていて、お好きにどうぞってなっている状況も成功のひとつでいいんじゃないのかなって思うし。そういう幸せの積み重ねで、ひとつひとつ夢が叶えていける職業なのかなと思いますね。
ーー進むごとにまた新たな夢も出てくるんですね。
KAT$UO:そう。あのときは別に思い描いてなかったけど、バンドをやっている上でこんな幸せを感じられる瞬間があるんだっていうことが出てくるというか。それは面白いなと思いますね。
森田:総じてこの世界の人は、楽しく生きることに一生懸命で。そういうことなんだなと思いますけどね。これがいちばん一生懸命できるものじゃないですか。
KAT$UO:そうだね。
森田:楽しく生きないと、この世界に入っている意味がないし、楽しくなかったらやめるしかないと思うので。この世界の人はみんなそうだと思うんです。自分が楽しくないと、誰の人生だってなると思うので。
ーーよく一緒に飲むけれどそういうときに音楽の話や、熱い話をしないって聞いていたんですけど、逆に会ったときって何を話しているんですか。
森田:僕は飲みに行かせてもらうときはずっとーー。
KAT$UO:芸能ゴシップですよね(笑)。ゲスい話をしてますよ。「あれ本当なの?」「ほんとですよ」とか。
森田:そうですねえ。
ーーではこれを機に、今だからこそお互いに聞きたいことってありますか。
森田:聞きたいことか……。聞きたいこと、うーん。
KAT$UO:まあ、とくにないよね(笑)。
森田:僕が聞きたいことは、最近の音楽界のゴシップないですかっていうことですかね。
KAT$UO:僕も芸能界のゴシップかなあ。
森田:じゃあ、それはこの後に居酒屋でゆっくりと話しましょうか(笑)。
(取材・文=吉羽さおり/写真=林直行)
■THE CHERRY COKE$ リリース情報
20周年記念9thアルバム『OLDFOX』
2019年10月9日(水)発売
¥2,591+税
<収録曲>
1. 火華〜HIBANA〜
2. Daydream Believer
3. パブリック・ハウス
4. Flame
5. Social Network Slave
6. 蒲田行進曲
7. Ark Line
8. ラスト・ピース
9. Of Music
10. 桜舟〜Sail Of Life〜
11. Brigade
■ツアー情報
リリースツアー『OLDFOX JOURNEY』
11月16日(土)蒲田ニューエイト
11月23日(土)豊橋club KNOT
11月24日(日)磐田FM STAGE
11月29日(金)八戸FOR M E
12月2日(月)札幌KLUB COUNTER ACTION
12月14日(土)高崎SUNBURST
12月15日(日)HEAVEN’S ROCK 熊谷VJ-1
1月18日(土)京都Growly
1月19日(日)神戸太陽と虎
2月7日(金)Bangkok(THAILAND)
2月8日(土)SriRacha(THAILAND)
2月10日(月)Pattaya(THAILAND)
2月15日(土)福岡Queblick
2月23日(日)長野LIVE HOUSE J
2月24日(日)金沢vanvan V4
3月7日(土)盛岡 the five morioka
3月8日(日)仙台BIRDLAND
3月20日(金)大阪BRONZE
3月21日(土)名古屋APOLLO BASE
3月29日(日)恵比寿LIQUIDROOM
■さらば青春の光 DVDリリース情報
単独LIVE『大三元』
発売中
価格:¥3,333+税
<収録内容>
「オープニングコント」
「怒呆」
「スカウト」
「サラリーマン川柳」
「パンのむらた」
「金曜の100倍」
「終電逃させ屋」
「祭りのあと」
「エンディングトーク」
<特典映像[東京凱旋公演]>
「パンのむらた」
「食の匠」
「終電逃させ屋」