ORANGE RANGEの遊び心に富んだ音楽哲学 5回目の『RWD←SCREAM』を振り返る
過去の作品にスポットを当てたコンセプトツアー『RWD←SCREAM019』が、8月30日のZepp Tokyoでファイナルを迎えた。今回で開催5回目となる本ツアーの軸となるのは、2008年リリースの5thアルバム『PANIC FANCY』。「02」、「君 station」、「イケナイ太陽」、「イカSUMMER」といったヒットシングルが収録されオリコンウィークリーチャートで1位を獲得したアルバムだ。
この日も『PANIC FANCY』の1曲目を飾る「Beat it」でスタートし会場の熱気を巻き起こすと、続く「イケナイ太陽」で早くも観客の興奮は最高潮といった感じで、大きなシンガロングが起きる。RYO(Vox)が「俺らよりも熱くなれるやつ、デカイ声をちょうだい」と観客に声をかけると、満員のフロアにうねるように拳が上がり、歓声が湧き上がった。「後悔なく楽しい時間を過ごしていきましょう」というYAMATO(Vox)が叫び、ライブ序盤にして『PANIC FANCY』の奥深い世界へと突入していく。
ギターロックにエスニックなテクノポップ、白昼夢的なドリームポップに、その全部が溶け合ったミクスチャーなど、時空を捻じ曲げていくようなこのアルバムの奇天烈なポップ性で、観客の歓喜の声は加速度的に高くなっていった。とくにタイトなビートにポップなシンセとRYO、HIROKI、YAMATOの3ボーカルがカラフルに絡んで、幾何学的な模様を生み出す「世界ワールドウチナーンチュ紀行〜シーミー編〜」や、ローファイなサウンドとYAMATOのキャッチーなハイトーン、RYOのゆる〜い低音ラップ、HIROKIのストレートな歌心との掛け合いがシュールな「ソイソースVSペチュニアロックス」は、まさにORANGE RANGEならではのグルーヴだ。
『PANIC FANCY』は、セルフタイトルの4thアルバムと初のベスト盤を経ての作品であり、バンドとしては原点回帰と進化の両輪で押し進めた、自由度の高い遊び心に富んだ一枚である。メンバーは最強の曲、色々なタイプの曲が収録されていると語っていたが、ファンの内でも愛されている作品であるのは序盤の盛り上がりからも明らかだ。
“巻き戻す”の意味合いがある“RWD←SCREAM”という過去作品のライブができるのは、バンドを続けているのはもちろん、作品を聴き続けてくれる人がいて成立する奇跡的なことだと、HIROKIはMCで話す。そして「過去作品が軸のツアーではあるけれど、後ろ向きでなく、自分の人生を振り返ってみて、あの時と変化したことや進化したことを見つけてあげてください。明日のヒントを見つけて帰ってください」と語った。