欅坂46『別冊カドカワ 総力特集』から見える裏側 原田葵、平手友梨奈ら発言などから考察

 また、平手と北川の対談も興味深い点が多々ある。アイドルと女優で本業は違えど人前でパフォーマンスする点において共通する二人は、「表現者の苦悩」とも言うべき部分で共鳴する。北川は次のように語った。

「形は変われど、何かを生み出したり、表現したりするのは、自分を削ってやっていくことだからすごく大変じゃない? だからといって手を抜くと作品が中途半端になってしまう。いいものを作ろうとすると自分がボロボロになるのは避けられない。極端な話、毎回『今回が終わりでいい』と覚悟して出し切らないといけない仕事で、その意味では、この業界で仕事していく大変さはもう十数年来変わらないかな」

 この発言に対して、平手も「ふみ(北川)と私はそこが似てるって思う」と同意する。ファッション雑誌『Seventeen』のモデルとしてデビューした北川と、欅坂46の最年少センターとして抜擢された平手。彼女たちにとって仲間とは”目的を共有する仲間”でもあり、同時に”ライバル”でもある。早くから注目された二人は、”協調性”と”個性の発揮”の狭間を常に揺らぎながら過ごす活動を強いられていたのだ。そういう複雑な状況を過ごしてきた二人だからこそ、今では毎日連絡を取り合うほどの仲にまでなっているのだろう。

 さて、本書を通して見えてきたのは、普段ファンの前では見せないような彼女たちの裏側の努力である。「欅坂46 全ラジオ番組潜入記」の項では、4月から『欅坂46 こちら有楽町星空放送局』(ニッポン放送)のラジオパーソナリティーとなった尾関梨香が他のラジオを聴いて勉強していることを明かしている。復帰した原田にしても、『欅共和国』へ向けての陰での必死の努力が伝わる。平手&北川対談でも、北川は徹底して「ひーちゃんはすごい人って皆さんに分かってほしい」と強調する。当然といえば当然の話だが、こうしてまとまった形で読むとそれがより強く感じられるだろう。

 現在、全国ツアー中の欅坂46。こうした中でも学業やモデル業、ラジオ〜テレビ収録など、さまざまな活動を並行しながらステージに立っている。本書を読めば、舞台で見せる表情の裏側に潜む、人知れず活動に打ち込む姿が浮かび上がるはずだ。

■荻原 梓
88年生まれ。都内でCDを売りながら『クイック・ジャパン』などに記事を寄稿。
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