androp、デビュー10周年イヤーへのときめきを伝えた一夜 『daily』ツアー初日を振り返る
ますますフレンドリーな空間が生まれていくなか、最新作から「Canvas」、そして初期の作品から「Youth」や「Nam(a)e」が続く。聴きなじんできた曲が、新たな曲、新たなモードが加わったセットリストのなかで新鮮に響き、ちがった角度でも聞こえてくる。「Singer」は高揚感と同時に神聖さが増して、観客が力強くコーラスを担うなかで、美しくどこまでも広がっていくような歌となった。
そして彼らにとって大きなヒットチューンとなった「Hikari」から、Creepy Nutsとの異色コラボで驚かせた「SOS!」という流れでギャップを見せて、後半は「Prism」、「Voice」、「Yeah! Yeah! Yeah!」と鉄板のシンガロングチューンで、観客は大きくジャンプして、声を張り上げた。
「楽しいです、ありがとう。こういう瞬間があるから音楽を続けてきてよかったと思う。ライブは、俺たちにとって大切な場所。当たり前にできるわけではないし、大切にしたいからこそ、これからもいい音楽を作っていきたい」と内澤は観客に語りかける。喋るのはヘタだから、とその想いを託した曲だと言って最後に「Home」を演奏。andropの10年という歩み、バンドと音楽との10年、バンドと観客との10年、もっとパーソナルな個と音楽・歌とが紡いできた10年という重みある時間を曲に記し、どれだけ先に進んでも、いつでも帰れる場所とした「Home」。その暖かな光あふれる曲は、演奏するたびに、優しさを増している。
アンコールではandropでは初めてと言える、まっすぐなラブソング「Koi」を披露。映画のために書き下ろした曲だが、この「Koi」もまた10年というアニバーサリーイヤーと、その先へと続いていくこれからにふさわしい。そのときめきを伝えるような一夜となった。
すでに秋のツアー『one-man live tour 2019 "angstrom 1.0 pm"』開催が決まり、2020年1月には10周年を締めくくる人見記念講堂2デイズ『androp -10th Anniversary live-』が決定しており、ここからのライブ三昧のなかでも最新作の曲たちが大きく育っていきそうだ。
(文=吉羽さおり/写真=笹原清明)