アンジュルム「恋はアッチャアッチャ」好調の要因 ハロプロ伝統と本来の目的果たしたMVの効果

正攻法かつハロプロ流とも言える

 視聴者の気を引くために昨今のCMには様々な仕掛けが張り巡らされているが、ロッテのFit’sシリーズや大東建託の「いい部屋ネット」シリーズなど、人気タレントを起用してダンスやキャッチーな楽曲を歌わせるのはテレビCMの王道の手法である。その点で、今回の「恋はアッチャアッチャ」のCMとしての作りはむしろ正攻法と言えるだろう。

 そして、こうした風変わりな振り付けを取り入れるのは「LOVEマシーン」に端を発するハロプロの伝統芸でもある。アイドルの振り付けとして当時は有り得なかったダンスで世間にインパクトを残し、社会現象にまで至った先輩グループ・モーニング娘。の姿を彷彿とさせる。つまり、今作のMVは現代広告のトレンドに倣いつつ、グループの伝統を受け継いだ結果とも言えるのだ。

 また、今回のCMは非常に効果的に打たれている印象がある。日本テレビ系列で4月12日に放映されたジブリ映画『風立ちぬ』をはじめとした多くの特番で散見されているが、ここまでCMが打たれるのはハロプロ楽曲としてはあまりなかった傾向だ。今回の場合、CMに出くわした視聴者が「中毒性がある」「癖になる」とのことでYouTube動画へと移る流れができている。CMが単なるCMで終わらず、そこからMVまで引き寄せる好循環が起きている。効果的な広告の在り方だ。そもそも「MV」というもの自体が、曲あるいはアーティストを広く世の中に知らせるために作られるものである。「曲を作ったからとりあえずMVを作った」ような作品も見受けられる中、今作のMVは本来の目的通りに機能している。

 曲の面白さ、映像のインパクト、テレビCM。シンプルだが基本的なこれらの要素を備えていると同時に、ハロプロの伝統も汲んでいるという点が今作の好調な要因なのだろう。これを機にアンジュルムの快進撃が始まるかもしれない。

■荻原 梓
88年生まれ。都内でCDを売りながら『クイック・ジャパン』などに記事を寄稿。
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