古市コータロー 4th ALBUM『東京』特別対談
古市コータロー(THE COLLECTORS)×曽我部恵一が語り合う、東京の街から生まれる音楽
古市コータローと曽我部恵一が考える、東京の音楽
ーー東京で生まれ育ったことは、音楽にも影響していると思いますか?
古市:それは関係ないかな。歌詞やブログの文章にはあるだろうけど、サウンドやギターには関係ないと思う。「関係あるよね」と言ったほうが記事になりやすんだろうけど(笑)。ただ、押しつけがましくないギターを弾いてるなとは思うけどね。がんばりすぎてるギターってあるでしょ? そんなに弾かなくていいよっていう。俺はそうじゃないし、それはもしかしたら、大事なものかもしれないなとは思う。あえて言うとうね。
ーー押しつけがましいギターは野暮だと。
古市:そういうこと。「もっと弾いいてもいいのに」というところで、“キューン”くらいでスッと終わったり。音楽だけじゃなくて、パチンコや酒もそうなんだけどね。
曽我部:そこに東京っ子の美学があるのかも。
古市:そうかもね。生まれ持ったものではなくて、子供の頃から少しずつ培ってきたのものかなって。
曽我部:どこかでオシャレというのかな。『東京』のサウンドもトレンドではないし、オールドファッションなロックなんだけど、スマートに聴けるじゃないですか。(エリック・)クラプトンの世界にかなり近いと思うんですよね、俺は。どうしてそうなるのか、その秘密はわからないけど。
古市:俺もクラプトンにはそういうところを感じてた。逆に言うと、そこがわからないとクラプトンの魅力は理解できないんだよね。
曽我部:そうなんですよね。たとえばニール・ヤングは、全部見せちゃうじゃないですか。裏っ返して、全部出すっていう。クラプトンはそうじゃなくて、どっかで冷めてるし、あきらめてる感じがするんです。サラッとしてるし、名盤を作らなくちゃいけないという気合もないし。
古市:そうだね。ギタリストがもう一人いて、そっちの人ががんばって弾いてると、控えめになったり。俺もけっこうそうなんだよね。
曽我部:なのに、ずっと聴けちゃうっていう。すごいですよね、それは。
ーー東京オリンピックの影響もあり、今年から来年にかけて東京は大きく変わることが予想されます。今後の東京と、“東京の音楽”についても聞かせてもらえますか?
曽我部:東京がどうなるかって、考えたりします?
古市:しますよ。場所によってはスラム化してるような印象もあるし。
曽我部:『AKIRA』みたいな? 渋谷とかはそうかも。
古市:そうそう。渋谷なんて、(渋谷クラブ)クアトロ以外は行かないけど(笑)。新宿の都庁ができたときに、「ついに未来が始まった」と思ったんだけど、そこで止まってる感じもあるね。
曽我部:『AKIRA』とか『ブレードランナー』みたいな未来都市になってほしいという気持ちもありますね。街がそうなれば、音楽やカルチャーも生まれるかもしれないし。70年代のアメリカも、街が荒廃して、そこからグラフティなんかが生まれたじゃないですか。この先、東京が変わって、普通の人が住みづらくなってきたら、新しいカルチャーが出てくるのかなと。
古市:そういうカルチャーが生まれるとしたら、どういう人がやるんだろう?
曽我部:不良じゃないですか。
古市:戦後の闇市みたいな。
曽我部:そうそう。いつの時代にも不良はいるべきだし、そういうヤツらが新しいものを生み出すと思うので。
古市:なるほど。俺、今回『東京』というアルバムを作って、スッキリしたところもあるんだよね。「あとはもう好きにして」っていう。
曽我部:『東京』で歌われているのは、コータローさんが見てきた東京ですからね。今後の東京ではなくて。
古市:そう。このアルバムを出したから、もう傷つかない。それくらい思いを込めてたからね。この後、街がどうなっても、喜びもしないし、文句も言わない。関係ないって言ったらアレだけど、この先のことはもっと若い人が考えることだから。政治家とかね。サニーデイの『東京』は、どうして東京にしたの?
曽我部:僕は地方から出てきたんですけど、田舎にいるときは、架空の東京を見ていた気がしていて。それをもう1回、東京に住みながらやってみようと思ったんですよね。はっぴいえんどが歌っていた街の風景だったり、90年代に音楽の最先端だった渋谷の風景なんかを混ぜて、ノスタルジックなんだけど、どこにもない東京を表現したらおもしろいかなと思って。
ーーそこはコータローさんとの違いですね。東京を外から見ているというか。
曽我部:そうですね。東京を歌うときって、決意や思いが込もるじゃないですか。くるりの「東京」もそうだけど。僕はぜんぜんそうじゃなくて、東京をテーマパークみたいな感じで見てたので。
古市:いろんな顔があるんだろうね、人によって。いまも「東京で一旗上げたい」って思ってる地方の人って多いのかな?
曽我部:お笑いはそうですよね。関西のお笑いの人が、東京に来るのはすごい決断だから。音楽はないかも。
古市:一旗上げたい人は、音楽を選ばないか(笑)。
曽我部:僕は音楽で成功したいと思って、東京に出てきたんですけどね。コータローさんはいつ音楽をやろうと決めたんですか?
古市:高1だね。中学のときはフュージョンが流行っていて、音楽をやるのは敷居が高かったんだよ。でも、Sex Pistolsの登場によって「イケるぜ!」って(笑)。やってみたら、ほかのヤツが弾けないって言ってる曲もすぐに弾けたし、「どうやら俺は向いてるみたいだ」って。
曽我部:その頃は誰に憧れてました?
古市:アルバムにも参加してくれたチャボさん(仲井戸麗市)の影響も大きいね。中3のときにRCサクセションが「雨あがりの夜空に」をヒットさせて、一発で好きになって。高2で学校をクビになったんだけど、関係ないよね。こっちはミュージシャンになるって決めてるんだから。……って、いまもミュージシャンをやれてるから偉そうに言えるけど、やれてなかったから飲み屋でクダを巻いてるオヤジになってただろうね(笑)。
曽我部:あと何十年もありますよ。
古市:そうか。ゲッターズ飯田さんにも「98歳まで生きます」って言われたしね(笑)。
(取材・文=森朋之/写真=林直幸)
■リリース情報
古市コータロー 4th ALBUM『東京』
発売中
CD+DVD ¥3,800+税
LP ¥3,500+税
<収録曲>
01.「かわいた世界に」 作詞/岡田惠和 作曲/古市コータロー 編曲/浅田信一
02.「愛に疲れて」 作詞/山口洋 作曲/浅田信一 編曲/浅田信一
03.「ハローロンリネス」 作詞/浅田信一 作曲/浅田信一 編曲/浅田信一
04.「ホンキートンクタウン」 作詞/せきけんじ 作曲/古市コータロー 編曲/浅田信一
05.「ROCKが優しく流れていた」 作詞/曽我部恵一 作曲/古市コータロー 編曲/浅田信一
06.「シティライツセレナーデ」 作詞/堀下さゆり 作曲/堀下さゆり 編曲/浅田信一
07.「泣き笑いのエンジェル」 作詞/せきけんじ・浅田信一 作曲/浅田信一 編曲/浅田信一
08.「そんなに悲しくなんてないのさ」 作詞/古市コータロー・浅田信一 作曲/古市コータロー 編曲/浅田信一
09.「1979」 (interlude) Programming / 浅田信一
10.「Song Like You」 作詞/萩本あつし 作曲/萩本あつし 編曲/萩本あつし・浅田信一
11.「夏が過ぎてゆく」 作詞/古市コータロー・浅田信一 作曲/古市コータロー 編曲/浅田信一・平畑徹也
<参加ミュージシャン(敬称略・50音順)>
浅田信一
ウエノコウジ
内海利勝
加藤綾太
クハラカズユキ
鈴木淳
高間有一
高柳千野
仲井戸麗市
平畑徹也
古市健太
音楽と人増刊「古市コータロー~東京」
発売中
■ライブ情報
古市コータロー SOLO BAND TOUR “東京”
5月30日(木)大阪・梅田CLUB QUATTRO 開場 18:15/開演 19:00
6月1日(土)広島・CAVE-BE 開場 16:30/開演 17:00
6月8日(土)鶯谷・東京キネマ倶楽部 開場 16:15/開演 17:00
6月9日(日)鶯谷・東京キネマ倶楽部 開場 15:15/開演 16:00
6月15日(土)仙台・LIVE HOUSE enn 2nd 開場 16:30/開演 17:00
チケット料金:前売 4,500円/当日 5,000円(D代別)
チケット一般発売日:2019年4月21日(日)
TOTAL INFORMATION: VINTAGE ROCK std.
TEL.03-3770-6900(平日12:00〜17:00)
古市コータロー「東京」発売記念インストアイベント
5月29日(水)タワーレコード梅田NU茶屋店 19:00 START
6月14日(金)タワーレコード仙台パルコ店 19:00 START
内容:トーク&サイン会
※修了公演は割愛
<店頭購入者特典>
・タワーレコード、HMV、その他応援店:絵柄別ポストカード
・ディスクユニオン:缶バッジ
古市コータロー 弾き語りツアー 2019 『東京・Walkin' Blues』
6月16日(日)いわき:club SONIC iwaki 開場 16:30/開演 17:00
6月18日(火)新潟:Live Bar Mush 開場 18:30/開演 19:00
6月21日(金)神戸:VARIT. 開場 18:30/開演 19:00
6月23日(日)福岡:ROOMS 開場 16:30/開演 17:00
6月24日(月)高松:RUFFHOUSE 開場 18:30/開演 19:00
6月26日(水)名古屋:Paradise Cafe 21 開場 18:30/開演 19:00
6月30日(日)札幌:円山夜想 開場 16:30/開演 17:00
7月2日(火)秋田:LOUD AFFECTION 開場 18:30/19:00
7月6日(土)長野:ネオンホール 開場 16:30/開演 17:00
チケット料金 ¥4,500+1D 別(当日¥5,000+1D 別)
※但し定員に達した場合当日券の販売なし。
Total Info. グルーヴ・カウンシル
groovecouncil@gmail.com
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