日本の伝統×ストリートカルチャーが融合 気鋭クリエイター集う『NINJA PROJECT』への期待
一方、黒い衣装をまとったDARKEST BEFORE DAWNの楽曲「BRGHTST BLCK feat. Mas from NOTHING TO DECLARE」には、東南アジアを拠点にして高い人気を誇り、現在は日本に活動の場を移している、ラウドロックバンドNOTHING TO DECLAREのフロントマン・Masが参加。同じくトラップビートを主体にしながらも、Masのシャウトが全編を引っ張っていく構成で、戦いの激しさがまったく別の角度から表現されている。一度トラックが雅楽の要素を加えたアンビエントなものに変化し、〈We are the Shadows〉と繰り返すリフレインを経て、ふたたび終盤にむけて盛り上がっていく楽曲の構成も印象的だ。
MVではそうした楽曲に乗って、BLOOD WILL TELLとDARKEST BEFORE DAWNがそれぞれパフォーマンスを披露。コレオグラフにはThe Black Eyed Peasのwill.i.amによるソロ曲「#thatPOWER ft. Justin Bieber」のMVなどで振り付けを担当した「左 Hidali」のオリジナルメンバーが集結。映像表現は「BRDG」が手掛け、テクノ法要などでも知られるKen-ichi KAWAMURAがコンピューターグラフィックスを制作。巨大なL.E.D.に投射した映像をバックにメンバーがアクロバットやダンスを繰り広げるMVを完成させている。
それぞれ「ヒップホップ」「ラウドロック」という異なる音楽シーンの雄を迎えながらも、2曲ともにパフォーマンス/楽曲/映像において共通しているのは、日本古来の伝統と現代のストリートカルチャーの先端とが手を取り合っていること。様々なスタイルを持つクリエイターが集結し、そのパフォーマンスを複合的に組み合わせることで、かつて日本で暗躍したエクストリームな存在「NINJA」の魅力を現代に蘇らせている。また、そうしたプロジェクト自体が日本の過去と現在をレペゼンするようでもあり、2020年の東京オリンピックに向けて、日本独自のカルチャーを改めて発信するような魅力も生まれている。
2組は今後も様々なフィーチャリング・ゲストを迎えて楽曲をリリース予定。トップアスリートをはじめとした多分野にわたる面々とのコラボレーションも展開していくという。果たして次のゲストは誰なのか? 勝利の女神はどちらに微笑むのか? 時代を越えてジャパンカルチャーが手を取り合った壮大なプロジェクトの行方に注目していきたい。
■杉山 仁
乙女座B型。07年より音楽ライターとして活動を始め、『Hard To Explain』~『CROSSBEAT』編集部を経て、現在はフリーランスのライター/編集者として活動中。2015年より、音楽サイト『CARELESS CRITIC』もはじめました。こちらもチェックしてもらえると嬉しいです。