シド、8年越し横浜アリーナ公演で見せたファンとの“絆” 新曲も披露した15周年グランドファイナル

 アンコールはインディーズ1stアルバム『憐哀-レンアイ-』に収録されている「空の便箋、空への手紙」でしっとりとスタート。本編では軍服のような統一感のある衣装であったが、お色直しをして登場したメンバーの衣装が打って変わってバラバラすぎることを明希に指摘され、「衣装はバラバラだけど仲良いよ」とマオが返す和気藹々としたMCをはさみ、「今までは過去の曲をいっぱいやったけど、どうしても今日はタイトルが“その未来へ”だからみんなにシドの未来を見せたくて新曲を持ってきました」と新曲「君色の朝」を披露。Shinjiが奏でるアコースティックギターとピアノの音色が特徴のゆったりとしたナンバーで、〈流した汗には裏切られたけど 信じた道には疲れ果てたけど そのあとに溢れた涙の数だけ僕たちはまた色を纏う〉というサビの歌詞が印象的なシドの15年間を肯定するような1曲だった。

 オーディエンスがメンバーの名前を叫ぶメンバー紹介の際には「いくつになっても“マオにゃん”でお願いします!」とマオが往年の“マオにゃん”呼びを望めば、初期の雰囲気さながらに「循環」へ。「ここからはお前らがシドの舵を取ってくれ!」と演奏された「Dear Tokyo」ならぬ「Dear Yokohama」ではマオが「横アリ、リベンジ果たしたぞ!」と叫び、続いて銀テープが舞った「one way」も同様に彼らの初心を歌った曲。不確かな未来に不安を抱きながらも〈きっと大丈夫さ〉と自らを奮い立たせて辿りついた15周年で歌うこの2曲はいつも以上に特別な思いを感じずにはいられなかった。

 そして、メンバーズクラブ限定ツアー、コラボレーションツアーが告知され、告知の最後にはニューアルバムの制作が決定したこと、さらに秋には全国ホールツアーの開催とシドとしての“新しい未来”を提示したのち、アンコールのラストに用意されたのはこの日のタイトルでもある「その未来へ」。〈その未来に 光に 罪はなくて その未来へ 光へ 目を向けよう〉とハート型の紙飛行機が舞う中で起こった大合唱には未来を恐れることなく前を向こうという力強さがあった。

「(映像にあった飛空艇のように)浮いたり沈んだりするのが俺だし、シドだって15年かけて思えるようになりました。だから、この浮いたり沈んだりも込みで応援して下さい。そのかわりにみんなが沈んでるときは俺たちが歌で、音楽で、精一杯励ますから」

 と去り際に涙ながらに声を詰まらせて話すマオの姿は弱くて脆く、実に人間らしく、それでいてその弱さを受け入れる強さがあった。そのうえで固く結ばれたファンとの絆は美しく、「3.11」以降頻繁に聞かれるようになった“絆”というワードはここにもあてはまるのだと感じた。もちろんまだ見ぬ未来にも浮き沈みがあり、様々なことが待ち受けていることだろう。しかしシドはこの15年で培ったものと受け入れたものを糧に〈きっと大丈夫さ〉と前を向いて歩いていくはずだ。

(取材・文=オザキケイト/写真=緒車 寿一、今元秀明)

■セットリスト
2019年3月10日(日)横浜アリーナ
1 NO LDK
2 ANNIVERSARY
3 V.I.P
4 cosmetic
5 KILL TIME
6 罠
7 モノクロのキス
8 嘘
9 ホソイコエ
10 2℃目の彼女
11 スノウ
12 ハナビラ
13 dummy
14 隣人
15 プロポーズ
16 眩暈
En-1 空の便箋、空への手紙
En-2 君色の朝(新曲)
En-3 循環
En-4 Dear Tokyo
En-5 one way
En-6 その未来へ

シドオフィシャルサイト

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