EXILE 橘ケンチが語る、日本酒の魅力を伝える意義 「各地域を応援することに繋がる」

 今回の『未来の日本酒プロジェクト』が、昨年7月の西日本豪雨の被災地域の復興を目的していることについて、前垣壽宏氏は「広島は地震や雨が少ない地域なので、危機感覚が鈍っていたかもしれない。まさか土砂災害が自分たちの近くで起こるとは思わなかった。酒造りを存続できないかもしれないほどの被害に見舞われた仲間もいたが、みんなが力を貸したことで、復活した蔵もある」と、力を合わせて復興することの意義を強調。丸本仁一郎氏は、「西日本豪雨によって、人生を突きつけられた。被災の現実からどうやって這い上がるか、どうやって心の処理をするか、どれだけ被災地に寄り添えるかは大事なこと。実際、ひとつの町から人口にして1万人が消えている。取り壊しとなった建物は3000軒にも及ぶ。岡山はあまりにも広大な地域がダメージを受けている。物理的にも精神的にも皆さんで支えていきたい」と訴えた。

 それぞれの蔵のおすすめの一本について話が及ぶと、前垣壽宏氏は「朱泉本仕込」を紹介。祖父の代に、伝統的な米だけでの酒造りを復活させた銘柄で、その味わいを「飲んでいるうちにどんどん旨くなって、気付いたら一升瓶を空けてしまうようなお酒。相手に寄り添って優しく支えてくれる力強さとしなやかさがある。瀬戸内海の白味魚はそっと下支えして、お肉と合わせれば脂っこさを抑えてくれる」と説明した。一方の丸本仁一郎氏は、「竹林」を紹介。「米作りから一貫して造った軽やかなお酒で、和食に合うようにできている。食材に合わせて様々な味わいのお酒を作っていて、中にはローストビーフやブルーチーズに合う酒もある。『竹林』は燗で飲むのもおすすめ」と魅力を語った。

 プロジェクトの今後について聞かれると、橘ケンチは「日本酒の世界に足を踏み入れてまだ日は浅いけれど、自分にできることを全力でやっていきたい。ただ日本酒を作って終わりではなく、長期的なプロジェクトとして、その土地の方々と仲良くなって、一緒にどんなことができるかを考えていきたい」と意欲を見せ、さらに「日本酒造りの背後にあるストーリーや、その土地で働く人々のことを伝えていきたい。それが人の心を打ち、復興の輪も広がっていくと思う。例えば、前垣さんの酒蔵がある西条市では、年に一度『酒まつり』というイベントをやっていて、2日間で25万人の方々が集まるのですが、その中心にいるのが前垣さんなんです。一方で、丸本さんは音楽が好きで、蔵の横の建物内には映画館並みの爆音で音楽が楽しめる音響部屋がある。そんな方が作っていると考えると、お酒にも愛着が湧くし、長い間、人の心にも残るはず」と語った。

 最後に、最近のおすすめの飲み方について聞いてみると、橘ケンチは、「僕はトマトが好きで毎朝食べているので、トマトと合わせて飲めるお酒はないかなと、色々と試してみたところ、デザートワイン的な甘口の日本酒と意外に合うことを発見しました。糖度が高くてトロリとした味わいの貴醸酒は、酸味のある野菜やフルーツとの相性が良いです」と回答。改めて日本酒の懐の広さを伝えた。

(取材・文=松田広宣)

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