YUKI、待望のサブスク解禁 最新作が“二度目の1stアルバム”と言われる理由を過去作から考察

 YUKIが輝き続ける理由、それは常に自分自身に対して「どんな自分でありたいのか」を問いかけ、実現しているところにあるのではないだろうか。YUKIは2002年にソロデビューを果たして以降、15年の間に8枚のオリジナルアルバムを発表してきた。1月30日にサブスクリプションサービスでそれらの配信がスタート。改めて作品を振り返ると、どれもがその時代ごとのYUKIの姿を明確に示すものとなっている。

YUKI『PRISMIC』

 1stアルバム『PRISMIC』(2002年3月27日)は、ロックバンドのボーカリストとして積み重ねてきたものをソロとして一から再構築したような作品だった。日暮愛葉(Seagull Screaming Kiss Her Kiss Her)をプロデューサーに招き、デビューシングル曲「the end of shite」をはじめとするオルタナティブで、アンニュイかつセクシーな世界観が作り上げられた同作には、これまでも様々な場面で歌われてきた「プリズム」やスピッツが演奏に参加した「愛に生きて」などを収録。ほとんどの曲の作詞作曲をYUKI自らが手がけ、「ふるえて眠れ」「呪い」などエッジの効いた言葉が多く見られたのも特徴的だった。また、日暮愛葉の他にも會田茂一、ドン・マツオ(ズボンズ)、ミト(クラムボン)ら90年代からバンドシーンで活躍してきたミュージシャンが編曲を担当。ソロのキャリアの中でもっともロックに振り切っていた時期とも言える。

YUKI『commune』

 そんな鮮烈なデビューから1年後にリリースされた2ndアルバム『commune』(2003年3月26日)では、會田茂一がメインプロデューサーを務め、フォーキーなサウンドに傾倒。シングル曲の「スタンドアップ!シスター」や「センチメンタルジャーニー」、キセルと共作した「砂漠に咲いた花」、Caravan作曲「ハミングバード」やスネオヘアー作曲「コミュニケーション」など、歌とギターを主軸にシンプルな編成でも純粋に曲の良さが伝わる楽曲が揃えられた。「commune」というタイトルどおり、心を交わし愛情を育むことの素晴らしさが歌声からも伝わってくる、温もりに溢れた作品だった。

 YUKIは3rdアルバム『joy』(2005年2月23日)で大きな転機を迎える。今やJ-POPシーンにおいてダンス・振付を踊るMVは表現手法の一つとして根づきつつあるが、金髪ボブのYUKIが全身黒タイツの集団を従えてダンスを踊る「JOY」のMVは、当時の音楽シーンに大きなインパクトを与えた。さらに、打ち込みサウンドにマッチしたユニークな言葉選びとそこに込められた理想郷とも言える人生哲学が多くのリスナーに響く。以降の楽曲でもそのような作風は定着し、ポップでダンサブルなナンバーがYUKIらしさの象徴となっていった。

 4thアルバム『Wave』(2006年9月6日)までの2作を通して、ポップアイコンとしてのYUKIのアーティストイメージ、曲ごとにストーリーを描くような歌詞の世界観が確立。「Home Sweet Home」「ハローグッバイ」「長い夢」「メランコリニスタ」「ドラマチック」「ふがいないや」「歓びの種」といったシングル曲も軒並みヒットした。

 一方、ソロデビュー5周年を経て、3年半ぶりにリリースされた5thアルバム『うれしくって抱きあうよ』(2010年3月10日)は、「朝が来る」で始まり「夜が来る」で終わる、それまでとは一線を画したコンセプチュアルな作品に。AORの要素を取り入れたタイトル曲やノスタルジーな「汽車に乗って」をはじめ、いったんダンサブルなビートから距離を置き、メロディの美しさを際立たせる方向へとシフト。アートワークもナチュラルで温かみを感じられるものとなった。また、ストリングスを交えた演奏や、ビッグバンドによるジャズアレンジを施した「恋愛模様」など、生楽器のサウンドを生かした幅広い楽曲が収録された。

  以降のアルバム曲では、サウンド面の進化がさらに加速。6thアルバム『megaphonic』(2011年8月24日)からはダンスの要素が再び色濃くなる。同作には、『うれしくって抱きあうよ』の流れが投影された「2人のストーリー」や「ひみつ」、軽快に人とのつながりを歌った「Hello!」などのシングル曲に加え、エレクトロや80’sといったトレンドを意識した楽曲が多く収録された。

 7thアルバム『FLY』(2014年9月17日)ではさらに、インディーシーンで活躍していたgive me wallets作曲の「誰でもロンリー」や環ROYと鎮座DOPENESSによるKAKATOをフィーチャリングした「波乗り500マイル」など、新たな時代の才能とともにヒップホップやEDM的なアプローチにも挑戦。「坂道のメロディ」「STARMANN」のようなシングル曲では普遍性のあるポップス、アルバム曲ではミディアムテンポで体を揺らすダンスミュージック、双方がYUKIの音楽を支える要素となっていった。

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