MI8k『Cupid Power』インタビュー

ボカロP MI8kに聞く、独自の世界観の起源「インターネットは人と“作品”で繋がれる」

 ネットカルチャー・シーンで人気を誇るボーカロイド・プロデューサー、MI8k(ミヤケ)を知っているだろうか? オルタナティブかつ独自のロックワールドを創造する、ギターがアクセントとなる中毒性高いメロディックなサウンドプロダクションが魅力の新しい才能だ。

 タイトルを見るだけでも心がざわめく「ラブ&デストロイ」「嗤うマネキン」「不完全な処遇」など、これまでEve 、EVO+、ウォルピスカーター、いすぼくろをはじめとする人気歌い手への楽曲提供や、気鋭のシンガーソングライター湯木慧へのアレンジメント参加など、実力派アーティストとして活動してきた。そんな彼が、セルフカバーを含む全国流通アルバム『Cupid Power』をリリースする。ボカロシーンでの人気曲はもちろん、書き下ろし曲、さらに自身歌唱によるセルフカバーにも注目したい。(ふくりゅう:音楽コンシェルジュ)

Cupid Power XFD / MI8k feat. Vocaloids

古着屋のおじさんからロックを教わった

──和田たけあき(くらげP)さんとコミケで作品を一緒に出されていたり、2019年2月2日には高円寺Highのライブ『チュルリイタイムズ&デストロイ』でもご一緒されますがボカロ界隈って、横の繋がりって強いんですか?
 
MI8k:それぞれスタイルが違うのでチームみたいな感じではないと思うんですけど、活動の場が一緒だったりある程度ファン層が被ってたりする節はあると思うので共有できる暗黙知が溜まっていたり、あと好きな音楽で話が合う人もいるのでそんな話をよくしたりしますね。周りの人間はだいたいめっちゃ好きです。

——MI8kさんは、ミュージシャン活動においてギターの存在が大きそうですね。

MI8k:中学生の頃からずっとギターをやってみたくて触ったことはあったんですけど部活でバレーボールをやっていて、推薦で高校に行ったので毎日部活漬けで時間がまったくなくて。寮に入っていたので、自分のお金を使うこともなくて。でも、高2の秋に学校を辞めて、それからギターを買いました。ロックを好きになったのは、中学生の頃から通っていたバンドTとか充実している古着屋さんで。ロン毛でアメカジの山崎邦正似のおじさんにいろいろ教わりました。「ブルースとファンク以外はクソだから聴くな!」ってタイプで。英才教育を受けていました。「いい音楽はだいたい昔のもの!」っていう。

──強烈ですね。どの辺のアーティストを聴いていたんですか?

MI8k:けっこう古いものをたくさん聴いてました。とにかくJ-POP以外。20歳くらいからはJ-POPとかいろいろ聴くようになってきててその頃にバンド時代の先輩にボーカロイドを教わりました。

——ボカロとの出会いがターニングポイントとして大きそうですよね?

MI8k:そうですね。それまでの価値観だと受け入れなかったんですけど、セレンディピティを感じたというか、面白さを感じたんですね。

——MI8kさんのオリジナリティーとして大きいのはギターですよね?

MI8k:ギターソロを弾くのと、リズムを組み立てるのが好きです。

──米津玄師さんのブレイクや、MI8kさんの曲も歌われているEveさんのヒットなど、ネット発のミュージシャンのムーブメントが盛り上がってますが、どんな風に受け止められていますか?

MI8k:シーンがどうとかそういうのはよく知らないんですけど新木場スタジオコーストでちゃんいぶのワンマンを見た時とかは楽しそうにやりたいことだけやってるよなと思いました。そういう人が多いのはいいですよね。バンドやってたときよりそういうタイプの人と関わる機会は多いように感じます。

——80年代や90年代は、ライブハウスから叩き上げていく音楽コミュニティーでしたが、いまは完全に孵化させるインキュベーション機能が動画共有サイトに変わりましたよね。再生回数やコメントで磨かれていくというか。

MI8k:インターネットだと、僕の場合人と繋がるとき“作品”で繋がれるんですよ。それがバンド時代と違うところですかね。あくまで音楽ありきで。わけわかんない人と絡まなくて良くなったのがいいことだと思います。

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