稲垣吾郎、ソロ曲「SUZUNARI」は半生を表す集大成に? MVを観て感じたこと
「やっぱり吾郎ちゃんだよね」。稲垣の持つ独特な美学が垣間見えるたびに、そう感じるときがある。きっと、それは今でこそ多くの人が人生のテーマとして掲げる“自分らしく生きる”というものを、稲垣が早い段階から貫いてきたからではないだろうか。
主役クラスの人気を誇りながらもドラマのバイプレーヤーとして作品を彩ったのも、ワイン好きというキャラクターも今思い返せばかなり新鮮だった。稲垣の革命はいつだって、静かに、穏やかに進んでいくのだ。そして、この「SUZUNARI」という曲とMVこそ、稲垣の半生を表す集大成なのかもしれない。稲垣吾郎は“自分らしく生きる”を貫いて、ここまできたのだ、と。
世界の曖昧さを受け入れる余裕を持つために、自分の美学を守るということ。一見すると矛盾するようなこのスタンスが、私たちが“自分らしく生きる”難しさなのだろう。はっきりとした正解のない中で、手探り状態なのは誰もが同じこと。稲垣も、これまでの長いアイドル人生で築いてきたブランドを持って、また新たな挑戦を始めたばかり。
ヒステリックゴロチを地で行くようなベートーベンを演じる舞台『No.9 -不滅の旋律-』をさらに進化させたり、限りなくプライベートトークに近い新感覚ドラマ『東京BTH〜TOKYO BLOOD TYPE HOUSE〜』に挑んでみたり、映画『半世界』ではこれまでのイメージを覆すような山男にも扮している。さらに、官能的でスキャンダラスな手塚治虫の名作の実写化に挑む『ばるぼら』への出演も決定した。
自分自身を愛し、周囲を敏感に見つめていく。そうすれば、押し寄せる大きな波に身を任せながらも、美しく生きられるのだと、稲垣を見ていると感じられる。〈これからはもっと美しいストーリーがあるはずなんだ〉。そう信じながら、人生を楽しむこと。「SUZUNARI」は、スタイリッシュに生きたい、大人のための応援ソングにも聞こえてくる。
(文=佐藤結衣)