米津玄師「Flamingo」はなぜ頭から離れなくなる? 3つの音楽的ポイントから分析

米津玄師『Flamingo / TEENAGE RIOT』フラミンゴ盤(初回限定)

 さらに、ヘッドフォンで聴いてみると、カッティングギターのフレーズや、ハイハットのようなドラムの金物、米津自身による声ネタなどが、フレーズ単位で細かく切り刻まれ、めまぐるしく左右に割り振られているのがわかる。この曲には、派手なリード楽器はほぼ出てこない。しかし、複数の種類のギターフレーズをカットアップしつつ重ねたり、ちょっとした声ネタでうまくアクセントをつけることで、スカスカなようでいて実は濃密なサウンドを実現している。

 ほかにも、リズム隊が作りだすいかにも打ち込みといったぎくしゃくしたグルーヴを補うように、16分音符や32分音符といった細かい刻みをそこかしこに挿入しているのも重要だ。こうした“刻み”によってグルーヴを演出する手法は、トラップをはじめとした現在のヒップホップやR&Bで多用されているもの。この曲のモダンなファンキーさの根底をなしていると言っていい。

 ぱっと聴き地味だがダンサブルで、この上なくポップ。それに加え、どこに注目しても興味深いディテールが浮かび上がってくる。こうした楽曲を堂々とシングル曲として発表し、話題を一挙に集める米津玄師は、やはり2018年を代表するJ-POPのゲームチェンジャーと言うほかない。

■imdkm
ブロガー。1989年生まれ。山形の片隅で音楽について調べたり考えたりするのを趣味とする。
ブログ「ただの風邪。」

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