星野源にとって“弾き語り”という表現が持つ特別さ 歌うたいとしてのルーツから考える
また、弾き語りだからこそ映える星野の歌の表現力にも触れておきたい。これも前述著書にあったエピソードだが、そもそも星野がソロで歌い始めたのは、知り合いに「ライブで弾き語りをやらないか」と誘われたのがきっかけだった。とにかく声に自信がなかったため最初は渋々だったが、歌っていくにつれて大事なのは「歌う」ことで、声に自信がなくても歌心があればいいと思えるようになったそうだ。
星野の歌声にはまさに“心”が宿っているような温かさがあるが、その心の正体は、シンプルに「この歌を誰かに届けたい」という真摯な感情なのかもしれない。「日常」の弾き語りで〈夜を越えて 朝が生まれる/暗い部屋にも 光る何か/僕はそこでずっと歌っているさ/でかい声を上げて/へたな声を上げて〉と丁寧に歌い上げる星野の歌声を聴きながら、そんなことを思った。
■渡邉満理奈
1991年生まれ。rockin’on.comなどのWEB媒体を中心にコラム/レビュー/ライブレポートを執筆。趣味は読書でビートたけし好き。