フジロックで圧巻のライブ! アンダーソン・パーク、GREEN STAGEを熱狂のダンスフロアに

 台風の直撃が心配され、途中で大きく天候が崩れることもあったものの、無事にすべてのプログラムを終えた『FUJI ROCK FESTIVAL '18』。N.E.R.Dやケンドリック・ラマー、ポスト・マローンなど、例年以上にヒップホップ/R&Bアーティストが充実したラインナップとなりました。中でもアンコールまで披露したケンドリック・ラマーのライブは非常に高く評価されており、今年のベストアクトとの呼び声も高いです。

 筆者ももちろん、ケンドリック・ラマーのライブに大変感動したのですが、予想をはるかに超えるパフォーマンスに驚かされたという意味で、一番心に残ったのは、3日目のGREEN STAGEで行われたアンダーソン・パーク&ザ・フリー・ナショナルズのライブでした。

 アンダーソン・パークは、1986年カリフォルニア州オックスナードに生まれ、10代の頃にドラマーとして音楽活動を開始。一時は生活に困窮し、妻子とともにホームレスになることもありましたが、『The Hollywood Recordings』などの作品で知られる音楽プロデューサーグループ、Sa-Raのシャフィーク・フセインのアシスタントを務めたことからLAのヒップホップシーンと関わりを持つようになります。その後、ドクター・ドレーに才能を見出され、2000年代以降のヒップホップのサウンドを大きく変えた名盤『2001』以来16年ぶりとなるアルバム『Compton』(2015年)で、新人ながら客演として6曲に抜擢されるという快挙を成し遂げ、一躍シーンの注目を集めます。

 満を辞して2016年にリリースした2ndアルバム『Malibu』は大変な傑作で、ロバート・グラスパー、クリス・デイヴ、マッドリブ、ケイトラナダといった制作陣に加え、ザ・ゲームやタリブ・クウェリ、BJ・ザ・シカゴ・キッドなどの大物アーティストが多数参加しており、ドクター・ドレーも太鼓判を押すほどの仕上がりでした。歌とラップがシームレスに繋がるボーカリゼーションがとても心地良い作品で、楽曲の幅広さとそのアプローチの豊かさに、まだまだ底の知れない才能を感じたものです。

 「ケンドリック・ラマーの次に来るラッパー」とさえ謳われるアンダーソン・パークが、いったいどんなライブをするのか、早耳のオーディエンスたちとともに期待していたところ、1曲目は『Malibu』より「Come Down」を披露。Hi-Tekがプロデュースを務めた同曲は、ファンキーなベースラインを効かせたヒップホップ色の強い作品で、登場直後から全開でラップをする姿に意表を突かれました。しかし、前日のケンドリック・ラマーでオーディエンスのヒップホップ熱が冷めやまぬのか、渋い選曲ながら大いに盛り上がります。その後、BJ・ザ・シカゴ・キッドとのフィーチャリング曲「The Waters」などの“聞かせる楽曲”で雰囲気を作っていき、途中ではヒップホップリスナーなら誰もが知る、ドクター・ドレーの「The Next Episode」のトラックを用いるなど、心憎い演出を加えていきます。この日、はじめてアンダーソン・パークのパフォーマンスを観たオーディエンスがほとんどだったはずですが、その反応は非常に良く、早くもパーティー感溢れるムードに包まれていきます。

 そして、アンダーソン・パークが途中からおもむろにドラムセットに座ったかと思うと、ラップをしながら自らドラムを叩き始めました。ブレイクビーツ的な歌心のあるドラミングは驚くほど達者で、そもそもアンダーソン・パークがドラマーとしてキャリアを積んできたアーティストだったことに気付かされます。複雑なビートとラップの組み合わせは、思わず踊らずにはいられないほどグルーヴィーで、会場のそこかしこから驚嘆の声が聞こえてきました。ここまでドラムを叩きながら歌うヒップホップアーティストは、ちょっとほかには思いつかないほどです。さらに驚くことに、アンダーソン・パークが「太陽に手をかざせ!」と煽り、みんなが空を見上げた瞬間、太陽が燦々と輝き始めました。偶然にしては出来過ぎで、この辺りからGREEN STAGEが異様な興奮状態になっていきました。

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