サザン桑田佳祐、西城秀樹への想いを語り、ヤングマンを熱唱「共演できたことは、一生の宝物」
桑田佳祐がMCを務める『ニッポンハム ムーンライト・ミーティング 桑田佳祐のやさしい夜遊び』(JFN系列38局ネット)。5月19日の放送は「緊急企画!デビュー40周年まで40日カウントダウンスタート!新曲かけます!?サザンオールスターズ特集!リクエストも大募集!」と題し、新曲「闘う戦士(もの)たちへ愛を込めて」が初オンエアされたほか、5月16日に亡くなった桑田と同い年のスター・西城秀樹への思いが語られる、印象的な1時間となった。
番組冒頭、桑田は「我らサザンオールスターズは、勝手にデビュー40周年を迎えます。こんばんは、本田じゃない方のケイスケでございます」と挨拶。デビュー記念日6月25日、翌26日に急遽開催されることが決定した、NHKホールでの40周年キックオフライブに触れた。一方で、「大変残念なことで、5月16日、西城秀樹さんがご逝去されました。私と同い年で、兄貴の風格がある本当に素晴らしい方でした」と、最期までステージに立ち続けた西城を労わるように、穏やかに語った。
リスナーからも、西城がサプライズ出演し、「YOUNG MAN (Y.M.C.A.)」を披露した1995年の『スーパーライブ in 横浜 ホタル・カリフォルニア』(横浜みなとみらい21臨港パーク)、また桑田が「情熱の嵐」や「傷だらけのローラ」を歌唱した2008年と、2013年のAct Against AIDS LIVEの『ひとり紅白歌合戦』などに触れ、思い出話を語ってほしい、というメールが寄せられた。「ホタル・カリフォルニア」については、桑田自身がオファーをしたが、ライブの規模やテイストを伝える前に、快諾されたという。桑田は「本当に実直で、誰に対してもフランク。同い年だけど、兄貴みたいでね。ライブの楽屋で1時間くらい、初めてじっくりお話をさせていただいたんだけど、打ち解けられるように気配りして話してくださって。大好きで、またいつかご一緒したかった。日本の音楽界を大きく作り変えた方だと思う。本当にありがとうございました」と、感謝の思いを語った。
サザン特集の放送ということで、リスナーから多数の声が寄せられた。桑田は「本当にファンの皆さんと、迷惑をかけたスタッフのおかげ。思い出すと、楽しいことってないね。辛いこととか、嫌なことばかり記憶として蘇るし、それがバンドの肥やしになっているような気がしますけども。お客さんとやりとりする、ライブが一番楽しいかな」と振り返った。
「40年というと、人生の半分。ここまでくると、メンバーもファンも、家族同然ではないですか?」というメールには、本当の“家族”である原由子について語る一幕も。「ミュージシャンとしてすごい。原さんの思う通りに仕事が進めば、絶対にサザンはうまくいく」と、アーティストとしての信頼を語っていた。原の歌唱による名曲「鎌倉物語」(1985年)もオンエアされ、後述する新曲でもイランやトルコで一般的な撥弦楽器「サズ」の音色をうまく使うなど、音作りやアレンジの面でもその才能をいかんなく発揮したことが明かされている。
そして、ファン待望の新曲の初オンエアだ。「闘う戦士(もの)たちへ愛を込めて」は、池井戸潤原作の初映画化作品『空飛ぶタイヤ』(6月15日公開/松竹)の主題歌として書き下ろされたもので、映画から「かなり影響を受けた」(桑田)という。桑田はまず、歌詞を朗読。<悲しい噂 風の中 悪魔が俺に囁いた この世はすべて裏表 嘘と真実(まこと)の化かし合い>というフレーズから始まる、もがき、闘うすべての“戦士”たちへの賛歌だ。リスナーからは、「矛盾らだけの社会にしがみついて生きていかなければいけない危うさが、ひしひしと伝わってきました」「歌詞やメロディから、僕たち“おっさん”の応援歌、正義の味方の歌だと感じました。この曲を頭に叩き込んで、明日からも頑張ります」「桑田さんの語りかけるような歌声が、舞台芸術のセリフのように、観客である私たちの胸に響いてきます」と、さっそく数多くの感想が寄せられていた。社会の矛盾やしがらみを嘲笑するかのように、生々しく響く桑田の歌唱が、早くもファンの心に届いているようだ。
番組も終盤、生歌のコーナーで披露されたのは、西城秀樹の代表曲のひとつ、「YOUNG MAN (Y.M.C.A.)」(1979年)だ。桑田らしく楽しさが強調された歌唱だったのは、大病と闘いながらもステージに立ち続けた、西城秀樹という稀代のスターへのリスペクトからだろう。「闘う戦士(もの)たちへ愛を込めて」でも描かれているように、明るいことばかりではない世の中だが、<ゆううつなど 吹き飛ばして 君も元気出せよ>と笑う、西城の姿が想起された。
桑田とファンが互いに感謝の言葉を贈り合い、新曲のリリース&40周年キックオフライブにも期待が高まった1時間。一方で、「いろんな人の支えがなければ、サザンは2年目で終わっていたかもしれない」と40周年の紆余曲折も語られ、悲しいニュースにも正面から向き合う内容の濃さだった。しかし、日付が変わる頃にリスナーが軽やかな気分になれたのは、桑田が「共演できたことは、一生の宝物」と語った、西城の輝かしいイメージによるところが大きかったように思われる。悲しい別れも身体の一部になり、作品に息づいていくのだろう。
(文=橋川良寛)
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『ニッポンハム ムーンライト・ミーティング 桑田佳祐のやさしい夜遊び』