SCANDALがライブで体現する、“ガールズバンド”という価値観

 SCANDALの約2年ぶりとなるニューアルバム『HONEY』は、彼女たちが今“出したい音”と、リスナーが求める今“聴きたい音”が見事なまでに合致した快作だ。

 彼女たちの武器であるソリッドでキレの良いビートと、タイトル通りの女性らしい“甘さ”を充分に堪能できる曲たち。アッパーなナンバーにおける、一切の無駄を廃したかに思えるストイックなサウンドは、いつになくざらついていてパンキッシュ。それでいて女性らしいしなやかでキュートなポップ性も介在している。どこか漂よう大人の色香は、AMIAYAがプロデュースしたビジュアルワークが物語るように、男性側が考えるコケティッシュさとは異なる、女性ならでは感性と遊び心が盛り込まれたアンニュイなセクシーさ。メンバーが胸を張って公言する「ガールズバンドらしさ」はアルバムの至るところから感じとることができる。

 そんな自信に満ち溢れた『HONEY』のリリース当日である2月14日、Zepp DiverCity TOKYOにて開催したフリーライブは、至高のガールズバンド・SCANDALの現在を知らしめた夜だった。

「『HONEY』を、予約してくれて、応募してくれて、からの、抽選で当たった人たちが来てくれてるわけでしょ?」(HARUNA)

 フロアを埋め尽くした“選ばれしみんな”の大歓声を身体中で浴びるように登場したメンバーは、最新鋭のキラーチューン「恋するユニバース」で、2018年1発目のライブをスタートさせた。捲したてるように攻めるRINA(Dr/Vo)の凛としたドラミングと、空間をまさぐるようにラフにピッキングする飄々としたTOMOMI(Ba/Vo)の対照的なリズム隊のコントラスト。そこにMAMI(Gt/Vo)の粘りのあるギターが絡みついていく。そして楽器隊の隙間を縫う、語感とイントネーションを操りながらのHARUNA(Vo/Gt)のボーカル。ステージ上の誰のどこを見れば良いのかわからなくなるほど、それぞれ自由気ままに音を楽しんでいるかのような4人が、HARUNAの〈キスして〉の声を合図に一気にひとつになるサビ入りにゾクゾクする。つづく、祭囃子のダンサブルナンバー「テイクミーアウト」では、メリハリを効かせた活気あるリズムに合わせ、フロント3人が各々ステップを踏むが、拍子に関係なく難解で奇妙な足取りを見せながらも複雑なフレーズを奏でるTOMOMIに天性のグルーヴを見た。

 ちょうどこの数日前、彼女たちがゲスト出演していたラジオ番組にて、パーソナリティがSCANDALの魅力を「滑舌の良い演奏」と評していた。なんとも言い得て妙、しっくりくる。彼女たちの奏でる音には「歯切れの良い」「小気味良い」という言葉では収まりきらない心地よさがあるのだ。

 そんなことを思いながら聴いていたのはアルバムのリード曲でもある「プラットホームシンドローム」である。きて欲しいところにバシバシくる、エッジを効かせたサウンドにもかかわらず耳馴染み良く爽快な気分になる、まさに「滑舌の良さ」が炸裂するアッパーチューン。初期のマイナーメロディのロックを踏襲しながらも、新たな息吹をも感じる、メジャーデビュー10周年を迎える彼女たちだからこそ生まれた楽曲だろう。

 そして、アルバムからの新曲はもうひとつ。「これからのライブで大事な曲になる」とのHARUNAの紹介でライブ初披露された「OVER」。この日のRINAが語った「メジャーで10年やってきても、こんなに衝動的なアルバムを作ることができた」という言葉を表すような、彼女たちの真っ直ぐさがビンビン伝わってくる、エモーショナルでストレートなロックナンバーだ。そこにあるものは、ロックやバンドに対する初期衝動に他ならない。セットリストに組み込まれていた「瞬間センチメンタル」や「会わないつもりの、元気でね」はSCANDALの音楽性を象徴するような、日本人らしいキャッチーさが散りばめられたエネルギッシュなロックだ。そうした代表曲に挟まれ演奏された新曲は、きちんとこれまでの延長線上にあった。それは、ここまで様々な楽曲提供を受けて来た彼女たちからの返答のようであり、SCANDALの現在地が見えた気がした。デビュー当初、大人たちに囲まれながらコンセプチュアルな要素も強かったバンドが、10年の活動を経て自らの力で導きだした答えほど、無敵なものはないだろう。

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