小室哲哉、引退発表によせて 昨今のTKソング再評価、音楽シーンに与えた影響を振り返る
小室哲哉が音楽シーンへ与えた影響
小室哲哉が音楽シーンへ与えた影響は大きい。TM NETWORK時代にアニメソングのあり方を変えた「Get Wild」、「BEYOND THE TIME(メビウスの宇宙を越えて)」のヒット。ユースカルチャーを変えた映画『ぼくらの七日間戦争』主題歌「SEVEN DAYS WAR」とサウンドトラック。バンドではなく個の連帯であるユニットスタイルでの活動。TMファミリーとも言える、バンドのサポートメンバーから派生した、B’z ~ FENCE OF DEFENSE ~ accessを生み出したフックアップ構造。YOSHIKIと結成したプレミアムユニットV2の意義。作詞作曲編曲を一貫して手がけるトラックメーカーとしての活動スタイル。プロモーションやビジュアルまで手がける音楽プロデューサー手法。楽曲制作においても近年話題のマックス・マーティンの“トラックアンドフック”に先駆け、シンクラビアなどハードディスク・レコーディングにいち早く取り組み、楽曲パーツを組み替え複数作家による分業制作を取り入れた共同制作。テクノポップ、ユーロビート、ハウス、レイヴ、ジャングル、R&B、ヒップホップ、トランス、EDMなど、海外で流行するダンスミュージックを日本のポップシーンへ独自のセンスで翻訳したオリジナリティ高いヒット曲。アイドルをアーティスト化するプロデュース方法。EOSシリーズ(YAMAHA)という売れに売れまくった伝説的シンセサイザーのプロデュース、その影響から誕生した数々のキーボード奏者&次世代トラックメーカーたち。さらにホームページ運営、フリーダウンロード施策など、インターネットの活用の先駆者でもある。何より、今もなお歌い継がれる数々の名曲たち、などなど枚挙にいとまがない。(過去記事『TM NETWORKによる新たな発明 “シアトリカル”なコンサート演出とは?』に詳しい)
いま小室さんに伝えたいのは「ゆっくり休んでください」そして「またいつでも戻ってきてください」、「素晴らしい作品の数々をありがとうございます」という感謝の言葉に他ならない。
小室さんは、記者会見の質疑応答終盤でこうも語っていた。「『なんでもいいから、生き恥でもいいから音楽作れよ』っていう意見が何割あるのか。ファンという不特定多数の存在より、この時代全部如実に出てきますからその数字に従いたいかなと漠然と思っています」。声を待っているのだと思う。宮崎駿だって何度も引退発言をして撤回をしている。クリエイターとはそういうものだ。自らの言葉に縛られることも呪われる必要はないのだ。ゆっくりと自分のペースで音楽と向き合ってほしいと願う。
小室哲哉の音楽を僕は求めている。才能の枯渇? いや、そんなことは言わせない。TKヒッツ再来というべきポップアンセムも実は誕生しているのだから。愛弟子である浅倉大介とともに生み出したPANDORAによる「Be The One」(feat. Beverly)は、すでに浸透しているキッズだけでなく、90年代全盛期で小室哲哉の印象が止まっているリスナーにこそ聴いてほしい作品だ。そして、現在制作途中で今後発表されるであろうビッグプロジェクトの数々。まだまだ小室さんは終わらない。2018年は始まったばかり。引き続き注目していきたい。
Spotifyプレイリスト『TK Works -小室哲哉ワークス-』
■ふくりゅう(音楽コンシェルジュ)
Yahoo!ニュース、J-WAVE、ミュージックマガジン、Spotify、KKBOX、音楽主義などで書いたり喋ったり選曲したり考えたり。会員制サイト『BOØWY HUNT』で、関係者によるBOØWY伝説を裏付けるドキュメンタリー「BOØWY STORY ARCHIVE」を連載中。Spotifyで公式プレイリスト『キラキラポップ:ジャパン』を毎週火曜日更新で選曲中。
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