SHE’S 井上竜馬×片寄明人が目指した、“理想”の音楽「独自な違和感こそポップでありフック」

SHE’Sが目指した理想の音楽

 2017年は1月に1stフルアルバム『プルーストと花束』、6月にはミニアルバム『Awakening』、そしてそこから半年というおそるべきスピード感で2ndフルアルバム『Wandering』をリリースするSHE’S。ピアノロックとグッドメロディという最大の武器を生かしながら、さらに洋楽からの影響を作品で発揮させるべく、今作ではバンド初の外部プロデューサーとして片寄明人を迎えた。片寄は自身のGREAT3としての活動はもちろん、プロデューサーとしてはフジファブリックのデビュー作や、近年ではDAOKO、The Wisely Brothersなど幅広いバンド、アーティストを手がけている。そこで今回リアルサウンドでは、フロントマンでソングライターの井上竜馬(Vo/Key/Gt)と片寄の対談を企画。新作の制作をテーマに、片寄から見たSHE’S及び井上竜馬の魅力などについても訊いた。(石角友香)

井上竜馬(SHE'S)

SHE’Sに新しい感覚を与えてくれそうだなと感じた

ーー今回の2ndアルバムに向けて考えていた、一番大きな構想から聞かせてください。

井上竜馬(以下、井上):単純に僕の中で取り入れたい音楽の要素が、『プルーストと花束』以降、増えていって。さらに『Awakening』を出して、もっともっとやりたいことがあるから、それをフルアルバムというバラエティがある程度作れる形態でやっていきたいなって気持ちがありました。そういう思いをメンバーにも共有して制作しましたね。

ーー色々やりたいことというのはどういうベクトルの?

井上:今年の頭は、聴く音楽が自分の中で増えていた時期で。特にUKの音楽が増え出して、そういう流れもあってイギリスにも行きました。その要素を楽曲のどこかに入れられへんかな? とか、普段聴いてる音楽をどうSHE’Sのピアノが入ったサウンドで作れるか? っていうのはずっと考えてはいましたね。

ーー今のイギリスの音楽についてはどう感じてますか?

井上:いわゆるエレクトロ、電子サウンドがメインになっている今のポップスを取り入れながらも、やっぱりイギリス独特のヌルッと感というか、陰のある感じがメロディに残ってますよね。その独自性のある感覚が僕は結構好きやったから、それをSHE’Sが今までやってきた、「ピアノ×ロックサウンド」っていうフォーマットの中でできないかなと常に考えていました。

ーー井上さんの中ではどういうバンドやアーティストの音楽が、自分の中で今年広がったものに入りますか?

井上:今年の新譜でいうと、エド・シーランですね。彼の音楽性は1枚目からどんどん変わっていて、アコースティックっていう芯がありながら、現代のポップスを消化している人やと思う。新作(『÷』)は旅をして、いろんな国を見てその感覚を音にしてるのが如実に出てるアルバムやなって思いました。その感覚に憧れたというか、いいなと思いましたね。

ーーそして今回初めてプロデューサーを迎えたわけですが、どんな理由で?

井上:『プルーストと花束』の後にディレクターが代わって、「プロデューサーを入れることに対してどう思う?」という話が制作スタッフからあったんです。僕らの中でプロデューサーとは絶対やりたくないというこだわりはなかったし、ハイペースでリリースしてるから、そろそろバンドアレンジ力的にも新しい風が入ると嬉しいという思いも強くあったので、このタイミングでお願いすることになりました。

ーーその中から片寄さんと制作することになった経緯は?

井上:僕らはプロデューサーの方について詳しくなかったので、いただいた候補の方の資料を見ながら決めました。GREAT3のことは知っていたし、それが一番大きいかもしれないです。それに片寄さんは、プロデュースされたミュージシャンの幅も広くて、僕らのやりたいこと、“洋楽的なサウンド”という部分を理解してくれそうだし、SHE’Sに一番新しい感覚を与えてくれそうだなと感じたんですよね。

ーー片寄さんがSHE’Sの音楽を聴いた際の第一印象はどんなものでしたか。

片寄明人(以下、片寄):最初に彼らの曲を聴いた時、J-POPの王道を感じたんですね。でも、メンバーと話をしてみると、井上くんは非常に洋楽志向も強いし、メンバーそれぞれ趣味はバラバラなんだけど、共通して洋楽ライクなところも感じて。ライブを見に行った時に割と女性ファンが多いなとも思ったけど、これは男性も好きになれる音楽だなと思ったし、洋楽を聴いている人にもきっと好きになってもらえるんじゃないかと。なので、SHE’Sの音楽を喜んで聴いてくれそうなリスナーと彼らを結びつけるのが僕の役目かなということは若干予感しながら、一緒にスタジオに入りました。

ーーなるほど。片寄さんが感じたJ-POP感とはどういう部分ですか?

片寄:オーセンティックな楽曲構成とアレンジの部分かな。あとは、ギターの(服部)栞汰の、リアルタイムでは自分が避けていた音楽で鳴っていたようなギターフレーズ(笑)。80’s、90’s J-POPのどメジャーを感じる音、例えばTUBEであったり、B’zでもいいんですけど、自分はメジャーなサウンドのアンチテーゼとして音楽をやってきていたので、それが30年以上経っていきなり思わぬ形で目の前に現れたというか(笑)。でも井上くんが書く曲と栞汰の弾くギターのマッチングがめちゃめちゃ今の自分にとっては新鮮で。その組み合わせから思わぬカタルシスが生まれて、聴いているうちに「うおー」って手を挙げたくなるような衝動があったんですよね。僕はそういう独自な違和感こそポップでありフックだと思ってるから、それが見えた瞬間に今回のアルバムはきっといいものになるんじゃないかと感じたんです。

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