太田省一『ジャニーズとテレビ史』第三十六回:ジャニーズ出演秋ドラマ

嵐 櫻井翔、KAT-TUN 上田竜也、NEWS 小山慶一郎出演ドラマの“もうひとつの楽しみ方”

 次に取り上げる嵐の櫻井翔主演『先に生まれただけの僕』(日本テレビ系)は、少し変わったタイプの学園ドラマだ。

 同じ日本テレビがかつて得意にしていたタイプの学園ドラマでは、熱血タイプの新任先生やちょっと不良っぽい生徒が主役なのが相場だった。だが櫻井扮する鳴海涼介は校長先生、しかも私立高校の経営立て直しのために送り込まれてきた商社マンだ。当然、ビジネス・採算重視の鳴海と教育者である教師たちは対立する。これまでの学園ドラマなら、このような場合主人公は教師側のはず。その意味で、斬新な設定である。

 それは、理想と現実のギャップということでもある。その点、初回の奨学金をめぐる話は象徴的だった。家庭の経済的事情で大学進学を断念しようか悩んでいるひとりの男子生徒がいる。そんな彼に対し、周囲の人々は奨学金で進学することを勧める。だが鳴海は、大学で奨学金をもらっていた経験者として卒業後の返済の厳しさを知っておいてもらおうと現実の大変さを伝える。ところが生徒は、「そんな怖い話聞きたくなかった」とその場から逃げ出してしまう。

 このような場面を見ても、今回の櫻井翔の役柄には『NEWS ZERO』(日本テレビ系)でキャスターとして社会問題を解説し、伝える彼の姿がオーバーラップする。

 担当コーナーである「イチメン!」の「ニュースの“そもそも”を伝える」というコンセプトは、まさに奨学金の“そもそも”を伝えるドラマのなかのセリフとリンクしている。もちろん奨学金の話はドラマのセリフとして櫻井翔は語っているわけだが、私たちが普段目にしているキャスターとしての彼の姿がより説得力を持たせているのではなかろうか。

 さらに穿った見方をすれば、今回の学園ドラマとしての新機軸自体が、アイドルでもありキャスターでもあるという櫻井翔のふり幅の大きさがあったからこそ実現したものでもあるように思える。「学校の理想」と「学校の現実」、その両者をつなぐ役柄に彼はうってつけと言っていい。

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