Czecho No Republic、SKY-HIとのコライトで示した可能性 “原点”と“未来”を歌った最新作に迫る

 異なるフィールドで活躍する2アーティストのコライト・シングルとして話題を呼び、発表からすでに2カ月が経過した今、ついにフィジカルCDが世に送り出されるーーCzecho No Republic × SKY-HIの『タイムトラベリング』だ。

Czecho No Republic x SKY-HI「タイムトラベリング」MV(short ver.)

 ざっくりこのプロジェクトのタイムラインを振り返ると、Czecho No Republic(以下、チェコ)は今年7月2日にこれまで東京のみで開催してきた主催ライブ『ドリームシャワー2017』を大阪城音楽堂で行った。本公演は大阪では初の野外ワンマンとなり、ソールドアウト。そのライブでビッグプロジェクトが進行中であることを発表した。7月24日にはフロントマンの武井優心(Vo/Ba)がブログで、「たくさん曲を作ってアルバムをリリースするのは一旦ストップして、今あるたくさんの曲を育てつつ、そこにいつもとは違う角度の刺激や発見を見出したかった。バンド史上、体験したことのない大きな挑戦になるけれど、きっと新しい出会いがあるし、世界が広がるだろうと思いました」(参考:Czecho No Republic公式ブログ)と、コライトのモチベーションを綴っており、翌日の25日にはレコーディングをスタート。当日、チェコ、SKY-HI各々がLINE LIVE上で今回のコラボレーションを発表、各々のファン、そしてポップミュージック・シーンをざわつかせる動きを見せてきた。

 そして8月5日、『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2017』に出演したチェコのライブにSKY-HIが参加し初披露され、9月1日にはMV(ショートVer.)も公開。翌日、9月2日からテレビ東京系『ゴッドタン』の9、10月度エンディングテーマとしてオンエアされ、より多くのリスナーの耳目を集めてきた。

 さて、この「タイムトラベリング」をCzecho No Republicの新曲として聴いた時、キモになる要素を見ていこう。まず、ギター、ベース、ドラムと最低限のシンセだけが鳴るシンプルなアンサンブル、速めのBPMで疾走感のある8ビートであること、加えて思わずシンガロングしたくなる<タイムトラベリング~>のリフレインと、サビメロの伸びやかさが挙げられる。これらの要素から考えると、「タイムトラベリング」はCzecho No Republicらしい楽曲と言えるだろう。だからこそ性急なイントロのギターリフにSKY-HIの第一声<Yeah>が聴こえた時の驚きも際立つ。そして最初のヴァースがSKY-HIの8ビートに乗るラップというのも攻めている。

 シンセポップやエレクトロなど、海外の先鋭的なバンドとシンクロするサウンドをアルバム『Santa Fe』(2015年)で表現し、先鋭性も残しながら純粋に音楽の楽しさや様々な“夏”をテーマに制作した『DREAMS』(2016年)をリリース。そんなチェコ、というかソングライターの武井が、次の一手としてSKY-HIとのコライトに、どちらかといえばバンド初期のロックンロール・リバイバルやポップなパンク・テイストの楽曲を書いたことは、改めてCzecho No Republicの原点を2017年の今、効果的な手法で表明してきたと受け止めるのが順当だろう。

 そしてSKY-HIの最新オリジナルアルバム『OLIVE』は、ヒップホップやR&Bをベースにした楽曲でありつつ、聴いたあとに残る印象はジャンル的なものより、芯のあるポジティブなメッセージだ。互いに明確なルーツを持ちつつ、狭義のジャンルに収斂されない音楽性を持っている。だからこそ「タイムトラベリング」は、異種格闘技的なものではなく、お互いの音楽性が共鳴するような楽曲に仕上がったのだろう。過ぎ去った青春の煌めきをなくしてしまいそうな今の自分が、過去を美化することなく全て糧にして前を向こうとするーーそんな歌詞の世界観をリアリティのあるものにしているのは、裏打ちでリズムチェンジするSKY-HIの終盤のヴァース<忘れがちな幸せ 濃くなる不幸せ~>から、再び8ビートで加速する<どんな遠かろうが脳内消えない足跡~>の畳み掛け。背中を押すどころか、前向きにケツを叩かれる動的なモチベーションが生まれるのを実感できる部分だ。このコライト最大の聴かせどころでもある。

関連記事