KICK THE CAN CREWのアイデンティティとは? 『復活祭』で示された縦と横のつながり

KICK THE CAN CREW『復活祭』レポート

 KICK THE CAN CREWのステージは「千%」でスタート。〈経て からの ここ〉と歌った後に「武道館!」と3人で声を合わせ、メジャーデビュー曲「スーパーオリジナル」へと続ける。この日は冒頭の「全員集合」以降も司会のいとうせいこうと共に転換時に何度も登場していたが、やはり祭りの主役が登場するとオーディエンスの盛り上がりも最高潮に達する。

 「自分たち主催の誕生日会みたいなイメージなんだけど、ここで見せるべきは『あいつらやるぜ!』ってところだと思う」とKREVA。続いての「SummerSpot」では3人が細かくフレーズを分け合う難易度の高いラップを披露。「できた!」と帰ろうとするKREVAとMCUをLITTLEが「まだ何も終わっちゃいないぜ!」と呼び止めて「イツナロウバ」へ。このあたりの流れは〈ベタ上等 ってか ベタ万歳〉(「SummerSpot」)というリリックそのままのやり取りだ。

 中盤は「イツナロウバ」「Sayonara Sayonara」「アンバランス」とセンチメンタルな楽曲を続け、後半はライムスターを呼び込んでの「神輿ロッカーズ」「地球ブルース〜337〜」「マルシェ」とアッパーな曲を立て続けに披露しての本編終演。アンコールは「I Hope You Miss Me a Little」で余韻の残るエンディングとなった。

 というわけで、『復活祭』は、ド派手で賑やかで、しかしきっちりと、彼らがシーンのどんな場所に戻ってきたのかを伝える意図を見せる構成になっていた。KREVA、MCU、LITTLEの3人はもう40代で、それでもじゃれつく3人の姿こそがグループの独特の空気感になっていた。

 そして何より印象的だったのは、やっぱり新作からの楽曲だった。そこが格好いいおかげで、KICK THE CAN CREWの過去の楽曲が、ちゃんと「懐かしい」ものになっていた。ノスタルジーを共有するというよりも、現在進行形の彼らの刺激を見せるものになっていたのだ。12月からは新作を携えた久々のツアーが始まる。ニューアルバムの楽曲をじっくりと披露するのはそちらになるのだろう。

 最高の復活劇だった。




(文=柴 那典/写真=岸田哲平、中河原理英)

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「ライブ評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる