『花の影 / 泥沼 Break Down』インタビュー
Lily’s Blowが考える“音楽の力”とは? 「何かを変えるというよりは、寄り添って溶かしてあげたい」
「気持ちに歯止めが効かなくなることって、誰しもあると思う」
――では、2ndシングル『花の影/泥沼Break Down』についてお聞きします。表題曲は、「信長の忍び」の第二期の主題歌なんですよね。
NANA:はい。私、アニメ版『信長の忍び』が好きでずっと観ていたから、書き下ろしのオファーを頂いたときはとても嬉しかったです。『信長の忍び』は、歴史上の人物がとても可愛く描かれているんですよ。教科書に載っている怖いイメージの織田信長も、アニメの中では甘党だったり奥さんや妹さんにもデレデレだったり(笑)。他の登場人物も天然キャラばかりでギャグ要素が強いんですね。ただ、そんな中にもジーンと浸みるところもあって。主人公の千鳥ちゃんは戦災孤児の忍者で、乱世を終わらせるために天下を取ろうとしている信長を陰で支えている。そのひたむきな姿にとても惹かれるんですよね。なので、「こんなイメージの曲にしたい」というアイデアもすぐに浮かびました。
――それはどんなイメージだったのですか?
NANA:月夜を千鳥ちゃんがサササーッ! と走っているイメージです。和風なテイストも入れたくて、琴や縦笛を重ねてみました。こういう、和楽器とロックを融合させた楽曲を歌うのは初めての挑戦だったので、どこまでロックっぽさを出せばいいのか、物悲しさと同時に意思の強さ、信念を感じさせるには、どんな風に歌ったらいいのか、そして、それぞれの感情のバランスをどう表現したらいいのかを考えましたね。
――歌詞で気に入っている部分は?
NANA:やっぱりサビの部分です。「乱世を終わらせるために天下を取る」という織田信長の理想は、夜に浮かぶ幻のように儚いものだと思いつつ、それでも邁進していく姿をサビでは表現したくて。それで、信長を花に喩え、千鳥ちゃんがその影というふうに描いてみました。花と影が「寄り添って一つ」という意味ですね。あと、<優しさだけじゃ 変わりにくい時代>というフレーズも好きです。戦国時代だけじゃなくて、現代社会もそうだと思うんですよ。何かを変えるためには“強さ”も必要だし、ときには人を傷つけたり、負かしたりしてしまうこともあると思う。それすらも背負って進んでこそ、初めて何かを変えられる……。そんな意味が歌詞の中に込められたので、とっても気に入っています。
――NANAさんは、音楽の力で何を変えたいと思いますか?
NANA:そうですね……。人って、病みやすい生き物だと私は思うんですよ。抱えているものをうまく吐き出せなかったり、吐き出しにくかったりするし。それで心が壊れてしまったりすることもあるのかなと。なので、自分が作り出す表現や楽曲の世界観が、聞いてくれた人の何かを吐き出すことや、しこりのようなものを溶かすことが出来たらいいなって思います。何かを変えるというよりは、“寄り添って溶かして”あげたい。
――なるほど。“病み”といえば、歌詞の中の<疑っていたらキリがない 考えすぎは道を誤る>というフレーズも、病みやすい人間の側面を描いていると思いました。
NANA:そうですよね。私自身、すごく疑い深かったりするんです。そこら中に甘い誘惑が落ちていて、それを全部拾っていたら痛い目を見る。裏切る人もいるし。そんな中で生きていたら、どんなことでもまず疑ってかかってしまうのは当然のことだと思うんです。探り探り入っていくというか。ただひたすら信用するとか、自分の身を委ねるとか、そういうことってすごく難しいけど、だからこそすごく大切なことなんだなとも、一方では思っていて。この歌詞には、そういうもどかしい気持ちが込められているんです。歌う時にも苦労しましたね(笑)。
――今までの話を聞いていて思ったのは、NANAさんは常に色んな悩みや葛藤を抱えていて、だからこそ普段は努めて明るく振舞っているのかな、と。
NANA:どうなんでしょうね(笑)。自分じゃよくわからないけど、結構考えちゃうところは確かにあるんですよね。ただ、今のLily's Blowチームや、自分の周りにいる人たちのことは無条件に信じられるので、それはありがたいなと思います。
――カップリング曲「泥沼 Break Down」は、なかなかキワドイ内容ですよね。
NANA:そうなんです(笑)。最近は結構、映画などでも不倫や浮気をテーマに取り上げられることが多いじゃないですか。そういう恋愛を全て頭ごなしに否定するつもりはないし、色々な価値観があると思っているんですけど、「もし自分が遊ばれていたら……?」っていう風に想像してみた時に、どういう反応をするだろうなと。好きになりかけている男の人がいるのだけど、どうやらその人には他の女の影が……みたいな。私だったら絶対に怒るだろうなと。
――それこそキックボクシングで制裁されそうですね(笑)。
NANA:あははは。きっと男性だけじゃなくて、女性でもいると思うんですよ。男性を弄ぶ小悪魔系女子とか。ただ私は女性なので、女目線で、ちょっと調子に乗っちゃってる男子に対し、一発ガツンとかましてやるような歌詞になりました(笑)。とはいえ人を好きになっちゃうのって、どうしようもないじゃないですか。気持ちに歯止めが効かなくなることって、誰しもあると思うんです。もちろん、傷つく人が多いのはよくないから、不倫や浮気は絶対にバレないようにやってほしいですよね。
――(笑)。確かにその通りですね。でも、「NAI NAI NAI」の時もそうでしたが、ここに登場する男性のことを、「心底許せない」とは思っていないというか、ちょっと優しい目線が注がれているのがNANAさんらしいなと思いました。
NANA:ああ、確かに。でも、優しいのかな私。「NAI NAI NAI」は歌が終わった後の展開で、お互いが付き合うっていうのも可能性として「あり」だと思うんですよ。でも、やっぱり「泥沼 Break Down」の恋愛は上手くいかないだろうなって思います。たとえ心の底では本気になりそうでも、やっぱり傷つくのは自分だし、それを恐れて強がっている部分もあるのかなって思います。「本当は好きだけどね、でも絶対に言わない」みたいな。
――なるほど、NANAさんらしい(笑)。いずれにせよ、NANAさんが妄想で作ったいわゆる“フィクション”の歌詞でも、そこにはNANAさんの心情がリアルに反映されているなと。
NANA:そうですね。「花の影」もそうですけど、自分の中の恋愛観というのは反映されていると思います。千鳥ちゃんみたいに、相手にのめりこんじゃったりすることもあるし(笑)。
――今後の展開について、考えていることはありますか?
NANA:バンドのみんなと、もっと大きい舞台で演奏できたらなと思っています。お客さんも一緒に連れて行くぞ! という気持ちで挑みたいですね。それから10月に恵比寿LIQUIDROOMで、<Honey Bee Records>のアーティストたちで主催した『MITSUBACHI FES』が、5周年のアニバーサリー企画で開催されるんです。こんなに大人数で開催するのは初めてなので、これもまた挑戦ですね。新曲も2018年に向け、いろいろ準備し始めていますし、引き続き頑張ります!
(取材・文=黒田隆憲/撮影=三橋優美子)
■リリース情報
『花の影 / 泥沼 Break Down』
発売日:2017年9月20日(水)
※2017年8月16日(水)「花の影」デジタル先行配信スタート
価格:TVアニメ『信長の忍び』盤(CD+DVD)¥1,389+税
通常盤(CD)¥926+税
〈収録内容〉
【TVアニメ『信長の忍び』盤】※アニメイラスト描き下ろしジャケット
CD:
1. 花の影
2. 泥沼 Break Down
3. 花の影 〜Instrumental〜
4. 泥沼 Break Down 〜Instrumental〜
DVD:
『信長の忍び』ノンテロップムービー
「花の影」Anime Ver. MUSIC VIDEO
『信長の忍び』ラジオ〜私、リスナー様の忍びになります!!〜スピンオフ特別篇(水瀬いのり×NANA)
【通常盤】
CD:
1. 泥沼 Break Down
2. 花の影
3. 泥沼 Break Down 〜Instrumental〜
4. 花の影 〜Instrumental〜
■タイアップ情報
「花の影」 TVアニメ『信長の忍び〜伊勢・金ヶ崎篇〜』(TOKYO MXほか)主題歌
「泥沼 Break Down」『真夜中のみつばち少女』(TOKYO MX)オープニングテーマ
■ライブ情報
『泥沼レコ発ワンマンライヴ』
2017年9月20日(水)
開場:19時 開演19時30分
会場:新宿MARZ
チケット:前売¥2,500 当日¥3,000(ドリンク代別途)
9月2日(土)『Bitter & Sweet BAND TOUR 2017〜はじまりの夏〜』ゲスト出演@CLUB RIVERST (新潟)
9月3日(日)『Lily's Blow×Bitter & Sweetツーマンライブin NAGOYA』@名古屋Heart Land
10月21日(土)『MITSUBACHI FES 2017 〜5th Anniversary〜』@恵比寿LIQUIDROOM
※詳しくはオフィシャルサイトへ
■関連リンク
Lily’s BlowオフィシャルWEBサイト