2017年版『世界で最も稼いだDJ』と『ULTRA』から考える、EDMという言葉の“適正化”

 そして柴氏は、各国で行われるダンスミュージック・フェスティバル『ULTRA』の動きを踏まえ、現在のシーンを下記のように分析した。

「最近の『ULTRA』には、本国マイアミも日本もライブステージを設置するという面白い動きがあります。Underworldがヘッドライナーとして出演する『ULTRA JAPAN』だけではなく、マイアミもライブステージのヘッドライナーがJustice、The Prodigy、さらにアイス・キューブも出演するなど、かなり幅広いラインナップになっているんです。それを反映して今年の『ULTRA JAPAN』はティエストとCrossfaithが同じ日に出演するという、同フェスのイメージも変わるようなラインナップになってきました。Pendulumが別ユニットのKnife Party名義でも出演するというのも象徴的です。また、『WIRE』のレギュラーだった石野卓球やKEN ISHII、Fumiya Tanakaなどのテクノ勢が今年出演するというのも、日本における『EDM』という言葉のイメージがある種の狭義のジャンルから脱却しつつある証左と言えるでしょう」

 最後に、柴氏は今後のEDMが持ちうる可能性についてこう述べる。

「ビッグルームハウスやダッチトランスの反動で、3年前からは音圧ではなく軽めのシンセの音でリラックスさせるトロピカルハウスのような音楽が流行しました。その火付け役となったのがKYGOですが、彼が2015年に『ID』で担当し、過去にはアヴィーチーやアフロジャックも手掛けたULTRA MUSIC FESTIVALの世界公式アンセムを今年は中田ヤスタカが『Love Don’t Lie (Ultra Music Festival Anthem)(feat. ROSII)』で日本人としては初めて担当しています。これが4拍子と6/8拍子のポリリズムが強く印象に残る、非常に挑戦的な曲なんです。このあたりからそろそろ新しいムーブメントが生まれてきそうでとても楽しみですね」

 時代も楽曲もフェスも新たな局面に突入したEDMシーン。今年の『ULTRA』が打ち出した大きな転換は、今後の局面や来年以降のランキングにどのような影響をもたらすのだろうか。

(文=中村拓海)

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