FIRE BALLが語る、“レベルミュージック”の現在「生活の中にも歌うべきテーマはたくさんある」

FIRE BALLの“レベルミュージック”

「CRAZYBOYと一緒にやって、自分たちでは広げられないチャンネルにも繋がれた」(ジュン)

ーー今作はゲストミュージシャンやトラックメイカーもフレッシュな顔ぶれですね。

スティッコ:意外なところでいうと、DJ YUTAKAとかね。もちろん、昔からお互いに存在は知っているし、意識はしていたけれど、まさかこのタイミングでフィーチャリングするとは思わなかったです。お互いの歴史の中の点と点が繋がった感じで、それでいて“最新”みたいな。

クリス:あとはSupa Dups。マイアミのブラック・チャイニーというサウンドシステムのプロデューサーで、Mighty Crownと一緒にトラックを制作してもらったんですけれど、とにかく音が良いんですよ。「Don't Turn Dat Down」と「Around The World feat. Mighty Crown, CRAZYBOY」は、トラックもぜひ聴き込んでほしいですね。

リー:ミックスエンジニアのチョイスも良かったよね。D.O.I.さんとかMiki Tsutsumiに参加してもらったんだけれど、彼らのおかげでサウンド的にも“PROGRESS”することができた。Mikiは高校のときの同級生で、今はニューヨークにいて超活躍している。R&B部門でチャートトップの曲とかを手がけているエンジニアなんです。

ジュン:それに、Mighty Crownは常に海外に行っていて、向こうの音の作り方とかを学んでいるから、音質へのこだわりがすごい。一回マスタリングしても、みんなで細かくチェックして、もう少しベースを出したいとか、ここをクリアにしたいって詰めて、本当に締め切りのギリギリまで磨き上げる。USのメインストリームで鳴っている音と比べても遜色がないレベルまで仕上げようと、すごく貪欲です。

クリス:昔から一緒にやっている仲間がいるところも、FIRE BALLの強みですね。リーの同級生もそうだし、Mighty Crownもそうだけれど、FIRE BALLのためにとことんこだわって仕事をしてくれるから、結果的に良いものが仕上がる。トラックメイカーも、ずっとやってくれているGACHAやGuan Chaiに今回も参加してもらっていて、今回もすごく良い仕事をしてくれました。20年間の活動の中で出会ったミュージシャンたちとは、なるべくみんなで一緒に作りたいという思いがあったんですけれど、改めて今回やってみて、みんなそれぞれのジャンルでスペシャリストになっていると感じました。そういう意味でも“PROGRESS”しているんじゃないかな。

ーーMighty CrownのMASTA SIMONは、今回どんなアドバイスを?

リー:SIMONはいつも意見がすごくわかりやすい。良いものは良いし、悪いものは悪いってはっきり言ってくれるんです。その本音の意見って、僕らからするとすごく助かるんですよ。彼の意見がバロメーターになって、大きく方向転換するときも、思い切ってやれるんです。SIMONは「クソかっけーの作りてえ」が口癖で、それが何よりの指針なんですよ。

ーー若手とのコラボレーションでは、三代目J Soul BrothersのELLYがラッパー・CRAZYBOY名義で参加しています。

クリス:CRAZYBOYもMighty Crownの紹介で繋がりました。音楽にはシーンやジャンルはあるけれど、壁はないというか、「一緒にこういうの作ろうぜ!」って意気投合して、ライブでも共演させてもらいました。

ジュン:CRAZYBOYと一緒にやったことで、自分たちでは広げられないチャンネルにも繋がることができたのは良い経験でしたね。最初は、よく知らない人と一緒にやるのはどうなんだろうって疑問もあったけれど、SIMONの紹介だからと思って会ってみたら、「あ、すげー音楽好きなんだ、この人」ってすぐにわかったし、いまは本当に一緒にやれてよかったって思います。

リー:ジャンルに捉われなければ、面白い人ってすごくいっぱいいるよね。

クリス:EXILEのHIROさんも、80年代のダンスブームとかに影響を受けたストリート上がりの人なんですよね。こうやってだんだん繋がってきているのは、そういう部分で共有できる意識があるからなんだと思います。もっといろんなミュージシャンと繋がってみたいですね。

ーーたとえばヒップホップのシーンでは、昔は犬猿の仲だったアーティスト同士が、今となって戦友のように結束を強めて、一緒にプロジェクトを行っていたりします。そういう意味での広がりは、FIRE BALLにもあるのかなと。

リー:俺らの場合は、やり始めた時期も良かったのかなって思います。当時はジャンルにすごくこだわっていて、見ている世界は狭かったけれど、だからこそ確固たる自分たちのスタイルを築くこともできた。今でこそジャンルに壁なんてないと思うけれど、それは揺らがない自分があるからなんですよね。今、いろんな人と繋がれるのも、レゲエ代表として見てもらえているからなんだと思います。何にもこだわりがない人が「なんでもアリ」というのと、こだわりを経た人が「なんでもアリ」というのは、やっぱり違いますよ。

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