追悼チェスター・ベニントンーー彼とLinkin Parkが音楽シーンにもたらしたもの

 その一方で、バンドの音楽性が急激に変化したことに戸惑う意見も多かったが、それでもファンが離れなかった理由について下記のように解説する。

「彼らは、ファンの求める音とバンドの志向する音が乖離していった、ある種不幸なバンドともいえますが、それでも応援するアメリカのファンが離れなかったのは、イジメなどの社会問題や繊細な人間関係を歌う彼らの歌詞や、チェスターのカリスマというよりは良い兄貴的な存在の大きさがあったから。2004年にはスマトラ島沖地震による災害被害者に向けて、赤十字の協力のもとに慈善基金団体『Music For Relief』の活動を行い、東日本大震災時にも新曲『Issho Ni』を含むチャリティーアルバムをリリースしてくれました。ハリケーン・カトリーナが発生したときには、チェスターがMotley Crueの代表曲『Home Sweet Home』を本人たちとともにレコーディングし発売するなど、支援活動にも積極的な人でした」

 最後に、チェスターについて西廣氏は次のように思いを述べた。

「自身が後任のボーカリストとなった元Stone Temple Pilotsのスコット・ウェイランド、そして親友だったクリス・コーネルの死を背負って、精神的にも限界を迎えていた部分はあったのかもしれません。最新作のオープニングトラックのタイトルが『Nobody Can Save Me』だったのも、皮肉な話ですよね。ただ、9.11以降のアメリカを象徴するようなバンドのフロントマンであり、親しみやすいスターでもあったため、多くの人が悲しみにくれるのもわかります。バンドがどのような形になるかはわかりませんが、できれば継続することを期待しています」

 ロック・スターの早すぎる死は、音楽家にもファンにも大きなショックをもたらした。いまは一人でも多く、彼の意志を理解し、受け継ぐものが登場することを祈るばかりだ。

(文=中村拓海)

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