アニソンとJ-POPの境界線はより曖昧に 『関ジャム』最新回に見た構成とキャスティングの妙

 中盤からはますます『関ジャム』ならではの取り回しが目を引く。「TVアニメの主題歌は89秒」論や、鉄板のコード進行紹介(マイナーコード多めのA→Bからメジャーコード多めのサビで盛り上げるという転調の使い方)、「ようこそジャパリパークへ」(『けものフレンズ』)のテクニカルな面を解説するという、CSの深夜番組かと錯覚させるほどマニアックな神前氏による「アニソン楽曲分析」パートは、既存のアニソンファンすらもう一段階前のめりにさせる内容だった。

 特に「ようこそジャパリパークへ」の解説パートにおいて、渋谷すばるから「いい曲やね。J-POPっぽい。みんなやりたくなる感じ」という言葉が出てきたことも大きい。ここ数年のポップシーンでは、アイドルポップスやバンドサウンドが高速化し、人間が歌えない音程・音域をボーカロイドに歌わせてきた作家陣がJ-POPの舞台へ上がり、アニソン側もバンド畑の人間が制作する機会が多くなるなど、裏方も含めてエポックメイキングな出来事が次々と起こり、楽曲単位においてはJ-POPとアニソンの境界線が徐々になくなりつつある。渋谷の発言はそれを象徴している重要なポイントのように感じられた。

 番組の後半では、LiSAと関ジャニ∞が「oath sign」をセッション。この回に現在アニソンシーンから飛び出し、ロック・ポップスという戦場へ打って出ている彼女がゲストとして出演し、同じステージへ立つという意義も大きい。LiSAとこの日のゲスト3名、そしてキスマイ宮田というラインナップで地上波の夜に1時間の番組を放送するというのは、この番組でなければ成り立たなかったキャスティングだろう。

 かつて、番組プロデューサーの藤城剛氏はリアルサウンドでのインタビューにて、「“よく分からないマニアック”ではなく“みんなが興味の持てるマニアックな感じ”をどうお伝えするか」と話していた(参考:【『関ジャム』プロデューサーに聞く、“マニアックでポップ”な音楽番組の作り方】)。現役ヒットメーカーとしての神前氏、制作側としての山内氏、少し引いた視点から解説できるジャーナリストとしての冨田氏、ファンと同じ温度感を持っている宮田というこの日のゲストのバランスも、この信念に基づいたものということだろう。番組としての確固たるスタンスが透けて見える傑作回だった。

 番組の最後に、関ジャニ∞が『関ジャム』に関わったクリエイターたちと作り上げた新作『ジャム』の続報として、新曲「今」の作詞作曲を星野源のライブでおなじみ“ニセ明”が務めると発表された。その編曲にクレジットされていたのが、この日の「劇伴」パートでも名が上がった菅野よう子というサプライズ。番組放送後もまだ、この物語は続くようだ。

(文=中村拓海)

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