超特急はどこまでも走り続けるーーグループの“自信”感じた『Trans NIPPON Express 前前夜祭』
「プロレスのリングみたいですね」とは、会場を見たリアルサウンド編集氏の言葉。4月29日からスタートした超特急の全国ツアー『Bullet Train 5th Anniversary Tour 2017「Trans NIPPON Express」』の前哨戦であり、最新シングル『超ネバギバDANCE』のリリース翌日である4月27日に行われたフリーライブは、四方に柱を配した超特急初のセンターステージで行われた。アイドルにはできないことを模索するという「非アイドル」をコンセプトに活動してきた彼らは、元々はシーンの中ではスキマ産業的な側面を持ったグループだった。そんな彼らが『超ネバギバDANCE』で「オリコン1位を獲りたい」と堂々宣言。結果はどうあれ1位争いの“リングに上がった”という風に考えると、なんとも胸アツなシチュエーションだと感じた。
約4000人の熱気が溢れる客席の後方からメンバーが登場。至近距離でステージを観られる期待感からか、いつも以上に会場の熱気が伝わってくる。
オープニング曲は、いきなりBPMが速くフルスロットルな「超えてアバンチュール」!(2ndアルバム『Dramatic Seven』) “ロマンス”などのヲタ芸にヘドバンなどの激しい動きを組み合わせたこの曲で、会場を一気にヒートアップさせていく。2次元愛を歌い上げる“踊れるヲタク”3号車リョウガのセンター曲だが、キメ顔→ドヤ顔でヘドバン→無表情など、こちらにまばたきさせないほどの表情の振り幅がまずツボに入る。ラストサビで7人全員でステージをぐるりと回ったり、1人ずつ前後テレコに向いてジャンプするなど、360度の観客を意識したステージングも新鮮だ。
この日は中学生男子ばりのテンションでメンバーに絡みに行っていた1号車コーイチ、やはり心なしかテンション高めの7号車タカシのボーカル組の声の伸びもよく、ツアーに向けてコンディションを仕上げてきている様子がうかがえた。5号車ユーキの前フリでスタートしたメンバー紹介ソング「Superstar」では、コミカルさを前面に出した「超えアバ」とは打って変わって、それぞれのオトコマエ度の高さで惹き付ける。特に4号車タクヤがジャケットをはだけるシーンでは盛大に悲鳴が上がっていた。
タカシが回転しながらおなじみの“タカシやで!”ポーズを決めたりとセンターステージを活かした自己紹介の口上のあとに、前日『超ネバギバDANCE』が超特急初のオリコンデイリー1位にランクインしたことをリョウガが報告。第8のメンバーでもある8号車(超特急のファン)に向けて「お互いにおめでとうございます!」と喜びを爆発させるシーンもあった。
そして2号車カイの「みなさん、新曲は聴きました? ということは、ダンスもカンペキですよね?」のフリののち、前日リリースしたばかりのデビュー5周年記念シングル曲「超ネバギバDANCE」へ突入。<夢中で駆け抜けてきた>この5年間を振り返りつつ、不屈の精神で<時代の幕開け>へと突き進もうとする歌詞の一言一言がポップでありながら、ある種の凄みも感じさせるこの曲。インパクト大なダンスについては先日の記事でも触れたが、センターに来るメインダンサーがくるくると変わるため、ダンディに魅せるカイ、“Happy”な笑顔でアクロバットを決めるユーキ、迫力の顔芸で攻める6号車ユースケなど、7人それぞれの魅力を再確認できる曲でもある。
この日は久々のフリーライブということで、MCではこの5年間に彼らが経験した数々のフリーライブでの思い出を振り返った。2014年の1stアルバム『RING』リリース時期まではアウェーで経験を積むことが多かった彼ら。「思い出すと若干キツかったことばっかり」(カイ)と笑いながら話していたが、〝終着駅は東京ドーム”が現実になりそうな今を、当時は本人たちも予想していなかったのではないだろうか。
続く「Billion Beats」(1stアルバム『RING』)では、8号車と過ごすかけがえのない時間への気持ちを、エモーショナルに表現。ボーカル組の情感あふれる歌いまわしや同曲のセンター・タクヤの“Beauty”で華のあるソロダンスなど、観どころ聴きどころが多いこの曲を、大盛り上がりの「ネバギバ」に続けて持ってくるセンスも興味深い。<20億分のうちの あと何回 君といられるだろう>にかけて数字の“2”を描いたり両手の拳を交互に上げたりと、初乗車の人でも真似できるような振りで、メンバーと8号車の動きがよりシンクロ率を高めていく。
そんな会場の空気感をガラリと変えたのが、ヒップホップ色の強い「Turn Up」(11thシングル『Yell』カップリング)。ライブではアクセントをつけるシーンで使われるこの曲で、8号車的に注目が集まるのは普段は観ることの少ないコーイチの切れ味鋭いラップやダンス。元々歌もラップもダンスもスキルの高い“能ある鷹”である彼の爪がかいま見られる瞬間でもあり、そのテンションに引っ張られるように全員のパフォーマンスが熱を帯びていくのだ。
会場の熱気がピークに達したタイミングで、ユースケの「みんな大好きだぞ~~~!」のシャウトからスタートしたのは「バッタマン」(9thシングル『スターダストLOVE TRAIN/バッタマン』)。この曲では8号車による一糸乱れぬコールをバックに、タカシとユースケがあわやキス(?)したり、コーイチがメンバーをおんぶしまくったりとわちゃわちゃ感あふれるパフォーマンスを展開。「みんなと~~~一番~~~獲るぞ~~~!!!」と叫ぶユースケ、歌詞の<弱ぇのは強ぇぞ?>を<超特急は強ぇぞ!>と歌い替えるタカシと、8号車目線で考えればエモい瞬間が大放出されていた。
そんなライブのラストを飾ったのは、盛り上げ曲の定番といえる「Burn!」(8thシングル『Star Gear/EBiDAY EBiNAI/Burn!』)。彼らが前日のブログで予告していたのだが、通常はライブでジャンケンに勝ったメンバーが歌うパートを、この日は8号車が担当。8号車たちによる<振り切った限界をまた乗り越えて 僕は強くなる 諦めたくはないから 加速する風に乗って迎えるんだ 明日すら愛おしくなるほどの僕の夢>の大合唱にイヤモニを外して聞き入り、その後のラスサビでめちゃくちゃに打点の高いクロスジャンプを見せた7人の楽しげな表情が強く印象に残った。
エンディングでは「これからもみんなと一緒に。超特急でどこまでも走り抜けていきましょう!」(リョウガ)と語り、四方の観客に向けて感謝の気持ちを伝えていた7人。コンパクトな曲数ではあったが、ヒットシングルだけでまとめず、8号車と一緒に楽しめる&8号車への思いを込めた曲にポイントを絞ったセットリストに今の彼らの自信のほどを感じた。いい意味でのジャンルレス感や縦横無尽なパフォーマンスで魅せる「超特急らしさ」をアップデートし続ける彼ら。スタートしたばかりの全国ツアーやその追加公演である6月14日の日本武道館で一体どんな超特急が観られるのか、もはや楽しみでしかない。
■古知屋ジュン
沖縄県出身。歌って踊るアーティストをリスペクトするライター/編集者。『ヘドバン』編集参加のほか、『月刊ローチケHMV』『エキサイトBit』などで音楽/舞台/アートなど幅広い分野について執筆中。