モー娘。が「泡沫サタデーナイト!」で久々の首位! ハロプロ楽曲大賞2016を振り返る
ハロプロを愛する者たちの間で毎年恒例のファンイベントとなっているのが『ハロプロ楽曲大賞』。インターネット上で投票を募り、1年間に発表された楽曲に順位を付けて、みんなで楽しく盛り上がろうという趣旨の催しである。2016年末も『第15回ハロプロ楽曲大賞'16』と銘打って開催され、3353人が投票参加して大きな盛り上がりを見せた。
(総順位などの結果は公式サイトにて)
リアルサウンドでは前回・前々回も順位に関する分析記事を寄稿しているが、今回もまた2016年版記事をここにお送りする。それでは早速順位を振り返っていこう。
(以下の論考は、こちらのランキングと併せてお読みください)
◆楽曲部門1位:モーニング娘。'16「泡沫サタデーナイト!」
2016年度の第1位に輝いた楽曲は、モーニング娘。'16「泡沫サタデーナイト!」。ガールズバンド・赤い公園のギタリストである津野米咲の作詞作曲で、彼女が初めてハロプロへ提供した楽曲となる。ディスコ/ファンク系のサウンドで、「LOVEマシーン」「恋愛レボリューション21」といったモーニング娘。およびハロプロ王道の曲調を踏襲したものとなっている。本曲を含むトリプルA面シングルはメンバー鈴木香音の卒業前ラストシングルという位置づけで、特にこの曲はMVで鈴木がDJに扮していたり、間奏に「この曲、あと58秒で終わっちゃうんだって!」というセリフパートがあるなど、彼女がフィーチャーされた一曲でもある。
娘。の近年の楽曲の中でも比較的明るくわかりやすくキャッチーなナンバーであり、初披露時からファンの評価は相当高いものだった。また、MV内で使用されている金色の特徴的なフォントを使ってファンがコラージュ画像を制作してSNSにアップする、いわゆる「泡沫コラ」も流行った。文句なしの1位だろう。
ハロプロ楽曲大賞の過去15回において、モーニング娘。が1位を獲ったのは「浪漫 〜MY DEAR BOY〜」(2004年)、「青空がいつまでも続くような未来であれ!」(2006年)、「笑顔YESヌード」(2007年)、「リゾナント ブルー」(2008年)の4回。今回は8年ぶり5度目の受賞となった。
◆楽曲部門2~3位:アンジュルム「次々続々」、NEXT YOU「大人の事情」
第2位はアンジュルム「次々続々」。作曲と編曲を手がけたのは平田祥一郎で、これまでも長年ハロプロ楽曲の編曲を多数担当してきた氏だが、作曲自体も行ってハロプロへ提供するのは、実は本曲が初めて。クラブミュージック色の強いダンスナンバーで、アンジュルムのアグレッシブな力強さがそのまま実体化したかのようなサウンドは、前回のハロプロ楽曲大賞の2015年度第1位を獲得した「大器晩成」と共通している。この曲もまたアンジュルムの代表曲のひとつとして数えられる一曲である。
「泡沫サタデーナイト!」「次々続々」の2曲は発表当初からファンの支持が高く、楽曲大賞でも上位に来ることが予想されていたが、3位にNEXT YOU「大人の事情」がランクインすることを先読みしていた人はあまりいなかったのではないだろうか。Juice=Juice主演で放送されたテレビドラマ『武道館』(フジテレビ系)の挿入歌で、歌唱名義はJ=Jが扮した劇中グループのNEXT YOUとなっている。シングルとしては未発売で、配信限定および『武道館』Blu-rayソフトの付属特典CDとしてのみのリリースだった。つんく♂の作詞作曲であり、ドラマの内容ともリンクしている歌詞を、憂いを帯びたしっとりとした曲調で聴かせる。J=Jの歌唱力の高さと楽曲の持つ力が上手く組み合わさった成果としてのベスト3入りだろう。
◆楽曲部門4〜50位
以下はグループ別に見ていこう。
【℃-ute】
ここ数年の楽曲大賞ではベスト10に楽曲を送り込むことができていなかった℃-uteだが、今回は8位に「夢幻クライマックス」、10位に「人生はSTEP!」がランクインした。「夢幻〜」はシンガーソングライター大森靖子が作詞作曲を手がけたナンバーで、クラシックのフレーズを取り入れたゴシック調の絢爛たるサウンドが、長年のキャリアで培った℃-uteのパフォーマンス力の高さと良い相性を見せている。エレクトロ・スウィング調のサウンドでタップダンスをかっこよく決める「人生〜」や、30位の「羨んじゃう」もそうだが、ある程度以上のスキルがなければ様にならない楽曲を難なくこなす℃-uteの姿がファンの支持を集めたようだ。
【モーニング娘。'16/'15】
ベスト10には「泡沫サタデーナイト!」の他にも「ムキダシで向き合って」(4位)、「セクシーキャットの演説」(9位)を送り込んだモーニング娘。'16だが、集計期間の都合により去年12月リリースのモーニング娘。'15名義の楽曲も、7位に「ENDLESS SKY」、12位に「冷たい風と片思い」がランクインした。どちらも鞘師里保の卒業と紐付けられる名曲である。
また、44位にはバセスカ×フォース(佐藤優樹×石田亜佑美)「僕らの信念」がランクイン。これはモーニング娘。'16出演舞台『続・11人いる! 東の地平・西の永遠』の劇中曲であり、演劇関連曲が50位以内に入るケースは、今回はこの1曲のみだった。
【アンジュルム】
2位の「次々続々」の次に順位が高かったのは、15位の「糸島Distance」。福岡県の実際の地名を曲名に冠しているほか、歌詞中に「能古島」「警固公園」などの地名が出てきたり、サビは〈好いとうと!好いとうと!好いとうと!…やけん〉という博多弁が使われるご当地ソングであり、その歌謡曲成分の強さが新鮮だった。似た方向性の「忘れてあげる」は25位、前回1位の「大器晩成」と同じ中島卓偉の提供曲「上手く言えない」は19位。
【Juice=Juice】
NEXT YOU名義の「大人の事情」に次ぐ高順位曲は、11位の「Dream Road 〜心が躍り出してる〜」だった。EDMのサブジャンルとして近年注目を集めているトロピカル・ハウスを思わせる編曲、コンテンポラリーダンスの要素を取り入れた演劇チックな振り付けなどにより構成された意欲作で、武道館という夢を目指しそして達成したJuice=Juiceの姿と重ね合わせることでより一層心に響く感動曲でもある。
ヒャダイン(作詞作曲)×ダンス☆マン(編曲)の初顔合わせにより生み出されたのはマイケル・ジャクソンオマージュというファンクチューン「KEEP ON 上昇志向!!」は16位、NEXT YOU名義によるドラマ主題歌「Next is you!」は22位と、いずれも上位にランクインした。
【カントリー・ガールズ】
カントリー・ガールズの楽曲には一定の方向性があり、デビュー1年目の2015年にはアメリカンポップスを基調とした可愛らしいサウンド、2年目の2016年にはロカビリー色の濃い楽曲が多く見られる。後者にあたる「ブギウギLOVE」(29位)、「どーだっていいの」(32位)などを抑えてグループ内首位の14位をマークしたのは、カンガル楽曲としては異色のシンセ歌謡「恋はマグネット」。1980年代アイドルポップスシーンでよく見られたサウンドだが、音処理や質感は2010年代以降のもので単なる懐古趣味というわけでもない高クオリティな仕上がり。30代以上のリスナーには懐かしく、10〜20代には新鮮に響いたのかもしれない。
【こぶしファクトリー】
ファンの前評判では楽曲部門の優勝候補の一角と言われていた、ヒャダインこと前山田健一の初ハロプロ提供曲「チョット愚直に!猪突猛進」は6位。そしてそのひとつ上の5位にランクインしたのは、11月末リリースのアルバム『辛夷其ノ壱』収録曲「辛夷の花」だった。この曲は11月下旬に突如公開されたMVのインパクトと共に語られる一曲だろう。楽曲大賞投票受付直前のタイミングということも有利に働いたかもしれないが、それ以上にMVの美しい映像、今後グループの代表曲になっていく予感を感じさせる楽曲の力強さが、第5位というランクに結実した。
「桜ナイトフィーバー」は18位、「押忍!こぶし魂」は21位という中で、「バッチ来い青春!」が35位というのは、もう少し上でもよかったのではと個人的に思う。また、40〜50位ゾーンに「未熟半熟トロトロ」(40位)、「懸命ブルース」(42位)、「急がば回れ」(45位)、「TEKI」(49位)とアルバム曲が軒並みランクインしているのは、アルバムの発売時期を考えると健闘と言えるだろう。
【つばきファクトリー】
前回2015年度のランキングではインディーズ1stシングル「青春まんまんなか!」が54位と、50位圏外だったつばきファクトリー。今回は2ndシングル「気高く咲き誇れ!」が31位、3rdシングル「独り占め」は20位と、ランキングと共にファンへの存在感を如実にアップさせた。特に「独り占め」はつんく♂の作詞作曲による、決して派手ではないが聴くたびに良さが増していく、俗に言う“スルメ曲”の範疇に入る好印象曲であり、NEXT YOU「大人の事情」に共通するものを感じる。
今年2017年2月にはメジャーデビューが決まっており、トリプルA面シングルのトップにクレジットされている「初恋サンライズ」は、今年初頭の正月ハロコンでの初披露時からすでにファンの間で熱い支持を得ている一曲。2017年度ランキングでも上位に食い込んでくることは目に見えており、今から楽しみだ。
【Buono!】
2016年は、Buono!が久々に新曲をリリースした年でもある。両A面DVDシングルの内、「ロックの聖地」は37位、「ソラシド 〜ねえねえ〜」は17位という結果だった。「ソラシド〜」は「泡沫サタデーナイト!」と同じく津野米咲の作詞作曲で、曲終盤の鈴木愛理のハイトーンはじめ、フックがいろいろとある良曲。他のハロプロ正規シングルと同じようにプロモーションが実施されていればもっとファンへの浸透度が上がって楽曲大賞でも上位にランクインしたのでは……と個人的に妄想している。