香月孝史の『Merry Xmas Show 2016』レポート

乃木坂46のクリスマスライブが提示した、選抜・アンダーそれぞれの「広がり」

 乃木坂46が12月6日から9日までの4日間にわたって、日本武道館で『Merry Xmas Show 2016』を開催した。昨年にもまして、女性アイドルシーンの中心的な存在としての立場を築いた2016年を締めくくるこのライブで、乃木坂46は過去にない趣向を試みた。それが“選抜単独公演”だ。選抜/アンダーという視点で見るとき、この数年の乃木坂46のライブに関してまず挙がるのは、アンダーメンバーの活躍だった。さまざまなマスメディアでグループの顔として立ち回る選抜メンバーとは異なる強みとして、2014年春から始まったアンダーライブは、アンダーメンバーの大きな武器になってきた。すでに一昨年、昨年と年末の大会場ライブでは、グループ全体のライブに先んじてアンダーメンバーのみの公演が組まれている。翻って、選抜メンバーのみの公演の実現までには、意外なほどの時間をかけていることになる。

 満を持しての選抜単独公演は4日間の公演のうち、1日目と3日目に組まれた。この2公演で選抜メンバーがまず見せつけたのは、デビューから4年半以上の歳月で蓄積してきた、タレントとして、個々のパフォーマーとしての強さである。それを示すのが各日のセットリスト前半に行なわれた「一人一曲プロデュース」企画だった。

 

 これは各メンバーが乃木坂46の楽曲を一曲ずつ主導し、オリジナルの演出で披露するものだが、ここで楽曲に施された演出の方向性はそれぞれ大きく違っている。ストイックなソロダンスを見せた伊藤万理華(「不等号」)や、アルバム曲を自身の色に塗り替えた桜井玲香(「欲望のリインカーネーション」)のように、ストレートに格好良さを志向するパフォーマンスもあれば、白石麻衣・松村沙友理とともに、メンバー構成の妙を見せた橋本奈々未(「Threefold choice」)のような趣向もある。あるいはあえて拙さを強調した振る舞いを見せ、それを楽曲終盤の展開への振りにつなげた秋元真夏(「オフショアガール」)、さらには本人の歌唱よりも、楽曲を用いつつメンバーたちによるバラエティ的な競争企画を仕立て、そこに本人の飄々としたパーソナリティをフィットさせた齋藤飛鳥(「人はなぜ走るのか?」)などのアクトを見ると、ここでは単に一人一人が中心に立つばかりでなく、各メンバーと楽曲を起点にして、いかにその時間を演出してみせるかが鍵になっていることがわかる。

 それは何より、キャリアを重ねながら、数多くの場で乃木坂46のアイコンとして活動し、知名度と存在感の強さを高めてきた各メンバーの力があってこそ成り立つ時間だっただろう。今年もまた、楽曲でも映像作品でも高水準のコンテンツを送り出してきた乃木坂46だが、その一方で昨年以上に世間に広く浸透するなかで、各人がジャンルにかかわらず「タレント」としての実力もつけてきた。だからこそ、「一人一曲プロデュース」という企画は贅沢さをたたえたものになった。もちろん、「今、話したい誰かがいる」から始まるライブ冒頭や、「君の名は希望」から展開する終盤のシングル表題曲パートで見せる絵面は強く、選抜単独公演は2016年現在の彼女たちのメジャー感をあらためて確認するライブだった。

 今年は4日間の公演が、選抜とアンダーそれぞれ2本の公演に割り振られている。例年であればアンダー公演が行なわれたのちに、乃木坂46全体でのライブを組んで年を締めくくっていた。つまり、今年については年末ライブでグループ全体の姿を見せる機会を作らない選択をしたということになる。年末のアンダーの単独公演は2014年から行なわれ、以降も続くライブによって「アンダー」の意味や価値を確実に変えてきた。しかし、そのアンダーライブを単に選抜への「対抗」として位置づける段階もすでに過ぎ、乃木坂46総体としての厚みを増してきた今、あえてライブに関して選抜/アンダーをはっきり分けて提示することでどのような景色が見えるのか、事前には予測しにくい部分もあった。

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