シングル『FLIP FLAP FLIP FLAP』リリースインタビュー

伊藤真澄&ミト&松井洋平によるユニット・TO-MASが考える、“チームで音楽を作ること”の利点

松井洋平

「思うことがあっても音に出てくるから悩まない」(松井)

ーー『ももくり』の次は、μ's「これから」の作・編曲もありつつ、新海誠監督の『彼女と彼女の猫』ですよね。この作品の劇伴は、どのような形で制作しましたか。

松井:ここでは、逆に大きな枠を決めてかかろうかなと思って、3人でミニマムにどれだけのことができるかを実験しました。

伊藤:たしかに、作品自体の尺も世界もミニマムな感じだったからね。

ミト:僕は初めて知りました。お気づきのように、この3人にはコンセンサスという言葉はありません(笑)。

松井:その通り(笑)。だから、みんながその時に思ったことがあって、後から蓋を開けてみたら「そういうことだったんだ」と感じることが多いです。

伊藤:でもね、やっぱりキャリアがそれなりにあるからだと思うけど、ひらめきに頼る部分は多いですよ。

ミト:そうですね。この作品で僕は真澄さんと初めて一緒にブースへ入ったんです。基本の曲があるんですけど、その展開を「ここで作っちゃったほうが早くないですか?」という話になって。

松井:で、その時もらったイメージをそのまま持って帰って、僕がポストプロダクションを手がけました。エンディングはクラムボンが担当してくれたんですけど、その曲につながるメロディを劇伴にも使ったりと、アーティストと劇伴ユニットが切り分けられていたらできないようなことにも挑戦しました。

伊藤:あれはよかったね。たしかエンディング曲が先にできて、「このイントロへ繋げたい」という指示があったから、そこを取り入れたんです。で、そのイントロに印象的なピアノのフレーズが使われていたので、その音を色んな曲に散りばめたり、他の曲を同じフレーズで作ったりして。あの音が決まったところで、全体の世界観ができたという印象です。

松井:だから、3人とも同じピアノを使ったんですよね。

伊藤:そうです。このサウンドトラックはとにかくピアノにこだわりました。同じピアノの音色でいった方が良いと3人で話して、エンディングも劇伴もすべて同じスタジオの同じピアノを使いました。とにかく、空気感を大事にしようと。

ミト:統一感がどうというより、話が日常系に近いものだったから、メルヘン的な要素も必要なくて、多分ピアノ一本ぐらいの方がいいでしょうという話になったんですよ。

松井:そうそう。なるべく音を少なくするかというアンビエンス的な作り方だった。ピアノ全体にディレイをかけて、その音を書き出して切り刻んで、一部だけ使ったりして。

ミト:ここから松井くんがリリックとポスプロに加えて、電子音・サンプリング的な部分を担ってもらうようになりましたね。真澄さんと僕だったら、コンポーザーとしてのカラーを把握して「ここは得意だからお願いできる、任せられる」というのがわかるものですけど、松井くんの場合は、言葉が介在しないものをまだ当時はどうお願いしていいのかわからなくて。

松井:下手したら、タイトル作るだけの人になっていたかもしれないですからね。でも、バンドやユニットでやっていることも色々あるので、その延長線上プラスここで学んだものを自分の中で変換してアウトプットするという。生まれが東大阪に近いもので、そういう中小企業的なメンタルが活きているのかも。

ミト:やっぱり3人ともプロダクションもディレクションができる人たちだから、自分たちの引き際もわかっているんですよね。

松井:みなさん思うことがあってもほとんど音に出てくるから、そこまで悩まないんです。「ここは聖域だからいじらないで」という部分もやはりあるでしょうし。

伊藤:はっきり口で言うっていうこともありますよね。切羽詰まっている時とか(笑)。

松井:で、やりとりの加減も含めて誰がどんな役割をするかが決めたあとに『フリップフラッパーズ』(TOKYO MXほか)のお仕事をいただいたんですけど、これがもう、全部覆されるようなアニメで……。

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