1stEP『What’s Going On?』特別対談
Official髭男dism藤原聡 ×「鷹の爪」FROGMANが語る、創作でのし上がるために大切なこと
人生に寄り添うポップな音楽で支持率上昇中の「髭男」ことOfficial髭男dismが、1stEP『What’s Going On?』をリリース。収録曲「黄色い車」が、人気アニメ『秘密結社 鷹の爪 GT』(LINE LIVEなど)の10月からの新エンディングテーマに起用されている。島根県を拠点にしていた髭男のボーカルを務める藤原聡は鳥取県生まれ。方や、「鷹の爪」を生み出したFROGMANは島根在住時にCGクリエイターとしてデビューしたということで、山陰地方という繋がりもある両者。今回はそんな二人の対談をセッティングし、お互いの魅力や作品のコンセプト、今気になる音楽や、業界でのし上がるために大事なことまで、たっぷり語ってもらった。(猪又孝)
「シナリオ、言葉をすごく大切に考えている」(FROGMAN)
ーー『秘密結社 鷹の爪 GT』のエンディングテーマになった「黄色い車」は、FROGMANさんが今回のEP収録曲すべてをお聴きになった上で選んだそうですね。
FROGMAN:僕は映像で使う音楽にこだわってるんです。僕が高校生の頃は、イカ天(「三宅裕司のいかすバンド天国」)ブームで、猫も杓子もバンドを組んでいて、僕もバンドをやってたんですね。もっと遡ると、僕は兄貴が6人いて、それぞれに好きな音楽を聴いていたんです。
藤原:どんな音楽ですか?
FROGMAN:一番上の兄貴はビートルズにハマってて、僕が幼稚園の頃からビートルズが家の中で流れていたから、音楽は生活の中にあってしかるべきという感じだったんです。でも、映画業界に入ってみると、音楽に対して意外にお粗末だなという印象があって。もちろん大人の事情っていうのも考えなきゃいけないんだけど、だからといっておざなりに済ませられないという思いから、「鷹の爪」で使う音は自分で選ばせてもらってるんです。
ーー「黄色い車」はどんなところが選定の決め手になったんですか?
FROGMAN:「鷹の爪」って、悪の秘密結社と正義の味方が戦うコメディーなんですけど、僕の中では家族の物語なんです。「総統」は疑似の父親で、その他は子供たち、みたいな。ずっとそういう関係で描いてるつもりなんです。「黄色い車」はまさしく家族との別れと新しい出会いをテーマにしているので、一番ぴったりだなと思ったんですよね。
ーー藤原さんは、今回のタイアップの話を聞いたとき、率直にどう思いましたか?
藤原:島根県では鷹の爪団が身近な存在なんですね。駅にもポスターが貼ってあるし、カレンダー(「島根スーパーデラックス自虐カレンダー」)もすごく有名だから、ご一緒させてもらえると聞いたときはビックリして。アニメのタイアップは初めてだったんですけど、最初が自分の故郷にゆかりのあるアニメに携われたのは嬉しかったです。
ーーそもそもFROGMANさんがOfficial髭男dism(以下、髭男)を知ったキッカケは?
FROGMAN:ぶっちゃけ、ウチの本部長がたまたま所属事務所の方と知り合いになって、島根出身のバンドがいるから今度紹介しますと。で、「Official髭男dism」っていうから、最初はお笑いかと思ったんです(笑)。
藤原:あはは! よく言われます(笑)。
FROGMAN:「ルネッサーンス!」みたいだなと(笑)。それで気になってネットで調べていって、「SWEET TWEET」(デビューミニアルバム『ラブとピースは君の中』収録)のMVを見たんです。そのときに「うわー、こいつらスゲエ」と思って。演奏がずば抜けて良かったことと、歌詞もよく考えられているんですよね。
ーー言葉が気になりましたか。
FROGMAN:僕はシナリオを大事にしているし、言葉をすごく大切に考えているんです。こんなことを言うと怒られるけど、正直、最近の若い子たちの曲って「もう少し、お前ら、国語勉強しろよ」みたいな。呆れるを通り越して怒っちゃうような歌詞が多い中で、自分たちの伝えたいメッセージを野暮ったくなく描けている歌詞だなと思ったんです。それにサウンドには僕がかつて聴いてた渋谷系みたいなテイストもあったりして、これはいいなと。
ーー「鷹の爪」シリーズは、『THE FROGMAN SHOW』から数えて今年で10年ですが、『鷹の爪 GT』は、“GT”ならではのコンセプトがあるんですか?
FROGMAN:NHKじゃやれないこと(笑)。以前はEテレだから僕らも常識の範囲内でやってたんですけど、一方で、最初にテレビ朝日の深夜でやってた常識外れのことってやれてないなと思って。あと、NHKで4年間やってるうちに新しいファンがすごく増えたんです。昨日も島根県に帰って、子供たちの文化祭みたいな催しでサイン会をやってたんですけど、小学校一年生の子とかが僕にサインをねだってくるんですよ。今まで島根で子供たちが僕にサインをねだるなんてことはなかったんで、そういうニューカマーに「本当はそんな、いいオジサンじゃないんだぞ」っていうところを見せとこうと(笑)。
ーー本当はトガってるんだぞと(笑)。
FROGMAN:やっぱり僕がいちばんやりたいのは、シュールな笑い、ブラックな笑いなんです。観ている側を置いてけぼりにするような、自分だけ楽しければいいっていうところなんで。こないだ発表した新作も「君の縄」ですからね(笑)。