なぜライブハウスに宿泊施設? 梅田シャングリラの試みに見る、ツアーバンドの遠征事情

梅田シャングリラはなぜ宿泊施設を作る?

 大阪にあるライブハウス・梅田シャングリラが、新たな試みをスタートした。「国内初ライブハウス&ホステル一体化リノベーション」である。2005年にライブハウス運営を開始し、11年目に突入したタイミングで行われる一大プロジェクトだ。これは、ライブハウスの2階スペースに宿泊施設を作り、遠征でやってくるバンドマンたちが安価に利用できるようにするというもの。なぜ今回このような新たなスタイルに挑戦しようと考えたのか。梅田シャングリラの店長・キイリョウタ氏に電話取材を行った。

 まず、今回のリノベーションに至った経緯として「宿泊施設の高騰」があるとキイ氏は語る。

「うちに来てくれるバンドたちが、ここ数年宿泊が取りづらくなっているということが一番大きい。関東もそうだと聞きますが、関西の宿泊施設の利用料が年々高くなっている。それで金銭的な問題で打ち上げもせずに夜中に帰るバンドが増えていて……かなり無理がたたっている印象です。ライブだけでは収益が厳しく、物販をがんばって売りながら活動する。そういうバンドの現状を間近で見ているので、少しでもバンドのためになにかできればと思い、今回のリノベーションを計画しました。もちろん多様化する音楽ビジネスのひとつとして物販や特典などのアイディアはとても重要かと思います。しかし音楽家として一番である音楽と向き合う時間が今回の計画で少しでも増えればと考えています」

 当初は気軽に使ってもらえるカジュアルな施設を目指していたが、結果的にかなり規模が大きくなってしまったとキイ氏はやや苦笑い。現在、資金のある企業への積極的な協力を仰いでいるという。

「本当はバンドマンたちが雑魚寝できるくらいのラフな感じで考えていたのですが、それでは旅館業法の審査が通らないようで。その基準で施設を作っていくと、今回のような3部屋に12名が泊まるかたちになりました。本当はもっと安くできるはずだったんですが、現状一人あたりの宿泊費は4000円くらい。これは運営していくうちにどうにかしていきたいですね。グループの社長であるLD&Kの大谷の原案のもと始めたはいいけれど、そういう事情でリノベーション費用が思った以上にかかってしまって、クラウドファンディングで支援を呼びかけることにしました。でも、最初にあまり心配をかけまいと『1000万は確保できている』と書いてしまったものだから、協力がまだまだ少なくて困っていて(笑)。ぜひ事務所やイベンターのみなさんにも協力していただけると非常に助かります。バンドマンたちからの評判はとてもよく『共感しました』『感動しました』と言ってもらえていますし、必ず彼らの役に立てると思います」

 さらに、今回のリノベーションをきっかけに、希薄になりつつあるバンドマンたちのつながりが取り戻せられればとキイ氏は語る。

「バンドの遠征の状況は本当に変わってきていますね。東京で500〜600、大阪で300くらいのキャパでやっているバンドーーワンマンができるバンドだったらいいんですけど、対バン3〜4組で出演しているバンドたちは活動費用に余裕がなく厳しい面がある。CDも売れない時代ですし、みんなどうやって活動するか必死で考えています。音楽以外のことで努力していることが多すぎるので、彼らがもっとゆとりを持って音楽活動、音楽制作できる環境づくりのお手伝いが少しでもできればと思っています。ゆとりが生まれれば、打ち上げや交流も活発になって、そこでバンド同士の横のつながり、先輩後輩のつながりが生まれていく。そういうコミュニケーションが生まれる場にしていきたいですね」

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ライブハウスは多くのバンドたちのつながりを生む場でもある

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