スカパラとKen Yokoyamaはなぜ共振する? 挑戦し続ける彼らの再タッグを読む
東京スカパラダイスオーケストラ(以下:スカパラ)が、Ken Yokoyamaと再びフィーチャリングしたシングル『さよならホテル』が、9月7日に発売された。スカパラが、2度のコラボを果たしているのは、中納良恵(EGO-WRAPPIN')やハナレグミ、奥田民生らとの作品以来のこと。両アーティストの結びつきやアティテュードを切り口に、今作の再コラボに関して音楽ライターの石井恵梨子氏に話を聞いた。
石井氏は、今楽曲「さよならホテル」のロマンチックな曲風に驚きを感じつつ、「Ken Yokoyamaとスカパラの9人が精神の部分で深く共振している“姿勢”を改めて感じた」と語る。
「あくまで両バンドともアンダーグラウンド発であり、そこで満足せずメインストリームへ切り込んでいくという姿勢があります。スカパラは今でこそメジャーですが、結成当時は“お茶の間にスカを”というテーマを掲げていました。そもそも、ジャマイカ生まれのスカを日本人が東京でやるということ自体、とてもチャレンジングなことだった。一方で健さんも、UKやUSで生まれたメロディックパンクを、いち早く日本で鳴らしたオリジナルの人だと思いますし、それが結果的に日本全国に広がるまでになった。根っこは同じなんです。あとは、いつでも楽しそうに活動しているところも共通していますね。歴史を紐解けば辛い出来事もあったはずなのに、“苦悩”とか“苦闘”みたいな言葉が似合わない(笑)。バンドのキャラクターや本人の性格もありますが、すごく楽しそうに粋にやってしまう、そこはすごく似てるなと思います」
スカパラとKen Yokoyamaが、初めてコラボした前作『道なき道、反骨の。』には、歌詞の“反骨”に対するメッセージや、パンクロック要素が含まれているビート感など、Ken Yokoyamaらしさが引き出された作品だった。しかし、今作は、前作で日本語詞に挑戦したばかりの横山が、今楽曲でも彼のイメージと離れたラブソングに“挑戦”しているのが興味深い。横山は、自身のコラムにて、前作に通ずる姿勢を書いた全く違う歌詞も用意されていたが、あえて今回の歌詞を選んだと明かしていた。(参考:http://www.pizzaofdeath.com/column/ken/)石井氏は、前作から培われた信頼関係が、今回の挑戦につながったのではないかと語る。
「最初にみんな『これを横山健が歌うんだ』と驚きますよね? それをあえてやったのがすごいなと思うんです。ラブソングだし、ストーリーもアダルトだし。『この人とならこういう歌詞』という谷中さんのリサーチは毎回あるはずなんですよね。バンドコラボの時のインタビューで、キヨサクさん(モンゴル800)に歌ってもらう時に、『彼の声を前にすると、自分がカッコつけて書きすぎてると気付かされ、歌詞を書き換えた』とおっしゃっていて。相手の声や性格によって歌詞を変えることはこれまでもあったはずですが、今回はこれまでのKen Yokoyamaのイメージにはない歌詞を歌わせた。その新しさに驚きました。やりにくいフィールドにあえて立ってもらった感じといいますか。そして健さんは堂々とそのフィールドに立ったあと、その曲を自分のバンドに持ち帰り、英詞でカバーをした。曲調も後半ガラっとKen Bandらしく変わりますし、もうゲストボーカルの域を超えていますよね。彼らの信頼関係がすごくはっきり出ている曲と言えるのでは」