THE YELLOW MONKEYは“日本のロック”を堂々と鳴らすーーサマソニ出演に寄せる期待

 THE YELLOW MONKEYは再集結後にライブ・ツアーをスタートし、ROCK IN JAPAN FES.にも出演した。続いて、2016年のサマーソニックには、THE YELLOW MONKEYとSUEDEが、別ステージではあるけれど、同日に出演する。このことに感慨を覚える。いずれも1990年代に活躍した日英の両バンドは、デヴィッド・ボウイを筆頭とするグラム・ロックの影響を受けて出発し、解散していた時期を経て再集結した点が共通する。また、THE YELLOW MONKEYが登場するサマソニのメインステージでは、その日のトリをレディオヘッドが務める。そういえば、今年のフジロックの大トリは、レッド・ホット・チリ・ペッパーズだった。時代の周期、めぐりあわせーーなんてことを感じてしまう。

 ただ、その周期のなかで、日本のロックのアーティストとファンの感覚も変わった。国内のロックが発展し、自給自足的に満たされる面が大きくなるにつれ、洋楽を意識する層は減った。ロックのサウンドに日本語の歌がのることに疑問や違和感を覚える人は、今では少数派だろう。洋楽の影響を受けながら日本のポップ・ミュージックを作ってきた過去の積み重ねが、現在の状況を作っている。THE YELLOW MONKEYもそうした先人に数えられるバンドだ。

 吉井和哉は洋楽志向ではあったが、彼がこの国の言葉で歌うメロディの抑揚や響きは、日本の歌謡曲、ニューミュージックの美点を継承してもいた。THE YELLOW MONKEYは、ハード・ロックをベースにした洋楽的演奏の骨太なグルーヴのうえに、昭和の歌謡スターだった沢田研二の系譜にあるような、吉井和哉の艶のあるボーカルがのるところに醍醐味がある。その意味では、とても日本的なバンドでもある。一般的な人気を得たのは、このためだと思う。

 吉井は、THE YELLOW MONKEY再集結の前年にあたる昨年、歌謡曲、演歌、ニューミュージック、ジャパニーズ・ロックのカバー集を2作まとめていた(『ヨシー・ファンクJr. 〜此レガ原点!!〜』『ヨジー・カズボーン〜裏切リノ街〜』)。2作において彼は、洋楽をとりこんで成長してきた日本のポップ・ミュージックのありかたを追体験したといえる。それは、ロックを含めJ-POPと呼ばれる現在の国内音楽の成立過程を、肯定する作業だったようにみえる。

 このため、今回の再集結は、吉井が洋楽に対する自意識に決着をつけ、THE YELLOW MONKEYはTHE YELLOW MONKEYとして日本のロックを鳴らせばいいという境地に達した結果だと、私はとらえている。彼らは再集結後、バンドの王道的サウンドの新曲「ALRIGHT」を発表し、そこでは今の自分たちをあらためて肯定し、再び羽ばたこうとする姿勢が歌われている。

 そして、意識が変わったTHE YELLOW MONKEYはサマーソニックに登場し、海外バンドや、J-POPの成立以後に結成された日本の後輩バンドと対峙する。この構図には、わくわくさせられる。

■円堂都司昭
文芸・音楽評論家。著書に『エンタメ小説進化論』(講談社)、『ディズニーの隣の風景』(原書房)、『ソーシャル化する音楽』(青土社)など。

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