『Music Factory Tokyo』スペシャルインタビュー
STY&今井大介が明かす、音楽作家としての転機 「“R&B不遇の時代”が作風を変えた」
「アーティストをメインに据えつつ、裏方がちゃんとやってる感が出ればいい」(STY)
――2人とも、しっかりと自身の軸を持っているからこそ現在の地位を確立したのだと思うのですが、その中でも核となっているサウンドとは?
今井:自分が歌手だったということもあって、やはりボーカルワークでしょうね。例えば歌謡っぽい曲だと、めちゃくちゃコーラスを積んじゃう。もちろん、シンプルにしたほうがいいものは徹底的に削ぎ落とす。そのときに出る差異や独特のコード感をみんなが「今井さんっぽい」と言ってくれるということは、ある程度自分らしさが出せているんだと思います。
STY:僕はアーティストをしっかりメインに据えつつ、裏方がちゃんとやってる感が出ればいいかなと思っています。そういう意味で日本のポップスがJPOPと呼ばれる以前の、60~70年代の「歌謡曲」の数々の名曲は作詞作曲家・プロデューサーとしてとても勉強になります。80年代前半くらいまでは、裏方が実力のあるポップスターをしっかりサポートしていた時代だと思うので。
今井:歌謡曲は楽曲も歌詞もすごいよね。でも、歌詞に関しては最近、その時代に近くなってきた雰囲気もあります。詩的な表現ってJPOPになってから敬遠されがちで、わかりやすくキャッチ―なものが持て囃されてきたけど、一巡してきたように思えるんですよ。みんな、距離感の近い曲に疲れてきたのかな。
STY:その感覚はあるかもしれないですね。歌詞に関してはフックになるパンチラインをどこかに入れたいというのはあります。例えば、三代目J Soul Brothersさんの『Summer Madness feat. Afrojack』の<そのケータイのカメラじゃきっと 写りはしない景色がこんなにも 世界には溢れてる>という詞は、少し皮肉めいているとも取れるセンテンスなので、ポップスターである彼らに歌っていただくには正直少しためらいはありましたが、僕はこのメッセージをこの時代のこのタイミングに伝える事をとても大切に思ったんです。
今井:でも、実際そこが一番印象に残ったよ。
STY:それは嬉しいですね。
――今井さんとSTYさんは、お互いの手掛ける楽曲についてそれぞれどのような印象を抱いているのでしょうか。
今井:僕がSTY君に思うのは、軸がありながらもどんどん変化していく人だなと。印象が1年ごとにどんどん変わるというか。だからこそ、次に何が来るのかわからないワクワク感があるんです。ASY(DJ AKi STY YUUKi MCによるユニット)でドラムンベースをやったときなんか、本当にびっくりしたんだから。
STY:少女時代のアルバムを気に入ってくれたDJ AKiとの出会いがきっかけでASYというグループをスタートしたので、ドラムンベースは少女時代を手掛けていないとたどり着かなかったですね。僕が大介さんの曲に思うことは、自分の好きな時代のテイストが強い作風なので、安心感がありますね。「ここはコーラスを積んでほしい」というところで絶対にそうなってくれるので、聴いていて「やった!」という気持ちになります(笑)。
今井:STY君から褒められて一番うれしかったのは、SNSでも拡散してくれたBENIの「he is mine」あれはBPM60近くで完全に90sのR&Bを意識して作ったものなんで。
STY:やっぱりそうでしたか! ものすごく90s感があって好みでした。
後編「どこまで発展してもコード感とメロディーありきのものになる気がする」 STYと今井大介が語る、J-POPの“特異点”へ続く