欅坂46が提示する、ポスト「アイドル戦国時代」の戦い方 乃木坂46とも異なるグループ戦略を読む

 ビジュアル的なイメージだけでなく、楽曲に関しても2つのグループの違いはハッキリと出ている。乃木坂46の1stシングル「ぐるぐるカーテン」は、冒頭の“タン、タン、タッツ、タッツ”とゆったり始まるドラムと、イントロのストリングスが象徴的。サビ頭からスタートする構成で、短い時間で鮮烈な印象を残す。一方の「サイレントマジョリティー」は、ピアノのリフレインと力強いアコースティックギターに始まり、サビへ向かって次第に盛り上がっていく構成だ。Aメロ歌い出し、センター平手友梨奈の声は、低く落ち着いている。

欅坂46 『サイレントマジョリティー』

 アイドルユニットがスピード感のある「カッコイイ」タイプの曲をリリースする際には、歪ませたエレキギターのブリッジミュートに頼りがちだ。しかし、この曲はキレのあるアコースティックギターが全編を通してフィーチャーされ、切迫感と緊張感を生み出し、それがアウトロのエレキギターソロをより引き立てている。また、アイドルソングのBメロにありがちな“タン、タタン タン、タタン”という三拍のリズムも、意図して避けられているように感じられる。どうしても曲のスピード感を落としがちなリズムであることを逆手にとり、“タンタンタン、タン タンタンタン、タン”と三連符を入れることで、スピード感を削がずにサビへとテンションを上げることに成功しているのだ。この曲のサビは決して甘くキャッチーなメロディラインというわけではないが、歌のメロディーと、スピーカーの左右で異なるリズムを刻むクラップが新たなグルーヴを生み出していて面白い。

 また、2つのグループの振付の違いも注目だ。乃木坂46のデビューから5thシングルまでの振付を担当した南流石は、その魅力を独自の創作ダンスで強調。6thシングル以降、主に振付を担当しているWARNERは、キャリアを重ねた彼女たちの魅力を引き出し、より高度なダンスでグループのパフォーマンスレベルを高めた。一方、TAKAHIROが担当する欅坂46の振付は、ヒップホップダンスを軸に、全身を使い、グループ全体として表現することが多く、平手が左右に分かれたメンバーの間を割って歩く「モーセの十戒」的な振りもその一例だ。この「サイレントマジョリティー」の世界観を身体で表現すべく、この数カ月の間に「動く/止める」、「強弱/緩急」の基本が叩きこまれたのだろう。もちろん、その完成度には個人差もあるが、デビューカウントダウンライブのダンスブロックでみせた彼女たちのダンスは、観客に驚きと興奮を与えるに十分だった。今後、楽曲だけでなく、ダンスにおいても、他のアイドルとは異なる魅力を見せてくれるだろう。

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