INKT『Re:birth of INKT TOUR2015-2016』インタビュー
INKT率いる田中聖(KOKI)、バンド活動への決意を語る「ポジティブな意味で、一寸先は闇!」
「いまはとにかく、音楽という共通言語で会話が出来るのが楽しい」
ーーKOKIさんは30歳になりましたし、SASSYさん、mACKAzさんもメジャーシーンでバンド活動を経験していることを考えると、このタイミングで新しいバンドを結成すること自体、大きな決断だったのかも。
KOKI:うん、たぶん勇気も必要だったと思います。そういう意味では、フロントマンとしての責任も感じてます。「俺のせいで失敗した」と自分自身も思いたくないし、メンバーに対しても必死で食らいついていかないとなって。そこで生まれる相乗効果もあると思うんですよね。いまのツアーも、マネージャーさん、物販のスタッフさん、メンバーで一緒のバスに乗って移動してるんですよ。「機材もグッズも全部乗せてみんなで九州まで行く」みたいなこともあるんですけど、それもぜんぶ楽しいんですよね。
ーーまったく苦にはならない?
KOKI:青春してるなって思います(笑)。ライブが終わって、みんなで機材をバラして車に詰め込んで。物販コーナーに立ったりもしてるんですけど、要は「バンドマンとして、(現状に対して)どうぶつかっていけるか?」というところだと思うんですよね。いまの音楽シーンはライブ勝負じゃないですか。もちろん盤(CD)も出したいし、それをたくさんの人に聴いてもらえたら嬉しいですけど、大事なのはライブでどれだけカッコいいものが見せられるか、どれだけお客さんに刺さるかというところだと思うので。やり方はいろいろあると思うけど、やっぱりいちばん見せたいのはライブなんですよね。
ーーライブハウスやイベントで勝負していく以外に道はない、と。
KOKI:あとは人と人とのつながりですよね。バンドっていう新しい道を進み始めてから出会った音楽仲間がたくさんいて、対バンをやらせてもらったりしているので。SuGの武瑠くんもそうですね。ライブを見に来てくれて、打ち上げで話をして、「何か一緒にやりたいね」っていう話になって。それが11月に実現したんですけど(11月13日、SuGが主催するライブイベント『SuGフェス 2015』に出演)、そのときもすごく良かったんですよね。人という部分でつながって、次に音楽家の部分でつながれて。そういうことが刺激になるんですよ、やっぱり。武瑠くんの活動を見ていると「あいつ、言ってた通りのことをやってるな」とか「次はこんなおもしろいことをやるのか。負けてられないな」って思うし。
ーー武瑠さんは「SuG=ビジュアル系」というバンドのイメージを脱却しようといろいろなトライを行っていて、それを達成しつつあると思うんですよね。KOKIさんも似たところがあると思うのですが、自分自身の知名度の高さやパブリックイメージに対してはどんなふうに考えていますか? メリット、デメリットの両方があると思いますが…。
KOKI:(INKTに対して)思うことは人それぞれでしょうけど、自分としてはメリット、デメリットみたいな考え方はしてないですね。新しく出来た仲間のなかにも、最初は「どう接していいかわからない」っていう人がいたり、「もちろんバンドマンとして付き合うよ」って言ってくれる人もいて。自分としては「バンドマン1年生として、当然やるべきことをやる」というだけですね。いままで自分が積み上げてきたものを武器にして、それをどうぶつけられるかを考えて…。
ーーかなり強力な武器を持った1年生ですよね。
KOKI:そうですかね?(笑) まあ、いままで恵まれた環境のなかでやってきた部分もありますからね。いまはとにかく、音楽という共通言語で会話が出来るっていうのが楽しいんですよ。最近もSKY-HIのライブをZepp Tokyoで見たり、WHITE ASHの代官山UNITのライブに行かせてもらったりしてるんですけど、すごく刺激になるんですよね。昔は人のライブを見るのが好きじゃなかったんです。負けず嫌い過ぎて、ライブが盛り上がってると途中で帰っちゃったり(笑)。いまは素直に「すげえな」って思うし、ホントに勉強になるなって感じています。それはどのジャンルでも同じですね。映画(『サンブンノイチ』)でご一緒させてもらった窪塚洋介さんの卍LINEもそうだし、自分がいいなと思った音楽やアーティストは、何を見ても何を聴いても勉強になるので。
ーーそういう多方面のつながりも、KOKIさんの武器になるでしょうね。
KOKI:ありがたいですよ、ホントに。いろんな人たちの音楽観を聞けるのも、すごくデカいんです。ロックのなかでも考え方はいろいろだし、ジャンルが違えば、また違う感覚があって。かと思えば「ここは似てるな」って共通点が見つかることもあるっていう。
ーーなるほど。この1年の活動を経て、INKTとしてはどんな音楽を打ち出したいと考えてるんですか?
KOKI:自分たちが掲げているのは、いま風に言うと「どれだけエモいか」というところだと思うんですよね。たとえば2日連続ライブがあったとして、「明日、歌えなくなったとしても、とにかく今日は全力でやろう」とか。バンドに懸けてる感じだったり、攻めてる感じは忘れたくないなって思いますね。僕はボカロも聴く人なんですけど、ああいう音楽のカッコよさもあるじゃないですか。そんななか、生身の人、生身の歌で勝負するにはやっぱりエモさが大事なのかなと。
ーーそういう意識でライブを続けることで、KOKIさんのなかでも変化が生まれてきてるのでは?
KOKI:ふだんから素直にいたいなって思うようになりましたね。それが音楽やパフォーマンスにも出ると思うので。歌詞の作り方もそうですよね。自分が思っていなことを歌詞にしても、聴いてる人には刺さらないとだろうし。たとえばMCの「ありがとう」というひと言も、本気で感謝の気持ちを持っていないと伝わらないと思うんですよ。
ーーロックバンドのボーカリストは、生き方、考え方のすべてが表現につながるところがありますからね。
KOKI:そうですよね。いままで出会ったバンドのボーカリストも、素直な人が多いんですよ。いい意味で中2感があるというか、若い頃からブレない気持ちを持っていて。楽器隊の人にすると「ボーカリストってめんどくさい」って思うみたいですけど(笑)、そういう部分が見えるのも大事なのかなって。
ーーKOKIさんはエモさを持ちつつ、バンド全体を俯瞰しているような印象もあります。
KOKI:やっぱり、 INKTを大きくしたいですからね。そのためにはいろんなことを考えなくちゃいけないし、熱い気持ちを持ったまま、もう一段大人になっていかないとなって。たとえばライブ中も「ここは自分が前に出たほうがいいな」というタイミングもあるし、「ここは自分じゃなくて、ギターが出たほうがカッコいい」ということもあるんですよ
。誰かひとりだけがカッコ良く見えても、バンドとしては意味がないなって思うので。
ーー1月4日には渋谷CLUB QUATTROのワンマンライブも行われますが、2016年の活動はどうなりそうですか?
KOKI:フットワーク軽く、いろんなことをやりたいですね。ワンマンも増やしたいし、アウェイの場所にもどんどん挑戦して攻めの年の出来たらなって。観たことがない景色がまだまだあるし、探検家の気持ちで進んでいきたいです(笑)。もちろん、音源も作りたいですね。既に曲は作り始めてるんですけど、ライブで力を付けて、それを曲に落とし込んでいくのがいいのかなと。今回のツアーで初めてアコースティック。コーナーをやってるんですけど、意外にハマりがいいんですよ。そこから「音源にもそういうテイストを入れてもいいね」っていう話になったり。
ーー音楽の幅も広がっていきそうですね。
KOKI:来年の今頃、どんな感覚でライブをやったり曲を作ったりしてるのか、自分たちも楽しみですね。明日も見えない状態なんですけど、とにかく楽しいので。ポジティブな意味で、一寸先は闇です(笑)。
(取材・文=森朋之/撮影=竹内洋平)
■ライブ情報
INKT『Re:birth of INKT TOUR2015-2016』FINAL
日時:1月4日(月)OPEN 16:30/START 17:00
場所:東京・渋谷CLUB QUATTRO
※お問い合わせ:ディスクガレージ(050-5533-0888)
チケット発売中