sasakure.UKが明かす、創作プロセスとその核心「“次の世代に残る音”を選んで使っている」

sasakure.UKが明かす、創作プロセスとその核心

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「チープなサウンドに『懐かしさ』『切なさ』を感じる」

――曲作りは独学というのは本当ですか?

sasakure.UK:PCをはじめDAWの使い方や音楽の基礎的な知識などは色々教わった部分もありま すが、メロディやアレンジなど構成に関わる部分はほぼ独学に近いですね。作り始めた頃は、「いいな」と思った楽曲をリストアップして分析していました。そうすると結構、共通点が見つかるんですよ。「コードがこう動くと自分は『いい』って思うんだな」と、段々わかってくる。それを耳コピしながら自分のものにしていきました。

――曲作りのための機材として、最初に導入したのは?

sasakure.UK:YAMAHAの『QY-100』です。オモチャ感覚で曲を作れるところが気に入りました。今でいうと、ゲームやアプリで作曲するような感覚ですよね。昔はそういうものは少なかったし、パソコンも苦手だったので、本当に重宝ました。今も打ち込みが好きなのは、間違いなく『QY-100』のおかげです。実は、今作にも『QY-100』の音色を混ぜたりしているんですよ。

――それは大きな特徴といえますね。sasakure.UKさんにとって、電子音の魅力はどんなところにあるのでしょうか。

sasakure.UK:たくさんありますが、特に感じるのが、音色の持つあたたかみでしょうか。自分が多感だった頃に聴いていたのが80年代〜90年代のサウンドだったので、それが刷り込まれているというか。例えばチップチューンなんかを聴いても、ビット数が低く素朴でチープなサウンドの中に「懐かしさ」や「切なさ」を強く感じるんです。

――なるほど。現在は、どのような機材環境で制作をおこなっていますか?

sasakure.UK:『QY-100』からDTMに移って、Macと『Digital Performer』(MOTU)を今もメインで使っています。MIDIに強いので、打ち込みやすくオートメーションも書きやすいところが自分に合っていますね。オーディオインターフェースは『Fireface 800』(RME)で、音源は基本ソフトシンセを使いつつ、アナログシンセを混ぜるということを結構やっています。今作でも、『MiniBrute』(アートリア)や『Sub Phatty』(moog)などを使いました。サウンド的には今やソフトシンセもハードシンセもそれほど変わらないのですが、やっぱり自分でツマミを動かして音を作るのは、マウスでいじるのと違ってニュアンスや挙動が変わっていくんですよね。それが全体のミックスバランスに大きく影響してきたりもします。

――実際の曲作りはどのように手順を踏んでいるのでしょう。

sasakure.UK:僕はサビから作ることが多いです。一番聴かせたいところを最初に作ったほうが、楽曲の構成を作りやすいんですよ。浮かんでくるタイミングは色々あるんですけど、街を歩いているときにパッと浮かんでくることが多くて。そういうときは、急いでボイスメモに吹き込んだり、ケータイに音符を書き込んだりしています。リラックスしているときのほうが、いいメロディが浮かぶことが多いですね。アレンジも、その時点で結構決まっています。それをソフト上にトレースしていくというか。まずはジャンルとBPMを設定し、そこから音色を考えていきます。

――本作でいえば、「ピンボケ世怪平和」や「閃鋼のブリューナク」のような、変拍子や転調を多用するアレンジのセンスは、どのように培われてきましたか?

sasakure.UK:やはり男声合唱の曲や、当時よく聴いていたゲームミュージックの影響が大きいです。例えばジャズっぽい難解なコード展開や転調、変拍子などは、ゲームの中の激しい戦闘シーンで流れるBGMにインスパイアされました(笑)。いろんなゲーム音楽を聴いてきましたが、中でもスクエアエニックス社のソフト『クロノ・トリガー』や『サガ フロンティア』には大きな影響を受けています。『クロノ・トリガー』のメインコンポーザー、光田康典さんのメロディセンスがすごく好きなんですよね。

――最新のダンスミュージックからの影響はありますか?

sasakure.UK:もちろん最新の音の傾向を分析して、取り入れたい要素は積極的に取り入れています。一過性で流行ってすぐ消えてしまう音というよりは、そのシーン全体で“次の世代に残ってくれそうな音”を選んで使いますね。長く音楽を作っていると、何年経っても色あせないフレーズや音色というのが、感覚でわかってくるんですよ。そういう音を使って、10年、20年たっても「ああ、色あせない曲だな」と思えるような音楽を作りたいんです。普遍的でタイムレスな音楽というか。今作のアルバムも、日本を舞台にしつつ、「完全な日本」ではなくて、中東やインドの楽器を取り入れ、オリエンタルな空気感を出すなど、その辺のバランス感覚は本作でも大切にしました。

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