SMAP・香取慎吾はなぜ“キャラと素”の区別がないのか テレビ出演歴から人間的魅力を探る

 一般的なイメージとして強いのは、世代や性別を問わず親しまれる明るい「慎吾ちゃん」的な部分だろう。それを決定づけたのは、中居と組んだ『サタ☆スマ』(フジテレビ系、1998年開始)のなかでの「慎吾ママ」である。夜7時台というファミリー向けの時間帯での人気は、現在の『おじゃMAP!!』(フジテレビ系)まで受け継がれている。

 「慎吾ママ」と言えば、そのコスプレにも目が行く。『SMAP×SMAP』で毎回披露される「おいしいコスプレ」もそうだが、ドラマや映画などでも、コスプレ色の強い役柄が多い。『新撰組!』、『西遊記』、『こちら葛飾区亀有公園前派出所』、『座頭市 THE LAST』、そして最新映画主演作の『ギャラクシー街道』と、作品のテイストや現代劇、時代劇に関わりなく常に何かの扮装をしていると言っても過言ではないほどだ。

 もちろん、ファンの人たちは、それだけではないと言いたくなるに違いない。影を背負い、ダークな部分を持った役どころも多く、むしろそこに香取慎吾の魅力を感じる人も少なくないだろう。『沙粧妙子-最後の事件-』での犯人役、『未成年』での知的障害者の役、『ドク』でのベトナム人青年役、『薔薇のない花屋』の男手ひとつで娘を育てる花屋役など、いずれも「慎吾ちゃん」の明るいイメージとはギャップのあるものだ。

 だが、そこに香取慎吾という人間の素の部分が垣間見えるかというとあまりそう感じさせない。やはりチャックは見つからない。いつもコスプレをしている感じがありながら、チャックがないという矛盾。そこに香取慎吾の香取慎吾たるゆえんがあるのだろう。そう考えると、香取のドラマ初主演作が『透明人間』(日本テレビ系)であったこともちょっと暗示的だ。透明人間という役柄自体、多彩なコスプレ的仕事を一つひとつ完璧にこなしてきた彼のキャリアの原点を象徴にしているように思えてくるからだ。

 この『透明人間』の第1回放送は、1996年の4月である。そう、この連載でも前にふれたように、ちょうど『SMAP×SMAP』と『ロングバケーション』がスタートしたのと同じタイミングだった。香取は、例えば「BISTRO SMAP」での料理経験がなければ「慎吾ママ」もなかったというように、歌、芝居、バラエティ、MCと自分の仕事の振り幅はすべて『SMAP×SMAP』から得たものだと語っている(『SMAP×SMAP COMPLETE BOOK VOL.5』)。そしてそのとき、『ロングバケーション』と同時に『透明人間』が始まった。その対比で言えば、香取は、木村拓哉の「カッコよさ」に対し、さまざまなコスプレを演じる「商品」としての自分自身に磨きをかけていく覚悟を決めることで、プロフェッショナルとしての自らの生きる道を切り開いていったのではあるまいか。

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