3rdアルバム『娑婆ラバ』リリースインタビュー

パスピエが提示する、リズムの“新モード”とは?「『四つ打ちの中で新たな解釈を生み出さないと』と危機感が生まれた」

 

「世に出ている音楽をパッと分類できるものって、ビートと歌声だと思う」(成田)

――「裏の裏」については、前回のインタビューで話を伺えなかった露崎さん、やおさん、三澤さんにプレイング面でのこだわりを訊きたいです。

やお:この曲は、言葉もすごく詰まっていて展開も速いので、スピード感を大事にしました。フレーズも曲に素直に従って、流れに合わせてやった結果、おもしろいことができたと思います。気付く人だけ気付けばいいという隠し要素を盛り込みつつ、格好良く動くベースとどう絡むかを考えて作りました。

露崎:16分音符もいっぱいあって、音がだいぶ埋まっているので、ベースらしい音質的な部分でちゃんとそのアンサンブルを支えるように意識しました。Aメロは騒がしいですが、サビ辺りでは8ビートの弾き方で緩急をつけていて、対比をうまく表現できたのではないかなと思います。

――続く「アンサー」は、アルバムにおいて最もポップな進行・メロディーが耳に残る楽曲です。

成田:この曲は一番最後に出来た曲ですね。カロリーの高い曲が多くなったアルバムにおいて、頭のほうにある意味薬味みたいなものが作れたらと思って。「アンサー」に関しては、歌詞が乗ってかなり化けました。それに伴って聴かせ方もミックスも変わって、アルバムの核を担う曲になりましたね。

――それだけ大胡田さんの歌詞が素晴らしいものだったということですか?

成田:そうですね。

大胡田:恥ずかしい(笑)。この曲は成田から「最初に<ねぇ、アンサー>という言葉でサビを始めて欲しい」と言われ、そこから広げていったんです。歌詞には「いつも何かしら探し物をしているよなぁ」という気持ちをストレートに書きました。

成田:本人の意図は別として、良い感じで目的語がないんです。パスピエの楽曲って、これまで単語に重きを置いている曲が多いのですが、それが多ければ多いほど、名詞に対するイメージが強くなってしまいます。「アンサー」に関しては、そうしていないからこそ意図せず共感しやすいし、バンドサウンドとして感動的に・神妙に作ればそれぞれ音の行った方向に聴こえうる楽曲だったので、明るい曲調に持っていきました。

――ポップで中軸を担う、四番バッターのような「アンサー」があって、次はアーバンでグル―ヴィーな「蜘蛛の糸」。この曲調ってこれまでのパスピエには無かった、ある意味新機軸といえるものになっていると思うのですがどうでしょう?

成田:この曲は、僕らなりにEDMを新しく解釈したつもりで。フレーズ自体は洋楽っぽいですが、どんどんサビが転調してくような作りはものすごく日本的なんです。メロディ自体も和モノっぽいフレーズが多い曲で。今って世に出ている音楽をパッと分類できるものって、僕はビートと歌声だと思っているんです。だからといって複雑なビートをやればいいというわけではなく、四つ打ちに変わり得る新たなものがまだ見つかってないだけなのかなって。だから「四つ打ちの中で新たな解釈を生み出していかないと」という危機感が生まれてこの曲を作り、アルバムのリードトラックである「つくり囃子」が生まれたんです。

――「つくり囃子」の話はじっくり後で伺うとして、次は「術中ハック」ですね。この曲は三澤さんが間奏のギターで暴れ倒しています。

三澤:デモを貰ったときに、この曲だけちょっと色が違うなと感じたので、6弦のバリトンギターを手に取りました。それを使ってギターソロの部分でメタル・ブログレッシヴの要素を取り入れたリフを弾いたり、音を重ねたりしました。音源には、何度か録ったなかで、勢いのある最初のテイクが採用されました。『娑婆ラバ』はそういう音が多く採用された印象があります。雰囲気重視というか。

露崎:譜面に出来ない感じね。

三澤:そうそう、“再現不可能”なんです(笑)。ライブでは違う形で表現しようかと……。

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