乃木坂46『真夏の全国ツアー』で見えたグループの成長 セットリストとパフォーマンスから読む

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演らなかった曲が教えてくれること

 前述した通り、今回のセットリストには「乃木坂らしさ」を探るヒントが隠されていたが、実は披露されなかった曲から感じ取れることもある。

 今回披露されなかった曲の中には、カップリング投票で1位を獲得した「他の星から」のほか、楽曲の人気も高くライブでも盛り上がる「せっかちなかたつむり」や「あらかじめ語られるロマンス」も含まれている。実は今回のライブではユニット曲がほとんど披露されていない。披露されたものも、最新シングルのカップリングである「魚たちのLOVE SONG」と「無表情」くらいなもので、「ダンケシェーン」は全員での披露だった。

 その分、今回は全体的にはライブを盛り上げるものや、ステージ効果を使うための楽曲、いわゆる“煽り曲”が多かったように感じるのだ。煽り曲では振り付けに縛られること無く、ステージを広く自由に使うことができ、トロッコやフロートを使ってファンとの距離を縮めることができる。その反面、グループ全体でしっかりと盛り上げなければ、ファンのリアクションも中途半端になってしまったり、個々のメンバーのパフォーマンス力に左右される部分が大きい。

 乃木坂46がAKB48グループと比較される際、これら“煽り曲”の弱さを指摘されることが度々あり、グループとしてもこの部分は生駒に頼りがちになることが少なくなかった。しかし、今回はこの1年間での成長を象徴するように、四方八方に散ったメンバーが客席を盛り上げ、3万2千人を一つにした。また、これまでカメラに抜かれる比率は福神メンバーが圧倒的に高かったのだが、今回は曲のキメにあたる部分で、アンダーメンバーや2期生がカメラを独占することが増えた。実際、誰を抜いても戸惑うことなく思い思いに楽しそうなパフォーマンスをみせてくれたことが、この成果を表しているだろう。

 ユニット曲を減らし、煽り曲を増やしたのは、今回のツアーで「グループ全体で見せる」ことに重きを置いたからではないか。2年前、ライブの際にグループを引っ張っていたのは、当時5作でセンターを務めた生駒里奈だった。昨年の『アンダーライブ』を通し、それぞれのパフォーマンスは向上したものの、選抜メンバーはライブを多く経験するアンダーに対して焦りを感じ、アンダーは選抜に負けないと闘志を燃やし、妙な摩擦が生まれていたようにみえた。そして紅白に出られなかった2014年が明け、新たな乃木坂46の始動と共に彼女たちは「グループ全体」について真剣に向き合わなければならなくなった。そうしなければ、本当の意味で前に進むことができないところまで来てしまったからだ。

 AKB48のライバルグループとして誕生した彼女たちが「紅白出場」という大きな目標に向かうとき、彼女たちは本当の意味でグループとして一つにならなければならなかった。今やAKB48に肩を並べようとする勢いの彼女たちは、一つのアイドルグループとしての注目度を増しているし、さらに欅坂46が誕生したことで、彼女たちは自然と「自分たちは何者なのか? 『乃木坂らしさ』とは何なのか?」 という命題にぶつかった。これまで1stアルバム『透明な色』のリリース、『乃木坂って、どこ?』の映像化や、『悲しみの忘れ方~Documentary of 乃木坂46~』の製作はグループの過去を整理し、見つめ直す役割を果たしていた。そしてこのツアーは、新たな乃木坂46として自分たちを表現する場としての役割を担っていたように思えるし、それが、今回のセットリストであり、グループ全体でのパフォーマンス力の増加だったと感じる。あえてデビュー曲「ぐるぐるカーテン」を披露しなかったのも、成長した自分たちの姿を強調するためだったのかもしれない。

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