「宗像明将の現場批評〜Particular Sight Seeing」第19回『6めるモ!~ゆるめるモ!もねちー復帰祭~』
ゆるめるモ!にもっと批評の言葉をーーもね&ちーぼう復活ライブを考察
YouTubeには、ちょうどその1週間前である8月16日の赤坂BLITZでの「Only You」のライブ映像がある。この日は、神聖かまってちゃんとのツーマンライブで、ゆるめるモ!は箱庭の室内楽のハシダカズマが率いる11人編成のバンドを従えていた。ところが、8月23日のライブは赤坂BLITZの広いステージに4人のみ。オケだけで歌い、振り付けもないのだ。歌い出しのときには、早くもようなぴとあのが柵に立っていたし、そのままあのはフロアへダイブしていった。あの日の4人は、逆境でこそ発揮される気迫に満ちていた。「Only You」のステージを見ながら私はただ感動していた。
ダイブなどフィジカルな表現をするあの、慎重な言い回しが目立つものの自分の意見をTwitterでも表明するしふぉんとようなぴ。それに比べて、けちょんは4人編成のときのステージでも落ち着いているように見えたが、その彼女もまた「いつも以上に不安で押し潰されそうだったもん」とブログに記していた(https://ameblo.jp/ylmlm-kei/entry-12067414914.html)。4人編成の最後の日の「Only You」は、逃げることさえも認められているゆるめるモ!というグループだからこそ生み出せた強さが押し出されていたのかもしれない。
アンコールは「manual of 東京 girl 現代史」。狭いライブハウスでのファンのノリは、赤坂BLITZよりもはるかに泥臭く、2014年前半の現場を連想した。そして、この翌日の『@JAM EXPO2015』では、ゆるめるモ!は横浜アリーナのメインステージに立つことになる。たったの1日違いでライブをする空間の差が大きすぎて面白い。
佐々木敦は「逃げろ!!」について言及したときに浅田彰の名を出した(https://twitter.com/sasakiatsushi/status/636826714912387072)。私は、「逃げろ!!」という曲名はももいろクローバーの「走れ!」を念頭に置いているのだろうと思っていたが、その命令形のニュアンスには宮台真司の「終わりなき日常を生きろ」の命令形をも連想した。
シンプルなコンセプトのグループのようでいて、個性がバラバラの生身の人間がいるからこそ、複雑なコンテクストを内包しているゆるめるモ!というグループについては、もっと言葉が費やされるべきなのではないだろうか。ライブレポートとその写真の供給が多いゆるめるモ!は、結果的にあののヴィジュアルが注目されることが多くなった。しかし、そこで話が終わりがちなのは、ゆるめるモ!が批評される機会が少なかったがゆえの不幸だとも感じる。ゆるめるモ!がZepp DiverCity Tokyoに向けて加速していくならば、それに拮抗しうる批評の言葉もまた必要だろう。そう痛感したのが、ゆるめるモ!が6人編成に戻った『6めるモ!~ゆるめるモ!もねちー復帰祭~』でのことだった。ゆるめるモ!は、音楽面についても、個々のメンバーについても、グループ全体についても、まだまだ語るべきことがあるのだから。
■宗像明将
1972年生まれ。「MUSIC MAGAZINE」「レコード・コレクターズ」などで、はっぴいえんど以降の日本のロックやポップス、ビーチ・ボーイズの流れをくむ欧米のロックやポップス、ワールドミュージックや民俗音楽について執筆する音楽評論家。近年は時流に押され、趣味の範囲にしておきたかったアイドルに関しての原稿執筆も多い。