宇野維正が新代田FEVER公演を分析

長澤知之と小山田壮平の「AL」は新しいロックンロールを鳴らしたーー4人編成初のライブをレポート

写真=杉田真

 7月30日、新代田FEVERに超満員のオーディエンスを集めて開催された「AL×谷口貴洋×折坂悠太 LIVE」。その日、3番目にステージに上がったALは、その翌日の7月31日に次のような発表をした。

 数年前よりプライベートプロジェクト「AL」として、楽曲制作やライブを断続的に行っていたシンガーソングライター小山田壮平と長澤知之が、昨日7月30日(木)に新代田FEVERで行われたバンド編成でのライブにより、正式にバンドとして活動する事が決定しましたので、ここに発表致します。ALの正式メンバーは以下の4人となります。

小山田壮平(Vo、Gt)/長澤知之(Vo、Gt)/藤原寛(Ba、Cho)/後藤大樹(Dr、Cho)

 つまり、この日のALのライブはバンド活動正式スタート発表前の「最後のライブ」であり、オーディエンスの前でバンドとしての産声をあげた貴重なファーストライブとなったわけだ。

写真=杉田真

 もともと、活動開始当時はまだandymoriとして活動中だった小山田壮平とソロアーティストである長澤知之によるアコースティック・ユニットであったAL。今年3月の渋谷B.Y.Gでは、そんなALのライブが初めてバンド編成で行われ、そのベーシストが元andymori藤原寛であったことが大きなサプライズとして受け止められたわけだが、この日のステージでドラマーを務めたのはなんと後藤大樹(ステージに登場する前から、あのスネアが極端に低い位置にセッティングしたドラムセットでわかる人にはわかっただろうけど)。つまり、結果的にこれで、ALのメンバー編成は第1期andymoriの3人のメンバーに長澤知之が加わったかたちになる。ここで重要なのはあくまでも「結果的に」ということ。これまでのライブからも、伝え聞いた話からも、ALがドラマーをめぐって様々な試行錯誤を繰り返してきたことは間違いない。今年4月に恵比寿LIQUIDROOMで開催された「Sparkling Records」のイベントにおいてステージ上で共演したのを経て、正式に後藤が加入することになったのは、小山田と長澤が活動を本格的にスタートさせる過程でALを「バンド」としてとらえるようになったこと、そしてバンドに最終的に命を吹き込むのはドラムであることから、いわば必然的な帰着点だったと言えるだろう。

 過去にステージで演奏された曲、そしてこの日初めてステージで演奏された曲、合わせて全13曲が演奏されたこの日。実際、後藤のドラムはALのバンドサウンドに見違えるような躍動感を与えていた。小山田と長澤という、その世代を代表する天才的ソングライターを2人も抱えているALという特異なバンド。当然のように、そのメロディと詩情はこれまでも至高の調べをたたえてきたのだが、どちらがメインのボーカルをとるかという以前に、「あ、このメロディはまさに小山田壮平だなぁ」とか「お、このコード進行と展開は長澤知之だなぁ」とか、いわゆるソングライターの手癖のようなものを感じずにはいられなかったし、むしろ、それを想像するのがALの音楽を体験する楽しみの一つであった。でも、この日のステージ上にいたのは「天才ソングライター2人とそれをサポートする優れたリズム隊」などではまったくなく、「バンド」としか言いようのない4人だった。しかも、ただの「バンド」ではない。完全な「ロックンロール・バンド」だった。

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