Acid Black Cherry『L—エルー』はなぜ大きな支持を得たのか コンセプチュアルな創作手法を読み解く

 続けて同氏は、もちろんそれは最新作『L-エル-』にも表れていると語る。

「この物語の主人公であるエルに語りかける、エルが生まれ育った街“La vi an rose”に住む絵描きの少年オヴェスの心情を描いた5曲目「L—エルー」と、物語のすべてを振り返る「Loves」は、両曲とも3拍子の柔らかな曲調で、跳ね感のあるポップなリズムで構成され、初めての恋を描く「7 colors」とともに、初めてAcid Black Cherryの音に触れるという人や、ロックというジャンルに馴染みがなく抵抗があるという人への“入り口”になるであろう楽曲たちとなるでしょう。歌謡曲を意識したという『眠れぬ夜』も、“とっかかり曲”として、是非ともお勧めしたいです」

 一方、Acid Black Cherryの本質であるヘヴィ・ロックな部分も、様々な形で提示されていると武市氏は述べる。

「オヴェスの台詞とともにアルバムの始まりを演出する『Round & Round』、エルの波乱の人生を浮かび上がらせる『liar or LIAR?』に『エストエム』という冒頭3曲は、yasu自身の音楽ルーツを彷彿させるマイナー感の強いヘヴィ・ロックが並べられており、今作が純粋なロック・アルバムであることを証明する幕開けといえるでしょう。また、スラップ奏法を前面に押し出し、何度も何度も酷く傷つくエルの人生を演出する『Greed Greed Greed』や、アラビア音階を用いて、愛することに疲れた女性が、投げやりに夢魔(INCUBUS)に愛を求める『INCUBUS』、音を立てて崩れ落ちるエルの願いをワンコードのハードナンバーで表現した『versus G』など、従来のファンやコアなロックファンを唸らせる楽曲も収録されています」

 Acid Black Cherryと同じように、ポップシーンで支持を得てきたV系ロックバンドには、X JAPANやLUNA SEAをはじめ、後のバンドに多大なる影響を与えた先達たちがいる。もちろん売り上げの実数では及ばないものの、ポップシーンへの浸透具合やその活躍ぶりを見ていると、彼らと同じ領域に、yasuはすでに到達しているのかもしれない。

 なお、Acid Black Cherry は現在、『ABC Dream CUP 2015 LOVE 』と題し、国内最大級・80,000人規模でのフリーライブツアーを開催中で、8月1日に大阪・舞洲で最終公演を行う予定。リアルサウンドでは、7月25日公演の模様を後日掲載することが決定している。

(文=向原康太)

■Acid Black Cherry 4th ALBUM「L-エル-」Special Site
http://acidblackcherry-album-l.com/

■オフィシャルサイト
http://www.acidblackcherry.net/

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