3rdフルアルバム『WINDOW』インタビュー
Drop's・中野ミホが語る、バンドの“今”とこれから 「いい意味で新しいスタートが切れる」
「5人で“いま”の音をうまく形にできた」
ーー「ビート」の「明日 なにを見つめているだろう/絶え間なく 消えて また 生まれる」という歌詞も印象に残りました。
中野:「未来」と同じくらいの時期に書いた歌詞ですね。夜、ひとりで歩いているときにイメージが生まれたんですけど——その頃、インディーズ時代からいっしょにレコーディングしていたエンジニアの方が亡くなったんです。そのことはすごくショックだったし、歌詞の内容も変わったんですよね。
ーーそうだったんですね…。いま中野さんは、バンドや自分の“明日”、つまり将来像をどんなふうに描いていますか?
中野:たとえば「未来」で歌っていることはかなり漠然としていて、“10年後、こうなっていたい”という具体的なことというよりも、ふと“未来はどうなんだろうな”って思ってる感じなんですよ。もちろん、良くなっていてほしいなという願いはありますけど…。“ここからが未来です”って線引きがあるわけではなくて、毎日が続いていって、気が付いたら年を取っていたという感じなのかなって(笑)。もちろん音楽はやり続けたいですけどね。歌を歌うのは好きだし、楽しいから。興味があることはいっぱいあるけど、音楽を離れることはないだろうなって。…まあ、わからないですけどね(笑)。ずっと変わっていくんだろうなとも思うので。
ーー好きな音楽も変わらないでしょ?
中野:そうですね。誰かに“いいよ”って教えてもらったり、気になったものも聴くようにしてるから、ちょっとずつ幅は広がってると思うんですけど、1回好きになるとずっと同じものを聴いちゃうんですよ。“夜だったらコレ”みたいに何となく決まってたり。
ーーちなみに最近、夜はどんな音楽を聴いてるんですか?
中野:トム・ウェイツとか。あとはニール・ヤングとか、ボブ・ディランの新しいアルバムもよく聴いてますね。『シャドウズ・イン・ザ・ナイト』というタイトルなんですけど、ずっとオフビートな感じで、夜に聴くとすごくいいんですよ。
ーー相変わらず渋いリスナーですね〜。そういう音楽からの影響をDrop'sの作品として表現するためのスキルもさらに向上してるんじゃないですか?
中野:古い音楽は好きですけど、真似しても同じにはならないし、“いま”の感じで鳴らしたほうがいいですからね。プロデューサーやギターテックの方、エンジニアの方もやっぱり古い音楽が好きだし、そういう音に近づくこともあるんですけど、ときどきこちらから“ギターはもう少し新しい感じの音でお願いします”みたいなこと言うこともあるんですよ。私もぜんぜん詳しくないから、偉そうなことは言えないんですけどね。でも、今回のアルバムは5人で“いま”の音をうまく形にできたんじゃないかなって。
ーーライブに対するスタンスについてはどうですか?
中野:少しずつ楽しめるようになってきたかもしれないですね。お客さんといっしょにシンガロングできるような曲とかも作って、コール&レスポンスする場面もあったり。
ーー今回のアルバムでいうと1曲目の「NANANA FLAG」がそうですね。
中野:そうですね。いっしょに歌えたりするとお客さんも楽しそうだし、そうするとこっちも上がるし。あんまり煽ったりはしないんですけどね、私は。
ーーあえて煽らないんですか?
中野:苦手っていうのもありますね。やれば盛り上がるんだろうけど、そういうことをやる気にならない(笑)。まずは自分らが好き勝手に楽しんで、それを見て楽しんでもらえるのがいちばんいいかなって。もちろん、メンバー各々“魅せる演奏”というのも考えているんですけど、淡々と演奏するだけっていうのもカッコいいかなって。