市川哲史の「すべての音楽はリスナーのもの」第21回

フランク・ザッパの知られざる“変態伝説”ーー市川哲史が綴る親子ザッパ録

 先月中旬、2兆円超の最終利益をあげる日本のトップ企業・トヨタ自動車で初の女性役員で、しかも米国人のジュリー・ハンプシャー常務役員が逮捕された。

 逮捕容疑は、医療用麻薬のオキシコドンを郵送で輸入した麻薬取締法違反。マイケル・ジャクソンも依存症だったほどの、モルヒネ超えの鎮痛剤らしい。

 言うまでもないが、彼女が有罪だろうが無罪だろうが、背景に何があったのかとか無論どうでもいい。結局、起訴猶予処分で終わったけども関係ない。私が惹かれたのは、事件を報じた『週刊文春』7月2日号掲載記事の以下の部分なのだ。

「彼女はジミ・ヘンドリックスのファン。また、ドラッグ文化の旗手であるハンター・トンプソンの名言をリツイートしている。彼女が住んでいたロスのマンハッタン・ビーチはサーファーにとっての憧れの海であり、西海岸のセレブには、ドラッグなどのヒッピー文化に理解がある人も多いのです」(ニューヨーク在住の日本人記者)

 他にも、ツイッターのプロフィールに載せているのはキャサリン・ヘップバーンの「全てのルールに従っていたら、全然愉しくない」という言葉――とかいかにもな情報たちが並べられていて、可笑しい。

 未だに世間のイメージは、<ジミヘン・ドラッグ・ヒッピー文化>の三題噺なのか。まあ映画『JIMI:栄光への軌跡』が今春公開されたりで旬なのかもしれないが、そもそもジミヘンはドラッガーだったっけか。1970年に27歳で逝った死因は、酒とバルビツール酸系睡眠薬を併用した睡眠中に、嘔吐による窒息死。

 まああの時代のロックだからサイケデリックとLSDが表裏一体ではあるけれど、ジミヘンはマリファナ程度でコカインなど注射系ヘヴィー・ドラッグは一切無縁だったという。ジミヘンパパによれば、「ジミは子供の頃から注射が大嫌いだったから」。

 米国産親馬鹿。

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