柴 那典「フェス文化論」(『SATANIC CARNIVAL ’15』特別編)

怒髪天・増子 × 10-FEET・TAKUMA × G-FREAK FACTORY・茂木、これからのフェス文化を語る

TAKUMA「AIR JAMは若者の人生を直接変えることに結びついたカルチャーだった」

TAKUMA

―――日本の今のフェス文化のスタート地点を考えると、1997年になるんですよね。そこはフジロックが始まった年でもあり、AIR JAMが始まった年でもある。

茂木:自分としては、自分でフェスをやればやるほど、AIR JAMの1回目のすごさというのを感じますね。仕掛けもなかったし、ネットもなかった。仲間と一緒になってやっちゃおうぜというような立ち上がり方を、あの時代に見せることができた。あれは事件だったと思うんです。

TAKUMA:すごいよな。

増子:あれは絶対に計算してできることじゃないからね。

――みなさんはAIR JAMは現場で体験していましたか?

茂木:僕はいました。ベイサイドスクエアで地面が揺れるというのを初めて感じましたね。97年ですね。

――BRAHMANのTOSHI-LOWさんとHUSKING BEEの磯部さんの対談でも言っていたんですが、磯部さんが最初のAIR JAMに出た時に「俺とみんなは同じだから、頑張ってたらこんな風になれる」と言っていたそうなんです。そういう、ステージとオーディエンスが地続きな感覚は、パンクやラウドロックのシーンにおいて脈々と受け継がれているものなんじゃないかと思うんですが、どうでしょう?

TAKUMA:AIR JAMに関しては、当時地上波でお茶の間に流れていたわけではないけど、すべての若者が知っているくらいのムーブメントだったし、ロックをそんなに好きじゃないような子らでも知っている時代だったんですよね。ロックに興味ない人も知っていたというのは奇跡的なことで。地上波のテレビに出てるような芸能人とかスター、俳優さん、歌手、これはいつの時代もいて、そこにみんな憧れます。でも、その人になりたいと思った時に、家で歌ったり演技の真似はできるけれども、やっぱり具体的になろうと思ったら、スタート地点はかなり特化した場所にしかない。テレビはお茶の間の人にとってはすごい遠い場所ですからね。でもAIR JAMは、そうじゃなかった。

――そうですよね。

TAKUMA:若者が見る雑誌に常に情報が載っていて、しかもその雑誌の中には地方の服屋さんとかスケートショップの情報もあって。どのショップにどのバンドの人が出入りしていたりとかもわかったから、そういうお店に行って、その人が身に着けている服を選んで買って。バンドはできないけど、あの人が着ている服を着て俺もそのカルチャーの一員になれるというような、そんな入り口もあった。ストリートのスケートボードとか洋服とか、そういうカルチャーともAIR JAMは連動していたから、身近な店にもAIR JAMと関連するところがあって、そこに行ったら「俺、TOSHI-LOWに会ったことあるよ」みたいな人がどこの街に行ってもいたと思うんですよ。バンドは全国をツアーしてるから。芸能人と関連性のある人に会えたりする環境ってあまりないと思うんですよね。そういう意味でも「すぐここでライブできるんだよ」と言ったのは、本当にリアリティのあるものだし、俺もそこを目指してバンドをやろうという子たちが、現実味のある夢として、それを目標にバンドやったと思うんです。あるいは服屋になろうと思った子もいるだろうし。若者の人生を直接変えることに結びついたカルチャーやなと思いますね。

――怒髪天、10-FEET、G-FREAK FACTORYの3バンドは今回「SATANIC CARNIVAL」に出演します。こちらはPIZZA OF DEATHが昨年に立ち上げたフェスですが、TAKUMAさんは昨年に出演してどんな印象がありましたか?

TAKUMA:SATANIC CARNIVALの名前、フェスの存在というのは、AIR JAMに比べたらまだ浸透していなかったと思うんです。それに、ラインナップがこうだからとか、というよりも、PIZZA OF DEATHというレーベルがやるフェスだから行ってみようと思った子たちの方が多いんじゃないかと思います。やっぱりこだわりと共にロックを伝えて、その面白さを発信してきた横山健さんがやってるレーベルだから。あとは、クラスでもちょっとロックに詳しい男の子や女の子を見て、「あいつが行ってるところに行ったら面白いもんに出会えるかも」って集まってる子も多かったと思う。こういう理由も健全で、意味があると思うんですよ。こういうことから少しずつカルチャーというものが地下から発信されていくと思うんで。そういう子が集まってるような雰囲気はありました。

――怒髪天、G-FREAK FACTORYは今回が初出場となりますが、いかがでしょうか?

茂木:僕以外のメンバーは去年見に行ってるんですけど、とにかく横山健さん、Hi-STANDARDというバンドは、自分がバンドをするきっかけになった人ですからね。その人の前で自分に何ができるんだろうと。そこに賭けてみたいですね。

増子:メリット、デメリットとかプロモーションになるとかじゃなく、横山に「出てくれ」と言われたら、もちろん出るよという感じだね。フェスのパーツに俺らが必要なら、それを全力で埋めてやろうという気持ちがある。ジャンル的には間違いなく浮くだろうし、アウェイにもなるだろうし。でも、そこは俺らじゃないと埋まらないパーツなんだなというのは自覚しているから。

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